【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年1月21日):ガザにおけるアブ・サフィヤ博士は人道主義の象徴だった。イスラエルと西側はその存在を抹殺しつつある。

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

イスラエルは「テロリスト」を撲滅しているのではない。ガザを荒れ地、地獄絵図に変えようとしているのだ。そこではもはや医師は存在せず、援助隊員は記憶の彼方に追いやられ、思いやりはお荷物でしかない。

2024年のニュースを捉えた画像といえば、これだろう:ガザ北部に現存する最後の主要医療施設であるカマル・アドワン病院の残骸をかき分けながら、白い白衣を着たフッサム・アブ・サフィヤ医師が、砲身を向けた2両のイスラエル軍戦車に向かっているところだ。

昨年は、イスラエルがこの小さな飛び地(ガザ)にもたらした死と破壊一色だった。

我々が知っている数でいえば何万人ものパレスチナ人の虐殺と、少なくとも10万人以上の肢体不具者;全住民の飢餓状態;都市と農地の更地化;ガザの病院と医療部門の組織的抹殺、そのなかにはパレスチナ人医療従事者の殺害、大量逮捕、拷問が含まれる、そんな光景が展開している。

2024年は、国際的な法律や人権の権威が、これらすべてがジェノサイドに相当するという意見の一致が高まった年でもあった。

昨年最後の数日で撮られた1枚の写真がある。それはすべてを語っている。そこには、イスラエル軍に包囲され、イスラエル軍の砲弾や無人機に攻撃され、イスラエル軍の狙撃兵にスタッフを狙撃されながらも、病院の運営を維持するために命をかけていた一人の医師が、彼と彼の部下を根絶しようとする部隊に勇敢に立ち向かっている姿が写っていた。

彼は自分の患者やスタッフに劣らず、みずから個人的な代償を払っていた。10月、15歳の息子イブラヒムがイスラエルの病院襲撃の際に処刑された。1カ月後、彼自身もイスラエルの攻撃による破片で負傷した。

12月27日までに、病院はイスラエルの野蛮な攻撃にもはや耐えられなくなった。拡声器がアブ・サフィヤに戦車の方に来るよう要求すると、彼は瓦礫の上を険しい顔で歩き始めた。

カマル・アドワン病院の命を守る戦いが突然幕を閉じた瞬間だった。ジェノサイドのイスラエルの戦争マシンが、ガザ北部の人道主義の最後の前哨基地に対してあらかじめ予測できた勝利を収めたのだ。

拷問収容所に収監される

これは知られている中では、アブ・サフィヤの最新の写真でもある。この数分後イスラエル兵士によるいわゆる「逮捕」(つまり誘拐)され、イスラエルの拷問収容所へ連れ去られ、消息不明となった。

イスラエル軍は彼の所在を知らないと何日も主張していたが、ついに彼を隔離拘禁していることを認めた。何とか認めたのは、地元の医療権団体がイスラエルの裁判所に申し立てを行なったからのようだ。

ますます増える報告によると、アブ・サフィヤは現在、イスラエルの拷問施設の中で最も悪名高いスデ・テイマンに収容されている。そこでは昨年、兵士たちがパレスチナ人の受刑者を警棒で内臓が断裂するまで強姦している様子がビデオに撮られていた。

アブ・サフィヤが、彼の同僚で、ガザのアル・シーファ病院の整形外科の元責任者であるアドナン・アル・ブッシュ博士の運命を辿ることはないだろう。オファー刑務所で4ヶ月間虐待を受けた後、ブッシュは看守によって庭に捨てられた。下半身は裸で、血を流し、立つこともできなかった。その後彼は死んだ。

人権機関や国連の報告書や、内部告発した収容所の看守の証言は、パレスチナ人囚人の組織的な殴打、飢餓、性的虐待、強姦を伝えている。

イスラエルは、ガザで最も有名な小児科医アブ・サフィヤをハマスの「テロリスト」であると非難している。さらに240人がカマル・アドワン病院から拉致されたが、イスラエルは彼らを「テロ容疑者」だと主張している。おそらく彼らは患者や医療スタッフが中心で、同様に恐ろしい状況で収容されている。

精神病理的論理

イスラエルの精神病的論理によれば、ガザのハマス政府のために働く者、つまりガザの大組織のひとつに雇用されているアブ・サフィヤのような者は誰でもテロリストとみなされるのだ。

