【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.02.25XML:ドイツの連邦議会選挙で平和を訴えてきたAfDが第2党に躍進

櫻井春彦

ドイツでは2月23日に連邦議会選挙があり、CDU/CSU(キリスト教民主同盟)が32%を獲得して第1党になった。EUの現体制を支えている勢力から激しい攻撃を受けてきたAfD(ドイツのための選択肢)は得票率21%で第2党。現首相のオラフ・ショルツが率いるSPD(社会民主党)は20%で第3党に止まり、ロシアとの戦争を煽っていた好戦派のアンナレーナ・ベアボック外相が所属する同盟90/緑の党は12%で第4党だ。AfDは平和を訴えているが、CDU/CSUは与党と同じようにロシアとの戦争を継続したいと考えている。

 議席の増減を見ると、CDU/CSUが11議席増、AfDが69議席増だったのに対し、SPDは86議席減、同盟90/緑の党は33議席減。そのほか左翼党が25議席増やしている。ショルツ政権はアメリカのジョー・バイデン政権の命令に従ってロシアとの戦争へのめりこんでドイツ経済に大きなダメージを与え、社会を破壊、首相は無能さを曝け出していた。好戦的な言動を繰り返していたベアボックの同盟90/緑の党が敗北するのも必然だった。

 平和を実現し、経済を回復させることを望む人の声がAfDの躍進につながったのだが、ヨーロッパの支配層はそうした声を抑え込んでいる。平和を求めるデモをインターネットは表示しないようにされているようだ。イギリスやドイツで戦争に反対すると要注意人物としてチェックされる恐れがある。スウェーデンでは、NATO加盟は重要すぎる問題なので国民に承認を求めないと説明されている。

 ウクライナにおけるロシアとの戦争でイギリスはアメリカのネオコンと同じように重要な推進役を演じてきた。アメリカ海兵隊の元情報将校で、UNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めた​スコット・リッターによると、ウォロドミル・ゼレンスキーは2020年10月にイギリスを公式訪問した際、イギリスの対外情報機関MI6のリチャード・ムーア長官を非公式に訪問している​。その事実から、ゼレンスキーはMI6のエージェントであり、そのハンドラー(エージェントを管理する担当オフィサー)はムーア長官だと推測されている。

 そのイギリスで労働党の党首を務めていたジェレミー・コービンはイスラエルによるパレスチナでの破壊と殺戮に反対、ロシアとの戦争にも反対していたが、有力メディアから「反ユダヤ主義者」だというタグをつけられ、激しく攻撃されて党首の座から引き摺り下ろされた。

 その後釜に据えられた​キール・スターマー​は2008年11月から13年11月までCPS(王立検察局)を検察局長として率いていた人物で、内部告発を支援する活動を続けてきたWikiLeakesの象徴だったジュリアン・アッサンジの引き渡し問題で2009年、11年、12年、13年、4度にわたってワシントンDCを訪問している。そのスターマーは親イスラエルを公言、自分の妻ビクトリア・アレキサンダーの家族はユダヤ系だとアピールしている。

 イギリスの労働党はイスラエルが「建国」されて以来、親イスラエルだったが、1982年9月にレバノンのパレスチナ難民キャンプのサブラとシャティーラでイスラエルとファランジスト党がパレスチナ難民を虐殺して以来、親パレスチナへ変化しつつあった。

 この虐殺はファランジスト党の武装勢力はイスラエル軍の支援を受けながら無防備の難民キャンプを制圧、その際に数百人、あるいは3000人以上の難民を殺したと言われている。イギリス労働党の内部ではイスラエルの責任を問い、パレスチナを支援する声が大きくなった。

 ところが、1994年5月、労働党の党首だったジョン・スミスが急死、その1カ月後に行われた投票で勝利したのがイスラエルを後ろ盾にするトニー・ブレアだ。1994年1月に彼は妻のチェリー・ブースと一緒にイスラエル政府の招待で同国を訪問、帰国して2カ月後にロンドンのイスラエル大使館で開かれたパーティーに出席、そこで全権公使だったギデオン・メイアーから紹介された富豪のマイケル・レビーを紹介され、それ以降、レビーはブレアの重要なスポンサーになった。

 レビーだけでなく、イスラエルとイギリスとの関係強化を目的としているという団体LFIを資金源にしていたブレアは労働組合を頼る必要がない。そこで国内政策はマーガレット・サッチャーと同じ新自由主義、国外では親イスラエル的で好戦的なものになったのだ。

 労働党員の中にはブレアのような姿勢に反発する人は少なくない。そこで台頭してきた人物がコービンにほかならない。2015年9月から党首を務めるが、これを米英の支配層は嫌ったのだ。

 コービンに対する攻撃には偽情報も使われているが、その重要な発信源のひとつが2015年に創設されたインテグリティ・イニシアチブ。イギリス外務省が資金を出している。「偽情報から民主主義を守る」としているが、その実態は偽情報を発信するプロパガンダ機関にすぎない。そして2020年4月4日、党首はスターマーに交代した。

 ロシアにはウクライナとの戦争に反対する反ウラジミル・プーチン派が少人数ながら存在していたが、国外へ脱出した。2022年2月以降にロシアを離れたロシアの反体制派はその約7割がイスラエルへ移住、パレスチナ人虐殺を支持していると伝えられている。

 イスラエル軍によるパレスチナの破壊と住民虐殺を支えているのは西側からの支援。​SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)によると、軍事物資の69%はアメリカから、30%はドイツから供給​され、それをイギリスが輸送している。

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