
☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年3月9日):英国MI6は「中立国」スイスで転覆活動。CIAも顔負けの秘密工作!
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
P-26の秘密地下司令室のひとつを巡回中のスイス兵
1月25日、米国の通信社エレクトロニック・インティファーダ社の共同創設者で、著名なパレスチナ系米国民ジャーナリスト兼活動家アリ・アブニマさんが、講演会に向かう途中、スイスで潜入捜査官に暴力的に逮捕された。アブニマさんは外界から完全に遮断された状態で3日2晩を刑務所で過ごし、その間、弁護士との面会も許されず、拘留理由も知らされないまま、地元国防省の諜報機関の職員から尋問を受けた。その後、アブニマさんは危険で暴力的な犯罪者と同様の扱いで、国外追放された。
アブニマさんが受けた苦難は、スイスが世界最古の「中立」国であることもあり、幅広い非難を引き起こした。スイス当局はこの原則を不屈の精神で貫いており、当初は中立性が損なわれることを恐れて国連への加盟を拒否したが、国民投票を経て2022年9月にようやく加盟したほどだ。さらに、スイスは西側諸国の人権格付けで常に高い(最高ではないにしても)評価を得ており、弾圧から逃れる外国人ジャーナリストや人権活動家に安全な避難所を提供してきた。
アブニマさんに対するあからさまに政治的な迫害と冷酷な扱いは、彼がこれまで示してきたパレスチナとのたゆまぬ連帯感から生まれたものであることは疑いようがなく、スイスの中立性とはまったく相容れない振る舞いだ。スイス当局が秘密裏にほとんど知られていない グラディオ作戦に関与してきたことも同様だ。この恐ろしい冷戦共謀の庇護の下、CIAとMI6はファシスト準軍事組織の影の地下軍を組織し、欧州全土で大混乱を引き起こし、左翼の信用を失墜させ、右翼政権を樹立し、反対派への残忍な弾圧を正当化するために偽旗テロ攻撃や強盗、暗殺を実行してきた。
スイスのグラディオ部隊は、「プロジェクト26(P-26)」という名で知られていた。この数字はスイスの州の数を表している。この部隊の存在は、数ヶ月前に開始されたスイス議会の無関係の調査の結果、1990年11月に明らかになった。この調査は、冷戦中、地方の治安機関が、スイスの全人口のほぼ7分の1にあたる90万人の市民に関する詳細な秘密の綴込み文書を保管していたことが明らかになった後に開始された。
この調査では、同時期にP-26が「政治的統制の外」で活動し、特に「国内の転覆」を狙っていたことが判明した。構成員は約400人で、「大半」が「武器や通信、心理戦」の「専門家」だった、という。さらに、この部隊は「スイス全土に主に地下施設の人脈網を維持」し、「軍や政府に相談することなく部隊を動員できる民間人」によって指揮されていた。国会議員らはまた、P-26が「正体不明のNATO加盟国と協力」していたと結論付けた。
その「NATO加盟国」が英国であると確認されるのには、しばらく時間がかかった。その後の調査で、英国当局とP-26との悪意ある関係、およびより広範なグラディオ作戦陰謀における同部隊の役割が明らかになった。同部隊の活動範囲については不明な点が多く、今後も明らかにならないことはほぼ確実だ。しかし、P-26は公に暴露された後、正式に解散されたが、アリ・アブニマさんに対する最近の迫害は、MI6が今日でもスイスの政治や諜報、軍事、治安機関に目に見えない影響力を及ぼし続けていることを強く示唆している。
「不祥事」
P-26の存在の発見は、スイスの「居残り」人脈網に関する専門調査を促し、地元の裁判官ピエール・コルニュ氏が監督した。そして2018年4月になってようやく、100ページに及ぶ報告書の短縮版がフランス語で発表された。それ以降、英訳は出ておらず、 P-26と米国および英国の諜報機関との関係に関する複数ページの専用部分は完全に編集されている。それでも、この報告書は、部隊の工作員が英国(グラディオの 秘密「本部」)で訓練を受け、ベルンにあるロンドン大使館と定期的に秘密裏に連絡を取り続けていたことを認めている。