その延長線上で、いかなる病院も、ハマス政府の権限の下にあるため、イスラエルがカマル・アドワン病院を決めつけたように、「ハマスのテロリストの拠点」として扱われる可能性がある。つまり、すべての医療施設を破壊し、すべての医師を「逮捕」して拷問し、すべての患者を強制的に「避難」させるべき、となるのだ。

カマル・アドワン病院の場合、負傷者、重病者、出産間近の者は、点滴を外し、病床から出て、破壊された中庭に向かうための時間を15分間許された。その後、イスラエル軍は病院に火を放った。

この種の「避難」はただ一つのことを意味する:患者はすでに抱えた傷や病気、あるいは栄養失調で死ぬことになる。さらには寒さで死ぬ人も増えてくるのだ。

ガザの住民のほとんどが住むようになったテント野営地で、毛布も適切な衣服もないまま、家族がキャンバス地にくるまり、冬の夜、身を寄せ合う中、低体温症で死亡する赤ちゃんの数が増えている。

アブ・サフィヤ投降の写真は、誰がダビデで誰がゴリアテ*であるか、誰が人道主義者で誰がテロリストであるかを一点の曇りもなく明確にした。
ダビデとゴリアテ*・・・旧約聖書サムエル上17章参照

何よりも、この事件は、西側諸国の政治およびメディアが過去15カ月間、ガザに関する大嘘を広めてきたことを明らかにした。彼らは流血を終わらせようとはせず、隠蔽、言い訳しようとしてきたのだ。

だから、アブ・サフィヤがイスラエルに誘拐され、病院が破壊されたという、2024年をもっともよく象徴する写真が、その一面どころか、主流メディアのどこにもほとんど掲載されなかったのだろう。

億万長者のオーナーからの給料に頼っている外国人編集者や写真編集者のほとんどは、2024年を象徴するアブ・サフィヤの写真を世間に公表しないことにしたようだ。しかし、ソーシャルメディアはそうしなかった。一般ユーザーがそれを広く広めた。彼らはそれが何を表していて、何を意味しているかを理解していたのだ。

「意識戦争」

先月末、イスラエルは来年、「意識戦争」と名付けた活動に1億5000万ドルを追加で支出すると発表した。

つまり、イスラエルは、ガザでの虐殺が続く中、自国のイメージを隠蔽するために、メディアによる偽情報キャンペーンを強化するために予算を20倍に増やしたのだ。

イスラエルはガザのジャーナリストの多くを殺害し、「キルゾーン」と宣言されていない地域への外国人特派員の立ち入りを禁じた。しかし、携帯電話でのライブストリーミングの時代において、ジェノサイドを隠蔽することはイスラエルが想像していたよりもはるかに困難であることが判明している。どうやら、西側諸国の権力者たちにとって、みなさまがご存知のような偽情報を流布するだけでは不十分のようだ。

イスラエルは、BBCやCNNを通してフィルタリングされたニュースを視聴せず、したがって何が起きているかをはるかに明確に把握している、大学の学生などの若者たちを特に懸念している。彼らの感覚や感受性は、西側諸国の企業による長年のプロパガンダによって鈍化してはいないからだ。

例えば、過去15か月間にわたりガザの病院の完全破壊を正当化してきたイスラエルのフェイク・ニュース(西側メディアによって再利用され、信憑性を与えられている)や、アブ・サフィヤのような高名な医師が実はテロリストであるという考えを抱かせるような偽情報に彼らが騙される可能性ははるかに低い。

イスラエルによるガザの医療部門の消滅作戦の発端は、2023年10月7日のハマスの攻撃から数日後に始まった。それから2週間も経たないうちに、イスラエルはガザ市のアル・アハリ病院の中庭に強力なミサイルを発射し、イスラエル軍の暴動から保護を求めてそこに逃げてきた数十のパレスチナ人家族が爆発に巻き込まれた。

しかし、メディアは、イスラエルのミサイルではなく、誤発射されたパレスチナのロケットが被害を与えたというイスラエルのばかげた主張を軽信しオウム返しすることによって、ガザの病院に対する戦争報道の露払いとした。

アル・アハリ病院への攻撃は、イスラエルがこの15か月間綿密に実行してきたジェノサイドの青写真となった。病院、モスク、教会など、確立された聖域でさえ、イスラエルの猛攻撃から安全な場所はどこにもないことがパレスチナ人に明らかになった。イスラエルの怒りから逃れられる場所はどこにもないのだ。

そして、イスラエルは国際人道法のあらゆる既知の原則を破る用意があることを西側諸国の指導者やメディアに明らかにした。ガザの医療システムを破壊することを含め、イスラエルが犯さない残虐行為や戦争犯罪など存在しない。イスラエルの支援国は、イスラエルがどこまでやろうとも、その戦争を全面的に支持することになっていた。

