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【櫻井ジャーナル】2025.02.19XML: ロシアとの関係を修復は、中露の関係を分断して中国を攻撃するためだとの疑惑
国際政治アメリカとロシアの高官がサウジアラビアのリヤドで協議を始めた。アメリカからはマルコ・ルビオ国務長官、マイク・ウォルツ国家安全保障担当補佐官、スティーブ・ウィトコフ中東担当特使、またロシアからはセルゲイ・ラブロフ外相とクレムリンのユーリー・ウシャコフ大統領補佐官が出席した。またサウジアラビアの外相や国家安全保障問題担当補佐官も同席している。
ウクライナを舞台とした戦闘はバラク・オバマ政権がネオ・ナチをを利用して実行したクーデターから始まり、ジョー・バイデン政権が従属国を率いて行ってきた。兵士として戦っているのは基本的にウクライナ人だが、実際はアメリカとロシアの戦争だ。そうした事情から考え、交渉の場にウクライナの自称大統領やヨーロッパ諸国の首脳がいないことを不思議がることはない。
ドナルド・トランプ大統領はロシアの要求を相当部分呑むと見られ、両国の関係を修復する姿勢を見せているのだが、その一方、ガザでは進展が見られない。そうした中、注目されているのが台湾問題だ。アメリカ国務省の台湾に関するサイトから「台湾の独立を支持しない」という文言を削除したのだ。トランプ政権は東アジアの軍事的な緊張を高めようとしている。
中国にとって「台湾の独立」とは台湾がアメリカの支配下に入ることを意味する。日中戦争の際、日本軍は中国を空爆するための「空母」として台湾を利用、ダグラス・マッカーサーは第2次世界大戦や朝鮮戦争の際、台湾を「不沈空母」と呼んでいた。
日本では19世紀後半、イギリスを後ろ盾とする勢力が「徳川朝」を倒して天皇制官僚国家の「明治朝」を樹立した。そのクーデターは明治維新と呼ばれている。その新王朝は1872年に琉球を併合した後に台湾へ派兵、続いて江華島へ軍艦を派遣、そして日清戦争や日露戦争に突き進んだ。
日露戦争では「棍棒外交」で有名なアメリカのセオドア・ルーズベルト大統領が日本を助けるために講和勧告を出し、1905年9月には講和条約が締結され、その2カ月後に桂太郎首相はアメリカで「鉄道王」と呼ばれていたエドワード・ハリマンと満鉄を共同経営することで合意しているが、ポーツマス会議で日本全権を務めた小村寿太郎はこの合意に猛反対し、覚書は破棄された。日露戦争で獲得した利権をアメリカに取られると小村は主張したのだが、セオドア・ルーズベルトが講和を仲介した目的のひとつは利権にあったのだろう。
ルーズベルトは1880年にハーバード大学を卒業しているが、その2年前に同大学で法律を学んでいた金子堅太郎と親しい間柄だった。ふたりは1890年にルーズベルトの自宅で知り合っている。
日露戦争の最中、金子は日本政府の使節として渡米、1904年にハーバード大学でアンゴロ・サクソンの価値観を支持するために日本はロシアと戦っていると演説、同じことをシカゴやニューヨークでも語っていた。また日露戦争の後、セオドアは日本が自分たちのために戦ったと書いている。(James Bradley, “The China Mirage,” Little, Brown and Company, 2015)
日本が韓国を併合する動きを察知した朝鮮の高宗はホーマー・ハルバートを特使としてワシントンへ派遣するが、セオドア大統領やエリフ・ルート国務長官はその特使と会おうとしない。朝鮮は米朝修好通商条約の第1条に基づいて独立維持のための援助を求めたが、これをアメリカ政府は拒否している。すでにセオドア・ルーズベルト政権は桂太郎や金子堅太郎らと韓国併合で話はついていたのである。日本の中国侵略の背後にはイギリスやアメリカが存在していたと言えるだろう。
第2次世界大戦後、アメリカは日本を東アジア支配の拠点として利用してきた。1972年2月にリチャード・ニクソン大統領が中国を訪問、その際に発表された「上海コミュニケ」でアメリカは「台湾海峡の両側にいるすべての中国人は、中国は1つであると主張している」ことを正式に認めた。いわゆる「ひとつの中国」だ。この立場をアメリカ政府は維持してきたが、2月13日にアメリカの国務省は台湾に関するサイトから「台湾の独立を支持しない」という文言を削除したのである。「独立を支持する」と主張しているわけではないが、中国を刺激した。
トランプ政権は中国との対決姿勢を強めている。経済戦争が注目されているが、21世紀に入ってから軍事的な圧力も強めてきた。自衛隊は2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させているが、これはアメリカの軍事戦略に基づくものだ。