P-26とCIAおよびMI6の関係に関するコルニュ報告書の編集済み箇所抜粋
奇妙なことに、1991年9月に発表されたコルヌ裁判官による13ページの報告書の要約は、はるかに多くのことを明らかにしていた。そこには、英国諜報機関がP-26と「緊密に協力」し、その本国でその戦闘員に「定期的に」「戦闘や通信、破壊活動」を指導していた、と記されていた。英国顧問(おそらくSAS(英国特殊空挺部隊)戦闘員)は、スイスの秘密軍事施設も訪問していた。この秘密組織と英国当局の間では数多くの正式協定が締結され、最後のものは1987年に締結されていた。これらの協定には、訓練や武器やその他の装備の供給が含まれていた。
<3254-3.jpgimg src="https://isfweb.org/wp-content/uploads/2025/03/3254-3-300x200.jpg" alt="" width="300" height="200" class="alignnone size-medium wp-image-52523" />
ベルンにあったP-26秘密地下司令室
この報告書は、英国諜報機関とP-26の協力関係を「緊密」と表現し、この秘密組織とのつながりを痛烈に批判し、この組織は「政治的または法的正当性」や監視をまったく欠いており、したがって民主主義の観点から「容認できない」と述べている。1990年11月にP-26が暴露されるまで、スイスの選出公務員は、その活動はおろか、この部隊の存在さえもまったく知らなかった、とされている。「(MI6が)P-26についてスイス政府よりも多く知っていたことは憂慮すべきことだ」とこの報告書は評価している。
P-26 はさらに、スイス軍の先鋭諜報部隊が一部資金提供している、外国が後援する民間諜報機関であるP-27から支援を受けていた。後者は、国内の「容疑者」を監視し、綴込み文書を作成する役割を担っていた。容疑者には、「左翼」や「街中で貼り紙をする人々」、エホバの証人の信者、「異常な傾向」を持つ市民、反核デモ参加者などが含まれていた。この情報がどのような目的で使われたのかは不明である。P-26とP-27の活動の詳細や、両組織と英国諜報機関との連携に関する多くの文書は、コルヌ裁判官が調査をおこなっていた間には、どうやら見つからなかったようだ。
別の P-26秘密地下司令室を巡回中のスイス兵
2018年2月、コルヌ裁判による調査中に集められた27の個別の綴込み文書と書類がその後、謎の消失を遂げたことが確認され、事態はさらに混乱した。この宝物が故意に置き忘れられたか、あるいは完全に破棄されたのかは、「中立国」スイスと米国、英国の諜報機関、NATOとの関係に関する恥ずかしい暴露を防ぐためだ、という地元で浮上した疑惑は、今日まで続いている。当時、コルヌ裁判官の報告書を無修正で公開するよう長年求めてきた左派の元スイス議員で歴史家のヨゼフ・ラング氏は次のように主張していた。
「可能性は3つあります。ありそうな順でいうと、書類は細断されたか、隠されたか、紛失したか、です。しかし、たとえこの中で最も無害な選択肢が当てはまったとしても、それは間違いなく大不祥事です」と。
「秘密の人脈網」
未解決であるヘルベルト・アルボス氏殺人事件は、スイス国内外の謎の勢力が、グラディオ作戦への同国の関与に関する特定の事実が決して明かされないようにしようとしていたという結論を十分裏付ける事件だった。
1970年代初頭に「居残り」部隊を指揮した上級諜報員のアルボス氏は、1990年3月に当時のカスパル・フィリガー国防大臣に秘密裏に手紙を書き、「内部者として」P-26に関する「真実のすべて」を明らかにできる、と約束していた。これはちょうど、スイスの国会議員が「破壊活動家」に関する綴込み文書の秘密保管を調査し始めた頃だった。
アルボス氏は証言の機会を与えられなかった。1か月後、彼はベルンのアパートで、自身の軍用銃剣で腹部を何度も刺されて死亡しているところを発見された。当時の報道によると、彼の胸には判読不能な文字がフェルトペンで殴り書きされており、警察は「困惑」したという。彼の自宅には、P-26の上級構成員の写真や「居残り」訓練課程の文書、「陰謀を企む人物の演習計画」、そしてスイスのスパイ仲間の名前と住所が散らばっていた。
