【櫻井ジャーナル】2025.01.22XML:国内の収容所化に反対できないトランプ政権の実態
国際政治アメリカで2008年に導入されたFISA(外国情報監視法)第702条によって、ハイテク企業は電話、テキスト・メッセージ、メールなどの通信記録をFBI(連邦捜査局)、CIA(中央情報局)、NSA(国家安全保障局)などアメリカの情報機関へ引き渡さなければならなくなった。人びとの通信内容を監視することを許すわけで、民主主義とは相容れない憲法に違反した法律だ。
この『1984』を想起させる法律に反対していたトゥルシー・ギャバード元下院議員をドナルド・トランプは国家情報長官に指名した。そこでFISAを廃止させるのではないかと期待する人がいたようだが、ここにきて彼女は問題の法律を支持すると述べている。こうした発言は議会の承認を得るためには良いのかもしれないが、これまでギャバードを支援していた人に対する裏切りだとも考えられている。既存の支配システムを前にして、彼女は屈服せざるをえなかった。
アメリカでは2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された後、国内では監視体制が強化されて収容所化が進行、国外では侵略戦争が本格化している。
国内を収容所化しようとする計画は以前からあった。例えばリチャード・ニクソンが大統領だった1970年当時、令状なしの盗聴、信書の開封、さまざまな監視、予防拘束などをFBIやCIAなどの機関に許そうという「ヒューストン計画」が作成されている。この計画はジョン・ミッチェル司法長官が反対、ニクソン大統領を説得して公布の4日前、廃案にしている。(Len Colodny & Tom Schachtman, “The Forty Years Wars,” HarperCollins, 2009)
その一方、支配層に歯向かう人びとを拘束する計画も練られていた。1967年4月にベトナム戦争に反対する声を上げようと訴えたマーチン・ルーサー・キング牧師はその丁度1年後に暗殺されたが、それを切っ掛けにして始まった暴動を鎮圧するために「ガーデン・プロット」が作成され、2旅団が編成され、ケント州立大学やジャクソン州立大学での銃撃につながる。
ニクソン政権は1971年にこの部隊を解散させたのだが、78年に復活する。サミュエル・ハンチントンがジミー・カーター政権で「治安調整官」に就任、ズビグネフ・ブレジンスキーと一緒に「FEMA(連邦緊急事態管理庁)」を作り上げたのだ。(Peter Dale Scott, “The American Deep State,”Rowman & Littlefield, 2015)
ロナルド・レーガン政権になると、FEMAはCOG(政府継続計画)へと発展する。1982年にレーガンはNSDD55を出してCOGプロジェクトを承認、NPO(国家計画局)が創設された。(Andrew Cockburn, “Rumsfeld”, Scribner, 2007)
このプロジェクトは核戦争で正規の政府が機能しなくなった場合という条件で、地下政府を始動させることを定めているのだが、1988年にプロジェクトは変質する。大統領令12656が出され、始動する条件が核戦争から国家安全保障上の緊急事態に変更されたのだ。そして2001年9月11日に国家安全保障上の緊急事態が引き起こされた。
アメリカの外交や軍事を支配しているネオコンはソ連が消滅した直後の1992年2月にアメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクトを作成した。この草案はポール・ウォルフォウィッツが中心になって書き上げられたことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれる。
このドクトリンの第一の目的はソ連と同程度の脅威をもたらす新たなライバルが再び出現するのを防ぐこと。そのため、資源が存在する地域を潜在的なライバルが支配することを防ぐように努め、ドイツや日本をアメリカ主導の集団安全保障体制、つまり戦争マシーンに組み入れるとしている。DPG草案で想定されている地域には西ヨーロッパ、東アジア、旧ソ連の領土、および南西アジアも含まれる。このドクトリンも2001年9月11日に始動した。
トランプはウクライナでの戦闘をすぐに終えると主張しているが、それは難しい。ロシア政府が西側に対する信頼をなくしているからだ。東西ドイツを統一する際、NATO諸国はNATOを東へ1インチたりとも拡大させないと約束したが、守らず、ミンスク合意はウクライナのクーデター体制の戦力を増強するために時間稼ぎにすぎなかった。しかもウクライナ軍は壊滅状態であり、ロシアは軍も経済も健全だ。ロシアが譲歩する要素はないと指摘されている。
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