この戦略は2022年の4月にアメリカ国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が説明している。GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲するという計画を公表したのだ。
南西諸島にミサイル発射基地が建設されつつあった2017年11月、アメリカはオーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議、18年5月にはアメリカ太平洋軍をインド太平洋軍へ名称変更した。インド洋と太平洋を一体のものとして扱うということだろう。
2020年6月にNATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長はオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言。2021年9月にはアメリカ、イギリス、オーストラリアのアングロ・サクソン3カ国が太平洋でAUKUSなる軍事同盟を創設したとする発表があった。
アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられたが、そうした潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦になる。その原子力潜水艦を受け入れる可能性があると山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日に表明した。
与那国島にミサイル発射施設を建設する前年、2015年の6月、総理大臣だった故安倍晋三は赤坂の「赤坂飯店」で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で、「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと報道されている。安倍首相は南シナ海における中国との軍事衝突を見通していた。
岸田文雄政権は2022年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにした。
2022年10月には、「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。
トランプ政権がロシアとの戦争状態を追えたがっている理由のひとつは対中国戦争にあると見る人もいる。ロシアと中国を分断し、中国を攻撃しやすくしたのだろうということだ。ニクソンが1972年に中国を訪問し、関係修復に乗り出した目的のひとつはソ連と中国を分断し、ソ連を孤立させることにあった。その成功体験を再現したのではないかと考える人がいる。
第2次世界大戦後、アメリカのハリー・トルーマン政権は蒋介石に中国を支配させる予定で、資金援助だけでなく軍事顧問団も派遣、ソ連のヨシフ・スターリンもコミュニストには中国を統一する力がないという判断から蒋介石を支持していた。ソ連が東ヨーロッパを支配できた一因はここにあるという人もいる。
1946年夏の戦力を比較すると国民党軍は200万人の正規軍を含め総兵力は430万人。それに対し、紅軍(コミュニスト)は120万人強にすぎず、装備は日本軍から奪った旧式のもの。国民党の勝利は確実だと思われていたのだが、1947年の夏になると農民の支持を背景として人民解放軍(47年3月に改称)が反攻を開始。兵力は国民党軍365万人に減少したのに対し、人民解放軍は280万人へ増加。1948年の後半になると人民解放軍が国民党軍を圧倒するようになり、49年1月に解放軍は北京へ無血入城した。
1949年に入るとアメリカの極秘破壊工作機関OPCが拠点を上海から日本へ移動させる。厚木基地をはじめ6カ所に拠点がつくられた。中華人民共和国が成立するのはその年の10月のことだ。(Stephen Endicott & Edward Hagerman, “The United States and Biological Warfare”, Indiana University Press, 1998)
OPCが拠点を上海から日本へ移動させた1949年、国鉄を舞台とした怪事件が相次ぐ。7月5日から6日にかけての下山事件、7月15日の三鷹事件、そして8月17日の松川事件だ。いずれも共産党が実行したというプロパガンダが展開され、組合活動は大きなダメージを受け、物資の輸送が滞る心配はなくなった。日本を兵站拠点にする準備が整ったということだ。
アメリカでも日本でもロシアと中国が手を組むことはありえないと今でも主張する人が少なくない。そうした人びとには現在の状況が受け入れられないのだろうが、すでに両国はパイプライン、鉄道、道路などの建設で結びつきを強めている。
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