
☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年3月11日):トランプ大統領がロシアとの「提携」を望むのは中国を弱体化させるためだ。
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
米国政府とロシアの協議は、ウクライナよりも中国に関するものだ。ドナルド・トランプは、1970年代にニクソンとキッシンジャーが採用した分割統治戦略の逆で、ロシアと中国の「統一を断つ」ことを望んでいることを認めた。
ドナルド・トランプ政権は米国とロシアの間で協議をおこなっており、ウクライナでの戦争を終わらせたいとトランプ大統領は述べている。
トランプ大統領の国務長官マルコ・ルビオは、米国が「地政学的にロシアと提携する」可能性さえ口にしている。
ここで何が起きているのか? 簡単に言えば、問題はすべて中国をテーマとしている、ということになる。
トランプ大統領は北京を孤立させるためにロシアと中国を分断しようとしている。
米国は中国を自国の世界的な支配に対する最大の脅威とみなしている。これはトランプ政権とジョー・バイデン前政権双方の高官たちによって明確に述べられてきた。
ルビオ国務長官は中国を「わが国がこれまでに直面した最大の脅威」と呼んだ。トランプ政権のジョン・ラトクリフCIA長官は「中国はわが国の国家安全保障上の最大の脅威だ」と主張した。
トランプの計画は中露を分断すること
トランプ大統領は2024年10月31日、右派トークショー司会者のタッカー・カールソンとのインタビューでこの戦略を明らかにした。
トランプ大統領は、米国が中国とロシアを結びつけたのは「恥ずべきこと」であり「愚かなこと」だと述べた。
「私は中露両国の統一を断たなければならないだろうし、それはできると思う。私は両国の統一を断たなければならない」とトランプは述べた。
以下は彼の発言の一部(強調は筆者):
米国は衰退しつつある国家です。非常に深刻な衰退にある国家です。そして、愚かな連中が何をしたか見てください。彼らはロシア、中国、イラン、北朝鮮などをひとつの集団に集結させたのです。これは考えられないことです。
若い頃の私は、歴史の概念や起こりうるすべてのことが大好きでした。そのひとつ―私はウォートン・スクール・オブ・ファイナンスのある教授に師事していましたし、歴史の授業もありました。
彼は、ロシアと中国が統一することは絶対に起きてほしくない、と言っていました。私たちは石油が原因で両国を統一させました。統一させてしまったのです。バイデンは両国を統一させました。それは恥ずべきことであり、愚かしいかぎりです。
私は両国の統一を断つつもりです。それはできます。しなければなりません。
しかし、私が以前読んだことがあり、みなさんもわかっていることです。ロシアと中国が統一して歩調を合わせることはみなさんが決して望まないことです。ロシアは広大な土地を持っており、中国はそれを必要としているため、両国は天敵なのです。
・・・・・
中露は天敵です。そして私たちは彼らが一緒に歩調を合わせることを許してきました。それはとても危険なことです。
もう一つは、統一した行動をとる中露のせいでドルが基準通貨としての地位を失いつつあることです。ドルが基準通貨でなくなることは、戦争に負けるのと同じことです。そんなことは起こさせません。私は断固としてそんなことは起こさせません。
トランプはBRICSを威嚇
注目すべきは、トランプ大統領が中国とロシアの緊密な協力関係を、世界の準備通貨としての米ドルに代わる通貨を作ろうとする国際的な動きである脱ドル化の問題に即座に結び付けたことだ。
中国はロシア最大の貿易相手国であり、両国は二国間貿易から米ドルをほぼ完全に排除した。代わりに、現在では決済の90%以上で自国通貨である人民元とルーブルが使用されている。
ドル離れへの懸念から、トランプは国際貿易や外貨準備でドルを離れるBRICS諸国やその他の国々に対して100%の関税を課すと威嚇している。
「各国がドルから離れていくのは気に入りません。各国がドルから離れていくことは許しません」とトランプは2024年の大統領選挙運動中に宣言した。
