【櫻井ジャーナル】2025.01.31XML:アメリカで行われているのは権力抗争であり、革命ではない
国際政治ドナルド・トランプ大統領の打ち出す政策に恐怖している人がいることは確かだろう。COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動を仕掛けた人びとやロシアと戦争させるためにウクライナのクーデター体制を支援してきた人びともその中に含まれているはずだが、トランプ大統領の発言には背後にシオニストの存在を窺わせるものがある。
少なからぬ人が指摘しているが、トランプはウクライナでの戦争を終わらせるため、ロシアを恫喝するとしている。かつて、ドワイト・アイゼンハワーやリチャード・ニクソンが使った手法だ。
ドワイト・アイゼンハワーは大統領に就任してまもない時期に、ハリー・トルーマン政権が始めた朝鮮戦争を休戦させようと考えた。そこで、中国に対して休戦に応じなければ核兵器を使うと脅したとされている。休戦は同年7月に実現した。アイゼンハワー政権で副大統領を務めていたリチャード・ニクソンはベトナム戦争から抜け出すため、カンボジアに対する秘密爆撃を実行しながらアイゼンハワーの手法を使っている。つまり核兵器で北ベトナムを恫喝したのだ。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017)
トランプはウラジミル・プーチン露大統領に対し、ウクライナでの戦争をやめなければ新たな「制裁」でロシアの置かれた状況をさらに悪化させると脅している。そのプランはウクライナ特使のキース・ケロッグ退役陸軍中将が考えた「和平計画」に基づくもので、この計画は同中将が2024年春に執筆した論文が基本になっている。問題は、この論文が事実に基づいていないということだ。恫喝がロシアにも通用すると考えている。
トランプはウクライナでの戦闘でロシア兵は100万人近くが戦死したと主張している。ウクライナ兵の戦死者約70万人を上回ると主張しているわけだが、これはありえない。ウクライナ兵の戦死者は80万人、あるいはそれ以上だと推定されているが、それを否定できないため、70万人と少なめの数字を提示、ロシア兵の戦死者数をそれ以上にする必要があると考えたのだろう。
ウクライナ軍の兵士不足は2023年10月1日、イギリスのベン・ウォレス元国防大臣も指摘している。ウォレスはテレグラム紙に寄稿した論稿の中でウクライナ兵の平均年齢はすでに40歳を超えていると指摘、もっと多くの若者を前線へ送り出せと要求している。
ウクライナの街中で男性が徴兵担当者に拉致される様子を撮影した少なからぬ映像がインターネット上で伝えられているが、ロシアの街頭でそうした光景は見られない。ロシア側の戦死者数はウクライナ側の1割程度、つまり10万人に達していないと推定されている。
ロシア軍とウクライナ軍が戦場で使用している砲弾の数はロシア側が6対1から10対1の優位性を持つと推定されている。死傷者数の比率は砲弾の比率に準ずると言われているので、この面からもトランプ大統領の判断は否定される。「ウクライナはロシアよりも兵士の死傷者数が少ないが、それでもロシアに負けている」ということはありえない。
しかも兵器の性能が違う。言うまでもなくロシア軍がウクライナ軍、つまりアメリカ/NATO軍を圧倒しているのだ。ロシア軍はミサイル、滑空弾、ドローン、戦闘機、戦車、防空システムなどでウクライナ軍を圧倒、制空権を握っている。
アメリカがロシアに対する戦争を始めたのは2014年2月のことだと言える。ナチス時代下のドイツは1941年6月からソ連への軍事侵攻を始めたが、最初に攻め込んだのはウクライナとベラルーシだ。バラク・オバマ政権が仕掛けたウクライナにおけるネオ・ナチを使ったクーデターは新たなバージョンのバルバロッサ作戦だと言えるだろう。ベラルーシでもクーデターが試みられたが、これは失敗に終わっている。
朝鮮戦争の場合と同じようにウクライナでも「休戦」して戦況を「凍結」し、イギリス、ドイツ、フランスといった国の兵士で構成される「平和維持軍」をウクライナへ入れることをロシア政府が認めるとは思えない。その部隊は「平和維持軍」というタグをつけたNATO軍にすぎないからだ。
トランプはロシアがアメリカの命令に従わない場合、経済的に締め上げると脅しているが、ロシア経済が好調だということをロシア在住の少なからぬアメリカ人が伝えていた。アメリカ人ジャーナリストのタッカー・カールソンもモスクワの豊かな生活を伝えている。アメリカ政府が西側の企業をロシアから撤退させたため、ロシアの国内産業が息を吹き返し、経済にとってプラスに働いたことは明らかだ。苦境に陥ったのはヨーロッパであり、アメリカにも悪い影響を及ぼしている。
トランプはガザからアラブ系住民を一掃してヨルダンやエジプトへ追放しようとしている。露骨な民族浄化計画であり、アメリカに従属しているアラブ諸国からも反対されているのだが、トランプは強引に推し進めようとしている。
アメリカで行われているのは「権力抗争」にすぎず、社会の仕組みを変える「革命」ではないのだろう。
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