【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.02.13XML:トランプ政権もバイデン政権と同様、正確な状況判断ができず、苦境に陥る可能性

櫻井春彦

 アメリカ政府とロシア政府はウクライナ情勢について外交交渉を続けていると伝えられている。ドナルド・トランプ米大統領はロシアに対して軍事的、あるいは経済的な圧力を加えることで速やかに停戦を実現するとしていたが、すでにアメリカをはじめとする西側が約束を守らないとウラジミル・プーチン露大統領が判断している現状では口先だけで戦闘を停止させることは困難だ。

 パレスチナの問題でもそうだが、トランプ大統領の発言は事実を無視している。そこで、彼は交渉の手段として現実離れしたことを口にしているのだと推測する人もいた。実現不可能な計画は計画でなく、カモフラージュの御伽噺だということだが、ここに来て状況を理解できていないという見方が強まっている。

 トランプは大統領選挙で勝利した直後の昨年11月にキース・ケロッグ退役陸軍中将をウクライナ/ロシア担当の特使に任命した。この軍人は選挙期間中の2016年3月からトランプの安全保障政策顧問を務め、大統領就任後の18年4月から21年1月まで国家安全保障問題担当副大統領補佐官を務めている。

 トランプは前回、マイケル・フリン元DIA局長を国家安全保障問題担当大統領補佐官に任命したのだが、民主党やCIAから激しく攻撃されて2017年2月に解任されてしまう。それほど恐れられていたと言える。そのフリンほどかどうかは不明だが、ケロッグをトランプが信頼しているとは言えるだろう。

 ​ケロッグは彼と同じトランプの安全保障政策顧問を務めていたフレデリック・フライツとふたりで昨年6月、トランプに対し、ウクライナにおけるロシアとの戦争を終結させるための和平プランを提示した​。ロシアとウクライナ、両国に和平交渉を強制するというものだ。停戦と和平交渉に同意すればウクライナへの軍事援助を継続、ロシアが同意しなければウクライナへの武器供給を増やすとしていた。

 その段階でウクライナ軍の死傷者数が膨らみ、ウクライナ軍だけでなくNATO軍の武器弾薬が枯渇、戦闘を継続することが難しくなっていたわけで、ケロッグたちの案は非現実的だった。

 例えば、​イギリスのベン・ウォレス元国防大臣は2023年10月1日、テレグラム紙に寄稿した論稿の中でウクライナ兵の平均年齢はすでに40歳を超えていると指摘​、ウクライナの街頭で男性が徴兵担当者に拉致される様子を撮影した少なからぬ映像がインターネット上で公開され続けている。

 こうした戦況をアメリカ側が知らなかったとは思えない。しかもロシア経済は西側資本の撤退で国内産業が復活、ロシアの2024年における経済成長率は4.1%だ。

 もしケロッグやフライツたちが状況を把握できず、ロシアは疲弊し、西側との合意を望んでいると信じているとするなら、アメリカの情報力は驚くほど低下しているということだ。そうした情報力で事態を好転させられるとは思えない。

 その貧困な情報力に基づいてアメリカ政府はロシア政府を恫喝したものの、プーチン大統領からの返答は停戦や凍結はせず、2022年9月にロシアへの編入が宣言されたドネツク、ルガンスク、サポリージャ、ヘルソンの4州をロシア領として承認し、ウクライナ軍を解体してNATOに加盟できないようにするように求めるというもの。ネオ・ナチの消滅させるとも宣言しているだろう。ロシア側の断固とした姿勢はアメリカ側に伝わったようだ。

 停戦を実現して戦力を回復する時間を稼ぐ一方、石油、天然ガス、レア・アースなどの資源、あるいは穀倉地帯を手に入れるとトランプ政権も計算していたかもしれないが、とらぬ狸の何とやら、になるだろう。

 ウクライナの敗北は2022年の段階で決定的だった。ネオコンは戦況を逆転できると信じていたようだが、妄想にすぎなかったのである。その戦争で西側から供給された武器弾薬の約半数は行方不明になった。

 ウクライナ軍の腐敗分子が行ったのか西側の情報機関が行ったのか不明だが、横流しされている。中東やラテン・アメリカだけでなく、西側へも流れ込んでいる可能性がある。戦闘員の帰国、あるいは流入も問題になると懸念されている。

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