トランプ大統領は米国大統領に復帰して以来、BRICSを殺したのは自分の功績だと主張している。「BRICSは死んだ」と、2月13日にホワイトハウスでおこなわれた記者会見で彼は主張した。
現実には、BRICSは拡大を続けており、2025年初頭にはインドネシアやナイジェリアなど人口の多い新しい国が加わっている。南半球が主導するこの組織は現在、世界人口の約55%、世界GDP(購買力平価)の42%を占めている。
それにもかかわらず、トランプ大統領は彼らを威嚇し続けている。「もし彼らがドルでゲームをしたいなら、100%の関税を課すことになるだろう」と彼は警告した。
ニクソン/キッシンジャー戦略とは逆のトランプ戦略
トランプがロシアと中国を分断し、米国の帝国主義的支配を維持しようとしていることは、決して秘密ではない。西側メディアでは公然と議論されており、フォーリン・アフェアーズ誌は「北京とモスクワのパートナーシップを断ち切るのは難しいだろう」と警告している。
ウォールストリートジャーナル紙は、「ワシントンのプーチン大統領支持はモスクワと北京の間に亀裂を生じさせることを目的としている」と明言した。
西側諸国の報道機関は、この戦略をリチャード・ニクソン元米大統領にちなんで「逆ニクソン」と呼んでいる。
ニクソンとトランプには多くの類似点がある。両者とも「ポピュリスト」的レトリックを用いた強硬な右派共和党員だった。また両者ともロシアと中国の間の分裂を利用しようとした。ただしその方向性は正反対。
1972年、リチャード・ニクソン米大統領が中国で毛沢東と会談
ニクソンは激しい反共産主義者であったが、中華人民共和国との関係を正常化するために1972年に北京への歴史的な訪問をおこなった。
ワシントンは、1960年代に起こった中ソ分裂を、中国とソ連間の緊張を悪化させることで自国の帝国主義的権力を前進させる機会とみなした。
これは結局、1980 年代のソビエト連邦の衰退、そして 1991 年の最終的な崩壊の重要な要因となった。
トランプの戦略は「逆キッシンジャー」とも呼ばれている。ニクソン大統領の国家安全保障担当大統領補佐官ヘンリー・キッシンジャーが「三角外交」として知られるこの戦術の立案者だったからだ。
キッシンジャーは1971年に中国とソ連のさらなる分裂を図るため北京を秘密裏に訪問した。
ヘンリー・キッシンジャーが中国で毛沢東と会談
数十年後、キッシンジャーは、中国を弱体化させるために米国はこの「三角」戦略に戻るべきだと考えた。
実際、デイリービースト紙が2018年に報じたところによると、キッシンジャーはトランプ政権初期に、中国を孤立させるためにロシアとの関係改善に努めるべきだと助言していたという。
皮肉にも、民主党が推し進める「ロシアゲート陰謀論」のため、トランプは任期中にキッシンジャー流の戦略を追求することができなかった。民主党による根拠のない無意味な主張、すなわちトランプは「プーチンの傀儡」であるという主張は、中国を膝から撃ち抜くことを狙った、トランプのより巧妙な新たなる冷戦戦略から目をそらさせることになった。
しかし、2期目ではトランプはこの戦略を全面的に採用した。
マルコ・ルビオは米国が「地政学的にロシアと提携すること」を望んでいる
トランプは、1期目も2期目も、側近を新保守主義者(ネオコン)やタカ派で固めている。
第一期トランプ政権では、国家安全保障顧問のジョン・ボルトン(ネオコン派)と、マイク・ポンペオ(CIA長官を経て国務長官に就任)が、トランプ外交政策を監督していた。
第二期トランプ政権では、ネオコンのマルコ・ルビオが国務長官、マイク・ワルツが国家安全保障顧問、自らを「十字軍の戦士」と称するピート・ヘグセスが国防長官として、トランプ外交政策を監督する。
トランプ大統領のネオコン外交政策チーム:マルコ・ルビオ(左)、マイク・ウォルツ(中央)、ピート・ヘグゼス(右)
これらの人物は皆、北京に対して攻撃的な政策を推進してきた極端な対中国強硬派だ。
彼らはまた、ロシアを取り込もうとするトランプの戦略にも同意している。
これが、2月にトランプがルビオをサウジアラビアに派遣し、ロシアの同僚たちとの協議に参加させた理由であり、その際に「米国は地政学的にロシアと提携できる」と提案した理由である。
ルビオ米国務長官は次のように述べている:
この紛争が望ましい形で終結した場合、目の前にある信じられないほどの機会、すなわち、地政学的な観点から、共通の関心事項についてロシアと提携する機会、また、率直に言って経済的な観点から、世界にとって良い結果をもたらし、また、この2つの重要な国間の長期的な関係を改善するであろう機会を特定することに(私たちは)着手し始めています。
実際、2024年の上院公聴会でルビオは、米国はウクライナ戦争の終結に協力すべきだと主張したが、それは何十万人もの命が失われたからではなく、むしろ中国を利しているからだ、と訴えた。
「中国はウクライナに大きな利益を見出している」とルビオは語った。「なぜなら、私たちがウクライナでより多くの時間と金を費やすほど、中国に振り向けられる私たちの時間、資金、そして関心は減ると考えているからです」。
ルビオの主張は本質的に、米国帝国はウクライナにおけるロシアに対する代理戦争を終わらせ、代わりに中国との戦争の準備に集中すべきだというものだ。
西側の極右は中国に対抗してロシアとの同盟を望んでいる
ルビオのロシアとの「提携」提案は一部の観察者を驚かせたが、この戦略は共和党内の極右「MAGA(Make America Great Again)」運動のメンバーによって何年も前から提案されてきた。
多くのMAGA共和党員は人種差別的な白人至上主義の思想に影響を受けており、中国を米国の帝国主義的支配に対する脅威としてだけでなく、資本主義と白人の「ユダヤ・キリスト教の西洋文明」に対するアジア的、無神論的、共産主義的脅威としても見ている。
一方、米国や欧州の多くの保守派は、ロシアが資本主義国であり、白人であり、キリスト教徒が多数を占めていることから、ロシアを潜在的な同盟国と見ている。
欧州の極右政治家も同様の主張をしている。フランスの極右指導者マリーヌ・ル・ペンは、中国とロシアの連携を「われわれにとって21世紀最大の危険」と呼んだ。
彼女は、西洋はロシアと「共通の文明的・戦略的利益」を共有しており、社会主義中国との緊密な関係を断ち切るべきだと主張した。
ル・ペン次のように語っている:
想像してみてください・・・もし世界第一の原材料生産国であるロシアが世界第一の工場国である中国と同盟を組み、世界初の軍事大国になるかもしれないとしたら。それは潜在的に大きな危険になると私は信じています。
・・・・・・
(ウクライナでの)戦争が終わり、平和条約が締結されたら、外交的にこの提携を避けるよう努める必要があります。中露提携は私たちにとって21世紀最大の危険となる恐れがあります。
フォックス・ニュースや他の米国の保守系メディアは、10年間にわたって同じメッセージを伝えてきた。
これは、かつて米国で最も人気のある政治番組であるフォックス・ニュースで番組の司会を務めた、極右トークショーの司会者でトランプ大統領の側近であるタッカー・カールソンのお気に入りのフレーズの一つだ。
カールソンは「この国にとって最大の脅威はウラジーミル・プーチンではない。それはばかげている。最大の脅威は、明らかに中国だ」と繰り返し主張した。
カールソンは複数の番組で、「ロシアはアメリカの最大の敵ではない。もちろん、正気な人間ならそうは思わない。われわれの最大の敵は中国であり、アメリカはできる限りロシアとの関係を維持し、中国に対抗すべきだ」と主張した。
カールソンは、中国とロシアの提携は「アメリカの世界覇権」を終わらせると訴えた。
自身を「ポピュリスト」と表現しているが、カールソンは以前CIAに応募したことがある。彼の目標は、米国帝国の支配を維持することだ。
自身のフォックス・ニュース番組でカールソンは次のように語っている:
もしロシアが中国と手を組んだら、アメリカの世界覇権、その力は即座に終わるだろう。ロシアは世界最大の陸地と天然ガスの埋蔵量、そして世界最大の人口と世界最大の経済大国(中国)と手を組むことになるからだ。
つまり、中露枢軸は、米国よりも強力であるだけでなく、はるかに強力になるということだ。世界の経済、貿易ルート、原材料の多くを支配できる規模となる。軍事力を行使することも可能であり、その見せかけの動きはさておくとしても、実際にはそれを阻止する力はわれわれにはない。
もし中露が手を組んだら、まったく新しい世界が生まれ、アメリカは大きく衰退するだろう。大半のアメリカ人は、それは良くないことだと考えている。
