秋嶋亮(社会学作家)連載ブログ/19:誰も財政の仕組みを理解していない
社会・経済財政問題について再考したいと思う。
先日の日曜討論で(比例で初当選したばかりの)やはた愛が出演し、「国債の発行で国民の生活を楽にする」とぶち上げ、SNSは支持者らの熱狂で渦巻いていたのだが、僕はこの誤謬の拡散に空恐ろしいものを感じたのだ。
そもそも国民の困窮は国債の過剰によるものだ。つまり償還費が年間100兆円という途方もない額に膨れ上がり、そのため国民負担率が50%近くに引き上げられ、可処分所得が著しく減少していることが窮乏の原因であるわけだ(税金や保険料がべらぼうに高いのは、金融機関に支払う国債の元本利息が天文学的な額に達しているからだ)。
また諸物価の高騰も国債の過剰によるものだ。何度も繰り返すが、年間250兆円ベースで発行される過剰国債が円を希釈させており、今や日本の通貨は80年代当時に比べると、為替ベースで50%、物価ベースで30%まで暴落している。つまり過剰な国債が円安をもたらし、原材料やエネルギーの輸入費用を引き上げ、コストプッシュインフレを引き起こしているわけだ。
TSRによると円安による倒産は前年比の50%も増加しており、国債の過剰は財政だけでなく雇用にも深刻な影響を及ぼしていることが見て取れるのだ。これがどういうことかと言うと、(国債の過剰が円安を加速させ)雇用の悪化と可処分所得の減少が相乗し、日本はシュリンク(経済縮小)のスパイラルに陥っているわけだ。
国債発行で警戒すべきことの一つは預金金利の低下である。これについては著書で何度も記したが、預金金利と国債金利は競合関係にあることを忘れてはならない。つまり政府は機関投資家に国債を購入してもらえるよう、常に国債金利を預金より有利に設定するわけだ(言い換えると預金金利を国債金利より低く設定するわけだ)。
ところが国債の発行高が余りにも莫大となり、政府は利息の支払いすら覚束なくなったことから、とうとうマイナス金利を常態化してしまったわけだ。もし仮に財政が健全で3%程度の金利が維持されていたとすれば、(90年頃から約1000兆円を30余年預金していたのだから)国民はざっと1000兆円の金利を受けとれていただろう。もっと分かりやすく言えば、国債の過剰によって、国民は1000兆円の金利を奪われたのである。
かくして今やこの国は(所得あたりどれだけ消費できるかという)購買力平価ランキングで先進国中ワースト2位という惨状であり、もはや「クオリティ国家(あらゆる層がそこそこ豊かな国)」としての日本はどこにもないのだ。
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☆秋嶋亮(あきしまりょう:響堂雪乃より改名) 全国紙系媒体の編集長を退任し社会学作家に転向。ブログ・マガジン「独りファシズム Ver.0.3」http://alisonn.blog106.fc2.com/ を主宰し、グローバリゼーションをテーマに精力的な情報発信を続けている。主著として『独りファシズム―つまり生命は資本に翻弄され続けるのか?―』(ヒカルランド)、『略奪者のロジック―支配を構造化する210の言葉たち―』(三五館)、『終末社会学用語辞典』(共著、白馬社)、『植民地化する日本、帝国化する世界』(共著、ヒカルランド)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―15歳から始める生き残るための社会学』(白馬社)、『放射能が降る都市で叛逆もせず眠り続けるのか』(共著、白馬社)、『北朝鮮のミサイルはなぜ日本に落ちないのか―国民は両建構造(ヤラセ)に騙されている―』(白馬社)『続・ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―16歳から始める思考者になるための社会学』(白馬社)、『略奪者のロジック 超集編―ディストピア化する日本を究明する201の言葉たち―』(白馬社)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへOUTBREAK―17歳から始める反抗者になるための社会学』(白馬社)、『無思考国家―だからニホンは滅び行く国になった―』(白馬社)、などがある。