そして支援国はそのとおりのことをした。

偽装工作

振り返ってみると、アル・アハリ病院への攻撃がイスラエルの責任であるかどうかをめぐる一時的な騒動は、今では悪夢のように古風に思える。何の反撃もなかったため、イスラエルは「意識戦争」を激化させ、ガザの病院とハマスのテロを結びつけるフェイク・ニュースの泡を作り出した。

数週間経つと、イスラエルはガザ地区のアル・ランティシ小児病院の地下にハマスのテロリスト基地を発見したと主張することになった。そこには武器の隠し場所があり、イスラエル人人質の警備当番表はアラビア語で書かれていた。が、その当番表はどうということのないカレンダーに過ぎないことがすぐに判明した。

イスラエルの最大の標的は、ガザで最も重要な医療施設であるアル・シーファ病院だった。イスラエルは、この病院が地下の「ハマスの指揮統制センター」の上に設置されていることを示すCGIで作成されたビデオを公開した。この主張は再び西側メディアによって軽信されオウム返しの報道がなされたが、ハマスの地下壕は結局発見されなかった。

それでも、これらの嘘は目的を果たした。イスラエルがガザの病院を破壊し、医療援助の受け入れを拒否し、イスラエルの容赦ない爆撃で傷ついた男性、女性、子供たちを治療できない状態にガザを置いた。しかしメディアはこれらのあまりにも明白な人道に対する罪から焦点をそらしたのだった。

その代わりに、イスラエルが期待したように、ジャーナリストたちは(イスラエルが仕組んだ)偽装工作を追いかけ、その一つ一つの嘘を検証しようと精力を費やした。

メディアの前提は、ガザ地区の病院や医師とハマスが共謀しているというわずかな兆候が確認されれば、イスラエルがガザ地区の医療施設をすべて破壊し、虐殺の現場に巻き込まれた230万人の医療を拒否する作戦が正当化されるというものだったようだ。

集団墓地

注目すべきは、ガザでボランティア活動を行なった西側諸国の上級医師たちのうち、帰国後、自分たちが働いていた病院の至る所をうろついていたとされる武装した「ハマスのテロリスト」を見たと報告した人が一人もいなかったことだ。

これらの西側の医師たちは、イスラエルがガザの病院や医療センターをやりたい放題に破壊することを正当化したイスラエルの際限のない偽情報に対抗するものとして、メディアからインタビューを受けることはほとんどなかった。

兵士たちは次々と病院に侵入し、病棟や手術室、そして集中治療室(ICU)を破壊した。

強制的な「避難」はそれぞれ悲惨な結果を生んだ。未熟児は保育器の中で餓死するか凍死するか、した。重病患者はベッドから追い出された。彼らを収容しようとした救急車は爆破された。そしてそのたびにガザの医療スタッフは一斉に集められ、衣服を剥ぎ取られて消息不明となった。

イスラエル軍が攻撃を終えた後、病院敷地内の仮設集団墓地で身元不明の死体が発見されたことにも、西側諸国のジャーナリストはほとんど関心を示さなかった。死体には首を切断されたり、身体が切断されたり、生き埋めにされた形跡があったりした。

こうした理由などから、国連人権高等弁務官事務所は先週、「パレスチナ人が安全だと感じられる唯一の聖域であるガザの病院は、実際には死の罠と化した」と結論付けた。

同様に、世界保健機関の職員リク・ペッパーコーンは、「(ガザの)保健セクターは組織的に解体されつつある」と述べた。WHOは海外で12,000人以上の緊急救命治療を求めている、と同氏は補足した。「現在のペースでは、これらの重症患者をすべて避難させるには、5年から10年かかるだろう」と。

先週の別の声明では、2人の国連専門家が、アブ・サフィヤの恣意的拘禁は「ガザにおける健康に対する権利の実現を継続的に爆撃し、破壊し、完全に消滅させるイスラエルによるやり方の一環である」と警告した。

2人の国連専門家は、大量逮捕に加え、これまでに少なくとも1,057人のパレスチナ人の医療従事者が殺害されたと指摘した。

ジェノサイドへの軌跡

ほんとうのことを言えば、イスラエルの新たな、より資金力のある偽情報キャンペーンといえど、現在の偽情報キャンペーンほどの効果は発揮しないだろう。

イスラエルの反ユダヤ主義対策省のアビ・コーエン=スカリ長官は、イスラエルが「非合法化」と呼ぶもの、すなわちアパルトヘイトと現在のジェノサイドの性格を露呈させることに対するこのようなプログラムは10年にわたって実施されてきたが、「ほとんど成果」がなかったと述べた。