実際、彼がまだフォックス・ニュースで自分の番組を持っていたとき、カールソンはルビオを定期的に招き、中国に対する恐怖心を煽っていた。
以下は、現在国務長官を務めているが当時フロリダ州院議員だったルビオへのインタビュー抜粋だ:
マルコ・ルビオ:彼らはまた、「中国製造2025」と呼ばれるものを通じて私たちの技術基盤を弱体化させています。彼らは自動車、旅客機、量子コンピューティング、人工知能の分野で、アメリカだけでなく地球上のすべての国、そして西側諸国に取って代わろうとしています。
彼らは産業全体に手を伸ばし、ゆっくりではあるが確実にこの計画を実行しているのです。
タッカー・カールソン:そうなるとこれは明らかに、わが国の経済だけでなく、世界におけるわが国の優位性、わが国の力、そしてわが国の価値観に対する脅威になります。
ルビオは中国を米国帝国がこれまでに直面した「唯一最大の挑戦」と呼んでいる
ルビオは長年にわたり、中国に対して極めて攻撃的な米国の政策を推進してきた。
2024年の上院公聴会で、ルビオは中国が「アメリカと同盟国によって書かれた」「世界のルール」を変えようとしていると訴えた:
中国人は、私たちの衰退は避けられないと考えており、彼らの台頭もまた避けられないと考えています。私が言ったように、彼らはアメリカとその同盟国が作ったと信じている世界のルールを好まないため、あらゆる機会をとらえて、そのルールに挑戦しようとしています。
2022年におこなわれた別の上院公聴会で、中国が米国に取って代わり、地球上で最も強力な国になる可能性があるとルビオは警告した:
私たちは、密室での中国の計画や意図についてよく話します。しかし、実際のところ、彼らの最終的な目的や彼らがやろうとしていることは、それほど大きな秘密ではありません。
中国は米国に取って代わり、世界で最も支配的な経済、産業、技術、軍事、地政学的な大国になることを目指しています。それが彼らの目標です。
2022年の公聴会で、ルビオは中国を「米国がこれまでに直面した最大の課題」と呼び、中華人民共和国はソ連よりもはるかに大きな脅威であると主張した:
この時点で、諜報機関、両党の指導者は、これがこの国がこれまでに直面した最大の課題であるとかなり明確に表明していると思います。
今日の中国のように、これほど包括的な課題を突きつける、ほぼ同等の敵対国とわが国が戦ったことは一度もありません。
ソ連は軍事的にも地政学的なライバルでした。しかし、工業、技術、商業上のライバルだったことは一度もありません。中国はそれらすべてにおいてライバルであり、それ以上の存在になっています。
CIAは中国が「21世紀に我々が直面する最も重要な地政学的脅威」であると述べている
しかしながら、中国を米国の世界的支配に対する主な脅威とみなしているのは、マルコ・ルビオのような新保守主義共和党員だけではない。
この見解はワシントンでは超党派で共有されている。
2021年、CIAは「中国ミッションセンター」を開設した。これは、クーデター計画で悪名高い米国の諜報機関で、特定の国に特化した唯一のミッションセンターだ。
その年、CIAは公式ウェブサイトで、中国が米国にとって最大の「脅威」であると考えていると発表した。
CIAのウィリアム・バーンズ長官は「新しいミッションセンターが、CIA全体としての対応をもたらし、CIAがすでにこの主要なライバル(中国)に対しておこなっている並外れた仕事を統合する」と説明した、とこの悪名高い米国の諜報機関(CIA)は記した。CIAは、数えきれないほどの国の内政に干渉し、外国の国家元首を暗殺してきている。
バーンズは「21世紀にわれわれが直面する最も重要な地政学的脅威は、ますます敵対的になる中国政府だ」と恐怖を煽った。
トランプ大統領がCIA長官に指名したジョン・ラトクリフは、バーンズのCIAでの働きを称賛し、2025年1月の上院での指名承認公聴会でも同様の意見を述べた。
以下はラトクリフの発言(強調は筆者):
もっと多くのことをおこなう必要があります。なぜなら、私たちの敵対国、特にこれからお話しする敵対国は、今日の新興技術の競争に勝った国が明日の世界を支配することを理解しているからです。