1990年11月22日、P-26が正式に解散した翌日、欧州議会はグラディオ作戦に関する決議を可決した。決議は当時の欧州共同体とその全加盟国に対し、「これらの秘密組織または分派の性質や構造、目的、その他すべての側面、関係国の内政への違法な干渉への利用」、「深刻なテロおよび犯罪」への関与、および西側諸国の諜報機関との「共謀」について公式調査をおこなうよう求めていた。決議は次のように警告していた。
「これらの組織は議会の統制を受けていないため、完全に法の外で活動しており、現在も活動を続けており、政府や憲法上の最高位の地位にある人々もこれらの問題について知らされていないことが多い…40年以上にわたり(グラディオ作戦は)あらゆる民主的統制を逃れ、NATOと協力して関係諸国の秘密機関によって運営されてきた…このような秘密の人脈網は加盟諸国の内政に違法に干渉したか、または現在も干渉している可能性がある」と。
しかし、ベルギーやイタリア、スイスでの正式な調査以外では、その後、実質的な調査は何も実現しなかった。今日、私たちはグラディオの欧州の「居残り」軍団が本当に解散したかどうか、そして英国の諜報機関が選挙で選ばれた政府の鼻先で外国の安全保障機関や諜報機関の活動を依然として指揮しているかどうかについて考えなければならない。英国当局がガザの大量虐殺に密接かつ積極的に加担し、国内でパレスチナの連帯に対する攻撃がますます激化していることを考えると、アリ・アブニマさんがMI6にとっての標的であることは明らかだ。
英国生まれでウィーン在住の独立ジャーナリストで、反シオニストとして著名なリチャード・メドハーストさんも、2024年8月にロンドンのヒースロー空港に到着した際に、怪しげな「対テロ」容疑という理由で逮捕された。今年の2月3日、オーストリア警察と諜報員が彼の自宅とスタジオを捜索し、ジャーナリストとしての資料や道具など、多くの所持品を押収した後、何時間も拘束して尋問した。これは偶然ではないと考えたメドハーストさんは、英国当局が襲撃を命じたのか、と警官に尋ねた。警官は「いいえ、英国は我々と連絡をとっていません」と答えた。
偶然にも、オーストリアはMI6がグラディオ作戦に巻き込んだもう一つの表向き「中立」国である。第二次世界大戦後、英国諜報機関は何千人もの元SS隊員とネオナチからなる地元の「居残り」部隊を武装させ、訓練してきた。スイスにあった同組織と同様に、差し障りのない「オーストリア・ハイキング・スポーツ・社会協会」という名称で名付けられたこの部隊は、極秘裏に活動していたため、その存在は「非常に高い地位にある政治家だけ」が知っていた。一方、メドハーストさんは、現在も続く迫害の背後に英国当局がいると確信している。
「オーストリアの告発の一部は英国の告発と非常に似ています…英国と調整していると思います…英国警察は私からグラフェンOSデバイスを押収しましたが、解読できる可能性は非常に低いです…だからこそ英国は、私を襲撃し、見つけたものは何でも奪い、この大規模な捜索をおこなうようオーストリア当局に依頼したのでしょう。逮捕状には、オーストリア当局による容疑を強化するためにロンドンでの私の逮捕についても言及されていましたから。」
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年3月9日)「英国MI6は「中立国」スイスで転覆活動。CIAも顔負けの秘密工作!」
http://tmmethod.blog.fc2.com/
からの転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒How MI6 Infiltrated ‘Neutral’ Switzerland
筆者:キット・クラレンバーグ(Kit Klarenberg)
出典:Internationalist 360° 2025年2月26日
https://libya360.wordpress.com/2025/02/26/how-mi6-infiltrated-neutral-switzerland/