【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年2月2日):トランプ対中国。Tiktok禁止措置はただの端緒にすぎない。

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。


ドナルド・トランプ米大統領と習近平中国国家主席© Thomas Peter-Pool / Getty Images /

中国の習近平国家主席はドナルド・トランプ米大統領の就任式に出席しなかった。トランプ大統領は繰り返し、習国家主席を招くと主張していたが。ただし、韓正国家副主席は、習国家主席の代理で出席した。公式には副国家主席が2番目に重要な役割なのだが、李強中華人民共和国国務院総理のほうが、実質はその地位にある。

つまり、中国は米国に「中国は米国からの申し出を待っている」という明確な伝言を伝えたということだ。トランプ大統領は、中国政府との関係を「微調整」する意図がある、という立場を表明している。だが、トランプ大統領の一度目の任期中の態度や今回の選挙運動中の発言などから、トランプ大統領には中国の発展を阻止する欲望を持っていることが示唆される。それは特に先進技術の分野においてだ。

トランプ大統領の主要目的は中国を経済的に身動きできなくすることだ、と考えている人もいるが、実はそれだけではない。中国の発展方式を再形成させることで、中国が米国の脅威とならないようにするという目的もある。トランプ大統領の狙いは、ある特定の技術の移動に制限をかけることで、中国が米国をおい抜けないようにすることだ。それは特に人工知能や集積回路、生物工学の分野においてである。

トランプ大統領が優先して取り組んでいるもう1つのことは、競合する中国製品を米国市場にから排除し続けることだ。そのために、華為技術(ファーウェイ)社や小米(シャオミー)社などに対する制裁措置の継続、あるいは更なる強化がおこなわれることになるだろう。しかし、トランプ大統領がこれらの制裁措置を梃子(てこ)として利用していることは明らかで、この制裁をひけらかしながら、中国との交渉をおこなう際に自身の立場を強くするための措置に留まりそうだ。


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トランプ大統領と習近平国家主席との間の論点となるいくつかの主要な問題があるようだ。最近の両者の電話会談において、Tiktokについて話し合われたが、このネット上の配信基盤が主要な争点になるとは思えない。もっと差し迫った問題、例えば台湾問題やウクライナ紛争などが中心的な論点となるだろう。トランプ大統領は台湾問題を中国に対する梃子に利用しようとする可能性があり、米国がこの問題にどこまで踏み込めるかの探りを入れてくるかもしれない。

ウクライナ紛争に関して、中国がこの紛争の解決に当たり、目立った動きを見せることで脚光を浴びる可能性について米国側は警戒している。トランプ大統領は中国が和平実現者として外交的に優位な威信を手にする状況が生まれることを阻止しようとするだろう。さらにトランプ大統領は、ロシアと中国の間に楔(くさび)を打ち込み、両国の友好関係を弱化させようとすることも考えられる。 ロシアからのエネルギー供給や食料輸入、政治的な支援を考えると、中露の分断は中国にとって重大な打撃を与えることになるからだ。

Tiktok自体は深刻な問題にはならないだろうが、この件は中米関係における独特な事例となっている。Tiktokは中国が唯一世界規模で成功した媒体発信基盤だ。他の中国発のソーシャルメディア網は、西側市場に入り込むことに苦戦している。Tiktokを閉鎖したり管理下におけば、中国企業には財政的打撃を与え、中国政府の非軍事的影響力を損なうことになるだろう。

この動きにより浮き彫りとなる事実は、米国な利用可能な手段を全て用いて、中国の台頭に待ったをかけようとしている、ということだ。トランプ大統領のより大きな戦略は、中国を孤立させながらも、米国の優位を維持するために中国との貿易や中国への技術依存を利用することに焦点を合わしているように思われる。しかし衝突と交渉の均衡を保つというこの困難な仕事ができるかどうかは、トランプ大統領が公約を守る能力を有しているかの試金石になる。このやり方が上手くいくかは依然として不明だが、はっきりしていることは、トランプ政権の政策がこの先の中米関係を形成することになる、という事実だ。

Tiktokの話に戻ると、ある国が別の国由来の通信手段を取り除こうとすることは、国家間の関係の歴史、そしておそらく近代の市場の歴史においておそらく初めての出来事だろう。

この記事の初出はルシースカヤ・ガジェータ紙。
RT編集部が翻訳・編集。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年2月2日)「トランプ対中国。Tiktok禁止措置はただの端緒にすぎない。」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2936.html
からの転載であることをお断りします。

また英文原稿はこちらです⇒Trump vs China: A new chapter in the battle for global supremacy
米国の中国との賭けはこんなふうになるだろう。
筆者:アレクセイ・マスロフ (Alexey Maslov) ロモノーソフモスクワ州立大アジア・アフリカ研究所所長
出典:RT 2025年1月26日
https://www.rt.com/news/611662-trump-vs-china-new-chapter/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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