【連載】植草一秀の「知られざる真実」

植草一秀【連載】知られざる真実/2025年3月 4日 (火) 予算案衆院通過の八百長国会

植草一秀

本日、3月4日に予算案が衆院予算委員会可決された。

同日午後の衆院本会議で採決・可決され、参院に送付される見通し。

衆院通過が3月4日にずれ込んだため、予算の年度内自然成立は10年ぶりに実現しなかったが、参院は与党が過半数を占めているため、予算の年度内成立は確定的になった。

立憲民主党の衆院予算委員会委員長の安住淳氏は

「予算は(国政全般の)血液だから、支障を来すことは避けたい。」

と述べて、3月4日の予算案衆院採決を認めた。

立憲民主党は高額療養費制度改悪凍結を求めていたが、石破内閣は25年の制度改悪強行を主張。

立憲民主党の要請を拒絶した。

また、自民党裏金事件に関して旧安倍派事務局長に対する聴取結果から旧安倍派幹部の説明と食い違う部分が明らかになり、旧安倍派幹部の国会への参考人招致を野党が求めたが、石破内閣は今後協議するとの対応しか示さなかった。

少数与党の国会運営では、野党が結束すれば重要事項を与党に呑ませることができる。

いくつもの重大案件があったが、野党は、結束して与党に要求を呑ませることをしなかった。

国民、維新、立民の野党は、野党で結束するよりも自公にすり寄り、自党だけが提唱する案を与党に呑ませることに腐心した。

党利党略優先の野党行動を主権者国民は忘れてはならない。

国民民主の自公へのすり寄りを見て対抗心を燃やしたのが維新。

維新は高校授業料無償化を掲げて自公に接近。

国民民主が掲げる所得税減税より安上がりの高校授業料無償化を提案して自公にすり寄った。

挙句の果てに自公と合意文書を交わし、予算案への賛成を表明した。

少数与党によって最大の試金石は予算の成立。

維新は予算成立に全面協力して自公にすり寄った。

ところが、その維新が党大会で奇妙な方針を決定した。

3月1日に開催した党大会で、夏の参院選で〈与党過半数割れを目指す〉ことを掲げた活動方針を決定した。

予算案の衆院通過に全面協力して石破内閣にすり寄りながら、夏の参院選で与党過半数割れを目指すとは意味不明。

登壇した前原誠司共同代表は

「(維新は)自公の補完勢力ではない。われわれの考え方を実現するために政治的な判断をした。」

と述べたが支離滅裂だ。

前原誠司氏は2006年に偽メール問題で民主党代表を引責辞任。

2017年は民進党から「希望の党」への転換を図って自滅。

「国民民主党」を立ち上げたが衰退。

「教育無償化を実現する会」も瞬時に消滅した。

この前原氏が維新に移籍して自公すり寄りを主導した。

夏の参院選に向けての権謀術数が渦巻く。

国民民主は自公との接近が参院選に不利になると見て、土壇場で自公と距離があるように見せかけた。

立憲民主は参院選後の大連立を見越して自公と対決しなかった。

維新は露骨に自公にすり寄ったが、これが参院選であだになる可能性が高い。

足元では兵庫県知事問題がまったく解決していない。

兵庫県在住の有権者も兵庫県知事選の全体像を掴めていない。

私のところにも質問が舞い込んでくる。

斎藤元彦氏擁護とアンチ斎藤氏との分断が深刻で、擁護派は斎藤元彦知事追い落とし工作があって、斎藤氏は被害者だと強弁する。

しかし、少し距離を置いて全体を俯瞰すれば、基本構造は明白だ。

すべてのカギを握るのは〈維新〉だ。

〈維新〉は〈維新〉がコントロールできる知事を是が非でも維持したかったのだ。

目先は〈万博〉という難所が控える。

〈万博〉の先には〈IR〉という巨大利権事業が控える。

この〈IR〉と淡路島利権も直結する。

さらに、ジャーナリストの佐藤章氏が指摘する〈産廃最終処分場〉建設問題がある。

〈維新〉が〈兵庫県知事選の闇〉を明らかにするキーワードなのだ。

※なお、この記事は下記からの転載であることをお断りします。
植草一秀の『知られざる真実』2025年3月 4日 (火)「予算案衆院通過の八百長国会」
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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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