【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.02.23XML:CIA系組織から資金を受け取っていたBBCはすでに言論の自由を放棄していた

櫻井春彦

 ​イギリスの有力メディア、BBC(英国放送協会)は2月4日、「USAIDの資金援助に関する声明」を発表した​。その中で同協会の「国際開発慈善団体」だというBBCメディア・アクションが2023年から24年にかけて収入の約8%をUSAID(米国国際開発庁)から得ていたことが明らかにされた。この「慈善団体」は、政治的に不安定な地域で現地のメディアと連携して影響力を拡大させるキャンペーンを展開している。

 USAIDはCIAの工作資金を流す仕組みのひとつ。「独立系メディア」と同様、BBCも情報機関の資金を受け取っていたことになるが、ドナルド・トランプ米大統領が対外援助のほぼ全面的な凍結を命令したことから、西側で好まれている「独立系メディア」と同じように、BBCの「慈善団体」も影響を受けた。

 そのBBCは2019年6月、世界の報道機関やソーシャル・メディアの幹部を集めて「信頼できるニュースサミット」を開催、9月には「信頼できるニュース憲章」を発表し、「TNI(信頼できるニュース戦略)」を組織した。「偽情報が定着する前に迅速かつ共同で行動して偽情報を弱体化させる」ことが目的だとされているが、要するに国際的な検閲体制の構築であり、日本からはNHKが参加している。

 その年の12月に中国の湖北省武漢の病院でSARS(重症急性呼吸器症候群)と似た重症の肺炎患者が発見され、COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動が始まり、西側では情報が厳しく統制される。公式発表に反する情報は「フェイク」だとされ、封じ込めようとする動きがあった。その後、「フェイク」とされた情報が事実であり、公式発表がフェイクだといことが明らかになってきた。

 以前から言論統制の仕組みがあったことは本ブログでも繰り返し書いてきた。例えば、1948年にスタートしたCIAの極秘プロジェクト「モッキンバード」。責任者はコード・メイヤーで、実際の工作で中心的な役割を果たしたのはアレン・ダレス、ダレスの側近だったフランク・ウィズナーとリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだという。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979)

 グラハムの死後、妻のキャサリーンが社主に就任、その下でワシントン・ポスト紙は「ウォーターゲート事件」を暴くのだが、その取材で中心的な役割を果たしたカール・バーンスタインは1977年に同紙を辞めて「CIAとメディア」というタイトルの記事をローリング・ストーン誌に書いている。

 その記事によると、1977年までの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供したという。ニューズウィーク誌の編集者だったマルコム・ミュアは責任ある立場にある全記者と緊密な関係をCIAは維持していたと思うと述べたとしている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)

 またフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だった​ウド・ウルフコテ​は2014年2月、ドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出版、その中で多くの国のジャーナリストがCIAに買収されていて、そうした工作が危険な状況を作り出していると告発している。CIAに買収されたジャーナリストは人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開し、ロシアとの戦争へと導いて引き返すことのできないところまで来ていると彼は警鐘を鳴らしていた。

 2003年3月にアメリカ主導軍がイラクを先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒したが、その際、ジョージ・W・ブッシュ政権は軍事侵攻を正当化するために「大量破壊兵器」の話を宣伝した。その話をもっともらしく見せるため、02年9月にイギリスのトニー・ブレア政権は「イラク大量破壊兵器、イギリス政府の評価」というタイトルの報告書を作成している。いわゆる「9月文書」だ。これはメディアにリークされ、サン紙は「破滅まで45分のイギリス人」というセンセーショナルなタイトルの記事を掲載している。

 この報告書をアメリカのコリン・パウエル国務長官は絶賛したが、大学院生の論文を無断引用した代物。その文書をイギリス政府はイラクの脅威を強調するため改竄している。

 BBCのアンドリュー・ギリガン記者は2003年5月にラジオ番組で「9月文書」を取り上げ、粉飾されていると語る。サンデー・オン・メール紙で彼はアラステアー・キャンベル首席補佐官が情報機関の反対を押し切って「45分話」を挿入したと主張した。2004年10月にジャック・ストロー外相は「45分話」が嘘だということを認めている。つまりギリガンの話は事実だった。

 ギリガンの情報源はイギリス国防省で生物化学兵器部門を指揮していたデイビッド・ケリー。そのケリーはイラクの大量破壊兵器がないとブレア首相に説明したが、その首相は偽情報で世論を戦争へと誘導しようとする。そこでギリガンに事実を伝えたのだ。

 しかし、ブレア政権の言論弾圧は厳しく、ケリーは変死している。ギリガン記者はBBCから追い出され、放送局の執行役員会会長とBBC会長は辞任に追い込まれた。

 ドナルド・トランプ米大統領はウォロディミル・ゼレンスキーを支持しているウクライナ国民は4%だと発言、西側の有力メディアはその話を否定しようと必死だが、BBCやウクライナの「独立系メディア」を信じろという方が無理だ。西側の有力メディアが根拠にしている民間世論調査会社はゼレンスキーの仲間が所有、USAID、同じようにCIAの資金を流しているNED、あるいはソロス財団からも間接的に資金が提供されているという。そもそもウクライナでは政府に批判的なメディアは潰され、野党は禁止されている。

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