彼はイスラエルのメディアにこう語った。「この活動は考えられるあらゆる基準から見て失敗だ」。

ジェノサイドの現実を覆い隠すことは不可能だろう。今後数か月で、イスラエルによる新たな、あるいは歴史的な残虐行為がさらに明るみに出るだろう。イスラエルがガザでジェノサイドを犯したと結論付ける法律・人権団体や学者も増えるだろう。

国際刑事裁判所(ICC)は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアブ・ギャラント前国防相に続き、戦争犯罪に対する逮捕状をさらに発行する予定だ。

週末、ブラジルで休暇を過ごしていたイスラエル兵士が、捜査対象になっているとの警告を受け、国外逃亡を余儀なくされた。

しかし、それだけではない。主要な人権団体や学者は、イスラエルとその建国理念であるシオニズムに関する歴史的認識を再構築する必要がある。彼らは、この大量虐殺が突然起こったのではないことを認める必要がでてくるだろう。

この軌跡は、1世紀以上前に入植者・植民地運動としてシオニズムが確立されたときに始まった。1948年に先住のパレスチナ人に対する大規模な民族浄化作戦を通じてイスラエルが建国されたときも、この軌跡は続いた。そして1967年にイスラエルがアパルトヘイト制度を正式化し、ユダヤ人とパレスチナ人に別々の権利を与え、ますます縮小するゲットーにパレスチナ人を強制的に押し込めたことで、この軌跡は加速した。

抑制されないまま、イスラエルの最終目的は常にジェノサイドへと向かっていた。それは、イスラエルの民族的優位性と選民意識という概念に根ざしたイデオロギー的衝動である。

映画『マド・マックス』の世界

11月にICC(国際刑事裁判所)がネタニヤフ首相とギャラントに逮捕状を発行した後も、イスラエルの指導者たちはジェノサイドへの露骨な扇動を続けた。

先週、イスラエル議会の外務・防衛委員会の議員8人がイスラエル・カッツ新国防大臣に書簡を送り、ガザ北部の最後の水、食料、エネルギー源の破壊を命じるよう要求した。

ネタニヤフ首相とギャラント元外相が人道に対する罪で起訴されたのは、まさにイスラエルが現在ガザ地区の住民を飢餓に陥れているためである。

一方、カマル・アドワン病院の破壊は、北ガザにおける新たな政策、イスラエルが「チェルノブイリ化」と呼んでいる背筋も凍るような政策の土台を整えた。

チェルノブイリの旧ソ連原子炉にちなんで名付けられたこの政策は、ガザ地区におけるパレスチナ人の存在を1986年の放射能漏れに匹敵する脅威とみなしている。軍の目標は、チェルノブイリの放射能を封じ込めようとした旧ソ連の緊急対策に倣い、パレスチナの地上・地下インフラをすべて消滅させることだ。

これはどこに向かうのか?

パレスチナ難民のための国連機関の上級緊急事態担当官であるルイーズ・ウォーターリッジは週末、イスラエルはガザからUNRWA(「ウンルワ」_国連パレスチナ難民救済事業機関)を追い出すことによってガザの完全な社会崩壊を加速させていると指摘した。

今月末に発効するイスラエルの法律は、イスラエルの援助封鎖を考慮すると、UNRWAがガザで活動し、家族にわずかな食料と避難所を提供することを禁止するものである。

また、病院がなければ、ガザ地区は最後の意味ある医療サービスも失うことになる。ウォーターリッジは「UNRWAはガザ地区で1日あたり約1万7000件の医療相談を行なっている。他の機関がこれに代わることは不可能だ」と指摘した。

ウォーターリッジ女史が強調する危険は、ガザが完全に無法地帯になるということだ。住民たちはイスラエルの爆弾、暗殺ドローン、飢餓計画だけでなく、犯罪組織のディストピア的支配にも直面することになる。

これはまさにイスラエルがガザに対して企てていることである。先週のハアレツ紙の報道によると、北ガザの「チェルノブイリ化」に続いて、イスラエルは2つの大きなパレスチナ人犯罪組織に南部を支配させる計画を検討している。この組織は、イスラエルがガザへ入ることを許している数台の救援トラックを略奪し、住民から食料と水を奪うイスラエルを支援しているのと同じギャングである可能性が高い。

