【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.01.25XML: トランプ大統領がネオコン流の恫喝戦術を露国に対して使ったなら、事態は泥沼化

櫻井春彦

ドナルド・トランプ米大統領はウクライナにおける戦闘を終結させようとしていると言われているが、その目的を達成することは難しいと見られている。彼のウクライナ情勢に関する発言は事実との乖離が大きいため、ウラジミル・プーチン露大統領との交渉は難航する可能性が高いからだ。交渉を失敗させるためにCIAが偽情報をトランプに吹き込んでいると疑う人もいる。

 トランプはロシア軍の死傷者数を80万人に達し、ロシア経済は弱体化していると主張、そうした前提で「制裁」をちらつかせ、ロシアを屈服させようとしているのだが、ロシア側の死傷者は9万人弱だと反プーチン派の露メディアも推測している。

 トランプはロシア軍の死傷者数について、ウクライナ大統領を名乗るウォロディミル・ゼレンスキーの発表した数値をそのまま垂れ流しているようだが、戦況に関する情報はこの数字が間違っていることを示している。「80万人」はウクライナ側の数字だろう。

 ロシアはアメリカによる「制裁」で西側の企業が撤退したことで地元企業が活性化、兵器の生産は西側を大きく上回っている。ミサイル、滑空弾、ドローン、戦闘機、戦車、防空システムなどの兵器でロシアはアメリカ/NATOを質的にも量的にも圧倒しているのだ。砲弾の数を比較すると、ロシア軍は2年以上前からわかっている。この情報だけでもトランプの発言が間違っていることは明らかである。

 IMFの予測でもロシア経済は西側の「制裁」を受けても順調。2024年の経済成長率は約4%、失業率は歴史的に低い2.6%。購買力平価で比較するとロシアはドイツや日本を上回り、世界第4位になると世界銀行は発表している。

 ジョー・バイデンが大統領に就任した直後、彼や彼を担いでいたネオコンは「ルビコンを渡った」のであり、後へは引けない。ネオコンに従属し、ロシアとの戦争を始めたヨーロッパ諸国も同じ。こうした西側の国々は自分たちがロシアに楽勝すると思い込んでいたように見える。ロシアを屈服させればロシアの富、あるいは資源を奪えると算盤を弾いていたのだろうが、裏目に出た。

 もっとも、EUの沈没はバラク・オバマ政権が2014年2月にネオ・ナチを使い、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したクーデターの目的のひとつだった。当時、EUとロシアは接近していたのだが、両者を結びつけていたのがロシア産の安い天然ガス。その天然ガスを輸送するパイプラインがウクライナを通過していたので、ウクライナを抑えれば天然ガスの輸送を抑えることができる。

 そうしたリスクを考えてなのか、ドイツとロシアはウクライナを迂回してパイプライン、「ノードストリーム(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」をバルト海に建設したのだが、それに対し、アメリカ政府は破壊を予告していた。

 例えば、国務次官を務めていたビクトリア・ヌランドは2022年1月27日、ロシアがウクライナを侵略したらノード・ストリーム2は前進しないと発言、同年2月7日にはジョー・バイデン大統領がノード・ストリーム2を終わらせると主張、記者に実行を約束している。そして2022年9月、NS1とNS2は爆破されてしまう。ドイツをはじめとするEUの経済は大きなダメージを受けた。アメリカにこれだけのことをされてもEUは何も言えなかった。EUに関しては、アメリカの思惑通り、沈没しつつある。

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