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【櫻井ジャーナル】2025.02.07XML: ウクライナの敗北による欧米の疲弊を緩和させようとトランプ米大統領は必死
国際政治ウクライナを舞台とする戦争でアメリカをはじめとする西側諸国はロシアに敗北しつつある。2020年12月から23年1月にかけてウクライナ大統領府の顧問を務めていたオレクシー・アレストビッチもウクライナが戦争に負けていることを認めた。
ところで、この戦争は遅くとも2004年11月から05年1月にかけての「オレンジ革命」から始まっている。ビクトル・ヤヌコビッチの大統領就任を阻止するためにジョージ・W・ブッシュ政権が仕掛けたのだ。その結果、西側の金融資本に操られていた新自由主義者のビクトル・ユシチェンコが大統領に据えられた。
ユシチェンコの新自由主義的な政策は富を外国の巨大資本や国内の一部に集中させ、国民の大半を貧困化させた。そこで2010年の大統領選挙では欧米への従属を拒否、中立を掲げるヤヌコビッチが大統領に選ばれている。
しかし、ブッシュの後任大統領であるバラク・オバマの政権はそうした政策を容認できず、2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを使ったクーデターを実行、ヤヌコビッチを排除した。
しかし、ヤヌコビッチの支持基盤である東部や南部の人びとはクーデター政権を認めず、南部のクリミアはロシアと一体化、東部のドンバスでは武装闘争が始まった。オデッサではクーデター政権が送り込んだネオ・ナチ集団によって反クーデター派の住民が虐殺された。
この段階でロシア軍が動かなかったのは、ウラジミル・プーチン政権の内部に西側を信奉する人びとが残っていたうえ、戦争の準備ができていなかったためだろうが、それでもクーデター後、ウクライナの軍や治安機関ではネオ・ナチ体制への従属を嫌って7割程度が組織から離脱、一部は反クーデター派へ合流する。そこで内戦の当初は反クーデター軍が優勢だった。西側がミンスク合意で時間を稼がねばらなかったのはそのためだ。
西側は8年かけてクーデター政権に兵器を供与、兵士を訓練、さらに「ヒトラーユーゲント」的なプロジェクトで年少者をネオ・ナチの戦闘員へ育て、マリウポリ、ソレダル、マリインカ、アウディーウカには地下要塞を建設、それらを結ぶ要塞線を構築した。ミンスク合意が時間稼ぎだったことはアンゲラ・メルケル元独首相やフランソワ・オランド元仏大統領も証言している。
2022年に入るとクーデター軍はドンバスの周辺に部隊を集め、砲撃を激化させる。ドンバスへの軍事侵攻が近いと予想される中、戦闘の準備ができていないと見られていたロシア軍がウクライナ側へのミサイル攻撃を開始。ウォロディミル・ゼレンスキー政権にとって予想外の展開だったのか、イスラエルやトルコを仲介役とする停戦交渉がすぐに始まり、ほぼ合意に達した。
仲介役のひとりだったイスラエルのナフタリ・ベネット首相は2022年3月5日にモスクワへ飛んでプーチン大統領と数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけた後にドイツへ向かい、オラフ・ショルツ首相と会っている。その3月5日にウクライナの治安機関であるSBUのメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺した。SBUはCIAの配下で活動している治安機関だ。
ベネットは2022年3月5日にモスクワへ飛んでウラジミル・プーチン露大統領と数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけることに成功、その足でベネットはドイツへ向かってオラフ・ショルツ首相と会っている。
4月9日にはイギリスの首相を務めていたボリス・ジョンソンがキエフへ乗り込み、ロシアとの停戦交渉を止めるように命令。同年4月30日にはアメリカのナンシー・ペロシ下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓っている。戦争を望んでいたのはイギリスやアメリカだった。
ロシアとの関係修復や平和を訴えて大統領選挙に勝利したゼレンスキーだが、スコット・リッターの調査によると、彼はイギリスの情報機関MI6のエージェントである可能性が高い。2020年10月にイギリスを公式訪問した際にMI6のリチャード・ムーア長官を訪問、会談している。その訪問はジャーナリストに察知され、撮影されている。その後、ムーア長官がゼレンスキーのハンドラーだと言われるようになった。その後、ゼレンスキーの警護担当者はウクライナ人からイギリス人へ交代になったとも言われている。
イギリスやアメリカがウクライナを使ってロシアを攻撃したがっていたことは間違いないが、ウクライナとロシアは違う。その事情をヘンリー・キッシンジャー元国務長官は2014年3月5日付けワシントンポスト紙に書いている。オバマ政権がクーデターを成功させた直後だ。
ロシアにとってウクライナは決して単なる外国ではないことを西側諸国は理解しなければならないとキッシンジャーは指摘する。
「ロシアの歴史はキエフ・ルーシと呼ばれた国から始まった。ロシアの宗教はそこから広まった。ウクライナは何世紀にもわたってロシアの一部であり、その歴史はそれ以前から絡み合っていたのだ。1709年のポルタバの戦いに始まるロシアの自由のための最も重要な戦いのいくつかはウクライナの地で戦われている。」
ウクライナは複雑な歴史と多言語構成を持つ国で、西部は1939年にソ連へ編入され、人口の60パーセントがロシア人であるクリミアは54年にウクライナ生まれのニキータ・フルシチョフがロシアとコサックの協定300周年記念の一環としてウクライナへ与えたと説明する。西部は主にカトリック教徒、東部は主にロシア正教徒、また西部ではウクライナ語が話され、東部では主にロシア語が話される。こうしたウクライナで一方が他方を支配しようとすれば内戦または分裂につながるだろうとしているが、その通りになった。
軍事クーデターや大規模な空爆で多くの人を殺したキッシンジャーだが、その彼が見てもネオコンが行っていることは危険に思えたということである。ロシア側が忍耐強かったので核戦争にはならなかっただけである。ネオコンはロシアに核戦争を始めさせたかったのかもしれない。
そのネオコンはホワイトハウスから追い出されたが、戦争を終えることは難しい。ロシアはアメリカ/NATOがウクライナへ入ることを許すはずはなく、(ネオ・)ナチが存続することも認めないだろう。戦争の継続はヨーロッパだけでなくアメリカを疲弊させるが、ロシアはそれを狙っているはずだ。アメリカのドナルド・トランプ大統領は短期間に戦闘を終わらせたいとしているが、簡単ではない。そもそもゼレンスキーは昨年5月以降、ウクライナの大統領ではなく、ロシア政府と交渉する権限はないのだ。
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※なお、本稿は櫻井ジャーナルhttps://plaza.rakuten.co.jp/condor33/
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