イスラエルのガザの将来に対する視座は、映画『マッドマックス』シリーズとコーマック・マッカーシーの小説『ザ・ロード』を合わせた終末後の世界だ。

作り話

ジェノサイドへの軌跡はシオニズムのコードに深く組み込まれていたのかもしれないが、そうではないふりをするのが西側諸国の指導者、メディア、学界、シンクタンク、さらには人権団体の仕事だった。

彼らは何十年もの間、ずっと以前に完全に信用を失ったはずの西側諸国の見解を堅持してきた。イスラエルは反ユダヤ主義からユダヤ人を守る聖域に過ぎず、「中東で唯一の民主主義国」であり、イスラエルの占領はおおむね善意によるものであり、違法な入植地は安全保障上の必要な措置であり、イスラエル軍は「世界で最も道徳的」である、という見解だ。

こうした虚構は、イスラエルの偽情報がそれをつなぎ合わせようとするよりも早く崩れている。

では、なぜさらにそれをするのか?イスラエルの「意識戦争」は、主にあなたや私に向けられたものではないからだ。それは西側諸国の指導者たちに向けられている。これは彼らを説得するためではない。英国の首相キール・スターマーは、ガザでジェノサイドが起こっていることを十分知っているし、次期米国大統領ドナルド・トランプも同様だ。

彼らは単に気にしていない。世界について社会病的に考える準備ができていなければ、西側の政治システムの頂点に達することはできないから、などは爪の垢程度の理由だ。なだめるべき西側の軍産複合体があり、世界の資源採掘の支配権を維持することを期待している西側の企業に奉仕しなければならないのだ。

だからこそ、ジョー・バイデンは、大統領任期の終わりに近づき、勝利に必要な票も得られない中、「休むことなく停戦に努める」という見せかけや、イスラエルに1日350台の救援トラックを派遣するよう要求するのをやめた。その代わりに、戦闘機や攻撃ヘリコプター用の弾薬を含む、さらに80億ドル相当の武器をイスラエルへの餞別として発表した。

いや、イスラエルの偽情報キャンペーンの目的は、作り話の提供だ。それは、西側諸国の指導者によるジェノサイドへの支持を不明瞭にするのに十分な程度に事態を混乱させること、そして彼らに武器を送り続ける口実を与え、ハーグでの戦争犯罪裁判を逃れる手助けをすることだ。

目標は「違うものは違う!と言えること」だ。つまり、明々白々だったことがそれほど明白ではなかった、あるいは普通の人が傍から見てわかっていたことが直接参加した人にはそれほどはっきりしたものではない、と主張できることなのだ。

西側の指導者たちは、イスラエルがガザの偉大な治療者の一人であるアブ・サフィヤを拷問キャンプの一つに引きずり出したことを知っている。そこでは、彼はほぼ確実に他の囚人と同様に、飢えさせられ、断続的に殴られ、屈辱を与えられ、恐怖にさらされているのだ。

イスラエルが現在行なっていることは、ガザの病院を解体したのと同じように、彼の肉体的、精神的な回復力を弱め、破壊することだ。

イスラエルは「テロリスト」を撲滅しているのではない。ガザを荒れ地、地獄絵図に変えようとしているのだ。そこではよきものは何一つなく、介護する人間は皆無、自分の人道主義に縋りつくものは存在できない。そこではもはや医師は存在せず、援助隊員は記憶の彼方に追いやられ、思いやりはお荷物でしかない;戦車とギャング的犯罪者たちが支配的な場所となる。

西側諸国の政治およびメディアの役割は、これらすべてをできるだけ日常的かつ普通のことのように見せることだ。彼らの役割は、私たちの心を麻痺させ、関心や抵抗の能力を空洞化し、私たちを無感覚にすることだ。私たちは、アブ・サフィヤ博士のために、そして私たち自身のために、彼らが間違っていることを証明しなければならない。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年1月21日)「ガザにおけるアブ・サフィヤ博士は人道主義の象徴だった。イスラエルと西側はその存在を抹殺しつつある。」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2912.html
からの転載であることをお断りします。

また英文原稿はこちらです⇒Dr Abu Safiya Symbolised Humanity in Gaza. Israel and the West Are Destroying It
筆者:ジョナサン・クック(Jonathan Cook)
出典:The Unz Review 2025年1月8日
https://www.unz.com/jcook/dr-abu-safiya-symbolised-humanity-in-gaza-israel-and-the-west-are-destroying-it/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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