そこで私は、CIA が中国とその支配政党である中国共産党がもたらす脅威に引き続き重点を置き、さらにその度合いを強める必要があると考えます。
DNI (director of national intelligence国家情報長官) として、私は中国に投入される情報機関の資源を劇的に増やしました/。
私は、誰よりも多くの情報に接してきた当局者としての独自の視点から、中国がわが国の国家安全保障上の最大の脅威であると評価していることをアメリカ国民に公然と警告しました。
トランプ大統領はこの問題に関して素晴らしいリーダーであり、近年超党派の合意が形成されてきたことは心強いことです。
CIAの中国ミッションセンターが最近設立されたことは、すぐれた取り組みの一例で今後も継続する必要があります。
米国務省、中国は米国の世界帝国主義的支配に対する最大の「脅威」であると警告
バイデン政権でもトランプ政権でも、国務省は中国が米国の帝国主義的支配に挑戦するのではないかと懸念し、同様の警告を発していた。
2022年5月の演説で、バイデン政権のアントニー・ブリンケン国務長官は次のように警告した:
プーチン大統領の(ウクライナ)戦争が続く中でも、私たちは国際秩序に対する最も深刻で長期的な課題、つまり中華人民共和国がもたらす課題に引き続き焦点を当てていきます。
中国は、国際秩序を再構築する意図と、それを実行するための経済力、外交力、軍事力、技術力などを兼ね備えた唯一の国です。
このメッセージは第一期トランプ政権の間も実質的には同じだった。
トランプ政権下のCIA長官から国務長官に転じたマイク・ポンペオは、2020年7月にカリフォルニア州のリチャード・ニクソン大統領図書館・博物館で同様の演説をおこなった。
非常に攻撃的な冷戦風のレトリックを使って、ポンペオは本質的に中国政府と中国共産党の打倒を呼びかけた。同氏は次のように述べた:
私たち自由を愛する世界の国々は、ニクソン大統領が望んだように、中国を変化させなければなりません。中国の行動が米国民とその繁栄を脅かすので、中国がより創造的で積極的な方法で変化するよう私たちは誘導しなければならないのです。
私たちはまず、自国民やパートナーが中国共産党をどう認識しているかを変えることから始めなければなりません。真実を語らなければなりません。この中国という国を、他の国々と同じように普通の国として扱うわけにはいかないのです。
・・・・・・
そして、いま行動を起こさなければ、最終的には中国共産党が私たちの自由を侵食し、私たちの社会が懸命に築き上げてきたルールに基づく秩序を覆すことになるでしょう。いま私たちが屈服すれば、私たちの子供たちの子供たちが中国共産党のなすがままになるかもしれません。中国共産党の行動は、今日の自由世界における最大の課題なのです。
習近平総書記は、私たちがそれを許さない限り、中国内外で永遠に専制を続けることはありません。
このタカ派的な見解の多くはNATOが共有している。
NATOのイエンス・ストルテンベルグ事務総長は、トランプ第一期政権の極端な反中国政策を称賛した。
「トランプ大統領政権下で、2017年、対中政策が転換した。それ以来、NATOは長い時間をかけ、中国がもたらす課題を欧州同盟諸国に十分に理解させ、それに対応できるよう支援することに大きく貢献してきた」とストルテンベルグは2024年にワシントンで米国の右派シンクタンク、ヘリテージ財団で述べた。
トランプ政権、米国の植民地主義政策を正当化しようと中国を引き合いに出す
こういったことから、ドナルド・トランプが中国をお気に入りのブギーマン(子供だましのお化け)とし、自身の植民地主義政策を正当化するために中国を絶えず持ち出そうとしている理由がわかる。
トランプ大統領は2025年1月の就任演説で、アメリカがパナマ運河を接収するという露骨な植民地主義行為をおこなうと宣言した。
「中国はパナマ運河を運営している。われわれはそれを中国に渡したのではなく、パナマに渡したのだ。そしてわれわれはそれを取り戻すのだ」とトランプは主張した。
中国がパナマ運河を運営しているというのは正しくない。これは嘘八百だ。
それにもかかわらず、マルコ・ルビオ国務長官も同じレトリックを使用している。
1月、ルビオは米国務長官として初の公式インタビューで、保守系トークショー司会者のメーガン・ケリーと対談した。
