
☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年2月17日):国際教育分析センター 「ヴァルダイ国際討論クラブ」のフョードル・ルキヤノフの研究主任「米ロ電話会談は世界の権力関係を大転換させる」
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
ドナルド・トランプ米大統領とウラジーミル・プーチンロシア大統領。© スプートニク/アレクセイ・ニコルスキー
ウラジミール・プーチン大統領とドナルド・トランプ大統領の待望の電話会談がついに実現し、地政学的な情勢に衝撃が走った。しかし、勝利や絶望に浮かれる前に、実際に何が起こったのかを認識する価値がある。ロシアと米国の関係は、単に本来の状態、つまり戦略的な対立や利害の対立、世界観の根本的な違いに戻っただけなのだ。
米国は何十年もの間、最初は刺激を使って、後には強制を通じて、ロシアを自らが求める姿に作り変えることができるという幻想を追い求めてきた。米国側は、ロシア側を「自由主義的な国際秩序」の中で従順な友好国にできると信じていたが、現実に直面して初めてその幻想は崩れ去った。ロシアは決して作り変えられないのだ。一方、ロシア側は何年もかけて共通点を見つけようとし、実行可能な共存に到達することを願って自らの政策を調整した。その実験も10年前に終わった。
1980 年代後半の冷戦体制の崩壊は歴史上の異例であり、多くの人が恒久的な変化と勘違いした偶然の出来事だった。西側諸国が「勝利」したという言説は時期尚早だった。歴史は終わるのではなく、進化するのだ。時が経つにつれ、一極世界という幻想を維持することが難しくなり、世界の勢力の均衡は変化し始めた。旧体制から利益を得た人々は必死にそれにしがみつき、損をしたと感じた人々はより強く抵抗した。ウクライナは、この闘争における不幸な断層線、相容れない視座の戦場となった。
関連記事:Russia has won a war against the West: What the Putin-Trump call really means
いま起きているのは、新しい時代の始まりではなく、古い時代の必然的な修正だ。米国は、トランプ大統領の下でも、大国間の競争が再び国際政治の決定的な特徴になることを認識している。しかし、政治的な思想闘争が地政学的利益を覆い隠していた過去数十年とは異なり、新しい競争はより現実的で、普遍的価値の見せかけは取り除かれている。自由主義のもとでの世界秩序はもはや指導原理ではなく、過去の遺物である。
この変化は平和を保証するものではなく、対立する危険を排除するものでもない。しかし、ある種の合理性を方程式に取り戻すものである。西側諸国は、しばしば無謀で逆効果な行動をとってきた政治思想的熱意から、権力と利益をより冷静に評価する方向に変わりつつある。焦点はもはや、一方を屈服させることではなく、具体的な利益を交渉することに移っている。
一方、ロシアは、この新しい世界秩序を形成する上で重要な役割を担う立場にある。1990 年代の戦略的空想は、西側諸国の力の限界を認める厳しい現実主義に取って代わられた。「工場出荷時の設定」への回帰は安定を意味するのではなく、強さや影響力、そして計算された外交が歴史の進路を左右する世界政治の基本に戻ることを意味する。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年2月17日)「EU諸国の幹部はタカ派が多いので、トランプの思惑は順調には進まない可能性がある 。」
http://tmmethod.blog.fc2.com/
からの転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒Fyodor Lukyanov: Trump’s call with Putin marks a shift in global power>
米ロ関係は今や「工場出荷時の設定」に戻るだろうが、ここで重要なのは西側諸国の行き過ぎた介入の終焉である。
筆者:フョードル・ルキヤノフ(Fyodor Lukyanov)
ロシア・グローバル情勢編集長、外交防衛政策評議会幹部会議長、ヴァルダイ国際討論クラブ研究主任
出典:RT 2025年2月13日
https://www.rt.com/news/612651-trumps-call-with-putin/