【連載】植草一秀の「知られざる真実」

植草一秀【連載】知られざる真実/2025年2月10日 (月) いま考えるべき政治の原点

植草一秀

記録的な豪雪が続いている。

能登半島では昨年1月に巨大地震が発生。

9月には豪雨災害もあった。

その能登地方が大雪に見舞われている。

NHKニュースで能登の女性の声が紹介された。

地震と豪雨と大雪で

家も失った。

仕事も失った。

車も失った。

けれども健康な体だけが残った。

これが一番大切な財産。

声を発した女性は過酷な状況下で気丈にふるまう凛とした姿勢を示した。

太田隆文監督映画『朝日の当たる家』

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https://eiga.com/movie/79038/

静岡県の自然に囲まれた町で農業を営む平田家は両親と2人の娘が暮らすごく平凡な家族。

そんなある日、大地震により原子力発電所で事故が発生。

避難所へ移った一家は何カ月も家に帰れず、父は仕事を失い、母はノイローゼに、妹は病気になってしまう。

この状況で事故のために病気になった妹が母に問う。

「お母さん、幸せってなんだろうね。」

平和な穏やかな、あたりまえの日々を、愛する人々と平凡に生きてゆけること。

そこに幸せの原点がある。

政治は先端の巨額の富の獲得を狙う大資本と富裕層のためにではなく、広く国民大衆のためにあるべきものではないか。

永田町政治からこの原点が見落とされている。

自民党の体質は裏金問題に象徴されている。

国民の日々の生活よりも、自分の日々の金儲けにしか関心がない。

「成長戦略」が叫ばれたが、「成長戦略」とは「大企業利益の成長戦略」に過ぎなかった。

大企業利益は史上空前の規模に拡大したが、労働者実質賃金は減少し続けた。

かつての分厚い中間層は消滅し、圧倒的多数の国民が下流に押し流されている。

このなかで、昨年10月の総選挙が実施された。

裏金自民党が壊滅的な敗北を喫したことは当然だった。

自民党で壊滅的敗北を喫したのは旧安倍派。

アベノミクスが始動した2012年末以来の10年間で日本は本当に惨憺たる国になってしまった。

政治の犯罪は刑事司法が取り締まらない。

モリ・カケ・サクラの犯罪事案でも、政治家の犯罪は無罪放免にされ、権力に楯突いた者だけが検挙された。

日本の暗黒化が加速したが、ようやく悪事が少しずつ明かされるようになった。

裏金問題が発覚したが、それでも、その処理や事後対応は遅れに遅れた。

その結果として総選挙での自民惨敗が現実化したのである。

このタイミングで世直しの政権交代が生じなければならないが、腐敗は野党にも及んでいる。

野党が結束すれば政治刷新が可能であるが、野党が与党入りにしのぎを削っている。

国民民主は選挙の間だけ消費税減税を掲げたが、選挙が終わると一切言わなくなった。

103万円の壁を多少引き上げることは財務省の許容範囲内。

そもそも、インフレが進行したのだから103万円は大幅に引き上げて当然のことで財務省も織り込み済みだ。

103万円の壁を数十万円引き上げることは「プロレス」のギブアップ。

八百長試合と言って過言でない。

維新は高校授業料無償化を掲げて政権与党入りを狙う。

立民は「減税は未来世代からの搾取」とのデマゴギーを唱えて予算の年度内成立に協力する姿勢を示す。

これでは国民本位の政治は実現しない。

主権者である国民の側に立つ政治勢力が必要。

そして、その政治勢力が一つにまとまることが必要。

国民の側に立つ政治勢力はあるが、一つにまとまる努力を示さない。

バラバラのままでは政治刷新は実現しない。

※なお、この記事は下記からの転載であることをお断りします。
植草一秀の『知られざる真実』2025年2月10日 (月)「いま考えるべき政治の原点」
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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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