植草一秀【連載】知られざる真実/2025年2月 7日 (金) 忍び寄る大政翼賛政治の軍靴
社会・経済政界再編の足音が忍び寄っていると言われるが日本政治の今後に期待を寄せることができるのか。
昨年10月総選挙で自公は過半数を割り込んだ。
衆院過半数233に対して自公の獲得議席は215.
過半数より18議席も少なかった。
自民裏金議員が4名当選し、大分県と鹿児島県選出の自民系議員2名が自民入りして221議席を確保。
それでも12議席足りない。
非自公が結束すれば政権交代を実現できた。
この道を模索するべきだったが、選挙後に自公政権持続は直ちに決まった。
国民民主党がいち早く自公にすり寄ったためだ。
自公は維新、国民、立民のいずれかと組めば衆議院過半数を確保する。
維新、国民、立民は「隠れ自公」の性格を強め、この三勢力のすべてが政権与党入りを狙っている。
こうなると買い手市場になる。
自民党は実は選り取り見取りになる。
維新、国民、立民のすべてが自民に秋波を送り、連立政権参画の意向をほのめかす。
維新、国民、立民の側が自民に接近する姿勢を示す。
これでは政治刷新の気運が盛り上がらないのは当然だ。
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自公が衆院過半数を割り込んだにもかかわらず、自民内で石破降ろしは本格化していない。
背景に自民内の勢力図激変がある。
これまで権勢を誇っていた安倍派が裏金事件で激減。
発言力を急激に低下させた。
自民議席は激減したが、安倍派凋落を歓迎する勢力が存在する。
石破首相が、旧安倍派が主導した右路線から距離を置けば、自民の分裂も現実味を帯びる。
しかし、自民党右派だけで衆議院過半数を制する可能性はない。
このため、自民党旧安倍派も目立った動きを取ることができない。
選択的夫婦別姓問題で石破首相がこれを容認する姿勢を示すなら自民党は分裂する可能性を高める。
その場合、石破首相は自民右派と離別して立民と連立政権樹立に進む可能性も考えられる。
いわゆる大連立だが、この場合には自民が分裂するだけでなく、立民も分裂する可能性がある。
自民・立民大連立の下で自民右派が自民から離脱し、立民左派が立民から離脱する。
政界大再編の可能性が浮上する。
しかし、政界再編をもたらす、もうひとつの原動力を考慮しておく必要がある。
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それは、与野党を問わず、政権与党に加わりたいとする利権動機。
政治屋が政権与党に加わろうとする最大の動機は予算配分に関与できること。
与党議員になれば予算計上の細目において各政治屋の要請が通る余地が拡大する。
財務省は個別予算の査定を通じて政権与党議員の意向を取り入れる。
予算配分での利権獲得のために政治屋は何が何でも政権与党入りを目指す。
こうなると大連立が膨らむ可能性が高まる。
自民党旧安倍派も政権与党から離脱して冷や飯食いに転じるよりは、気に食わない首相の下でも政権与党に留まる方が利権獲得に好都合と考える。
立民左派も筋を通して大連立を拒絶して少数政党に身をやつすよりも、政権与党の一角に加わり、政治権力の恩恵に預かろうとする。
公明党も、自民が他党との連立に走り、公明の恩義を忘れる行動を示しても、野党に転落するよりは、政権与党の一角に居続けることの方がメリットが大きいと考えるのではないか。
立民との大連立になれば維新や国民は政権与党入りの機会を逃すことになるが、これを回避するために維新や国民も政権与党入りを求めるかも知れない。
こうなると「大政翼賛政治」になる。
「ほぼオール与党」の日本政治体制が構築される。
日本政治刷新など夢のまた夢。
本年7月に参院選があるから、参院選までは、この意向は隠されるだろう。
しかし、選挙後は自民との連立に加わりたいとする各党の動きが本格化する可能性が高いのではないか。
与野党対決というより、野党の政権与党入り競争が展開されつつあると見るべきと思われる。
※なお、この記事は下記からの転載であることをお断りします。
植草一秀の『知られざる真実』2025年2月 7日 (金)「忍び寄る大政翼賛政治の軍靴」
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植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050