この1時間に及ぶ議論のなかでルビオは「中国(China)」あるいは「中国の(Chinese)」という言葉を65回使った。
「中国は、私たちを踏み台にして世界で最も強力な国になろうとしています。これはアメリカの国益にはなりません。これに対処するつもりです」と彼は語った。
トランプ政権がなぜパナマ運河を管理したいのかと問われると、ルビオはトランプの言葉を繰り返し、中国がパナマ運河を管理しているから、と誤った主張をした。
トランプとマルコ・ルビオの考えでは、米帝国は影響力圏を持っており、彼らは西半球、特にラテンアメリカに対する米国帝国支配を再び確立したいと考えている。
だからこそ、彼らはグリーンランド、パナマ、カナダ、メキシコ、コロンビアなどを威嚇しているのだ。トランプの同盟者たちが植民地主義のモンロー主義を絶えず持ち出すのも、このためだ。
米副大統領JD・ヴァンス、中国を標的に
欧州に関して言えば、トランプ政権の見解は基本的に、ウクライナは米国の帝国主義的勢力圏にはなく、欧州は自前でロシアに対処しなければならないというものだ。
これは、2025年2月にミュンヘン安全保障会議でおこなわれた演説で、米国のJ・D・ヴァンス副大統領が伝えたメッセージだ。
ヴァンスは欧州に対し、中国との関係を縮小するよう圧力をかけた。同氏は北京を、いわゆる「情報インフラに侵入し、穴をあけ、奪取しようとする権威主義的な支配者」と描写した。
トランプ政権は、欧州で資源を使わず、アメリカ帝国の注意を中国に集中させたいと考えている。
トランプと同様に、ヴァンスも「ポピュリスト」的レトリックを利用しているが、両者とも米国の帝国主義的権力の拡大を目指しており、積極的な介入政策を推進するのに前向きだ。
ヴァンスの世界観を理解するために、CNNは第一期トランプ政権の国家安全保障会議首席補佐官を務めたアレクサンダー・グレイにインタビューした。
グレイは新保守主義者(ネオコン)の共和党員であり、トランプを擁護し続けている。彼は、トランプがグリーンランドとパナマ運河を植民地化しようとしていることを支持している。
以下はCNNの報道(強調は筆者):
グレイは、ヴァンスの外交政策の世界観はイラクでの軍務経験と、ヴァンスが「米国の海外介入の失敗」と捉えるものから来ていると述べた。しかし、ヴァンスが中国に対しては積極的なアプローチを支持しており、米国が完全に世界から撤退することを望んでいるわけではない、との指摘もグレイはおこなった。
「その世界観は、限られた資源で難しい選択を行い、中国に関する実存的脅威に対して資源を投入するというものです」とグレイは述べた。「ヴァンスは米国が世界的なリーダーシップを放棄することには反対であり、米国が世界の舞台で強力な国であることをやめることにも反対しています」。
ブレジンスキーは中国、ロシア、イランによる「反覇権連合」について警告した
ワシントンの中露同盟に対する恐怖は数十年前に遡る。
熱烈な反共産主義の冷戦主義者で、ジミー・カーター大統領の国家安全保障顧問を務めた影響力のある米国の帝国主義戦略家ズビグニュー・ブレジンスキーは、1997年に『グランド・チェス盤:アメリカの優位性と戦略地政学上の必然性』という本を出版した。
ブレジンスキーはこの著作の中で、アメリカ帝国が世界一極支配を維持するために用いる戦術について論じた。また、米国の覇権に対する潜在的な挑戦についても警告した。
ブレジンスキーは、米帝国にとって「最も危険なシナリオ」は「中国、ロシア、そしておそらくイランによる大連合、つまりイデオロギーではなく相互補完的な不満によって結束した『反覇権的』連合になるだろう」と書いている。
以下はブレジンスキーの本からの該当箇所(強調は筆者):
最後に、今後の政治的連携が関わる可能性のあるいくつかの事態についても簡単に触れておくべきであろう。ただし、この点については、関連する章でさらに詳しく議論する。かつては、国際情勢は主として地域覇権をめぐる個々の国家間の競争によって左右されていた。今後は、米国がユーラシアから米国を排除しようとする地域連合にどう対処するかを決定しなければならず、それによって米国の世界的な大国としての地位が脅かされる可能性がある。しかし、米国の優位に挑戦するような地域連合が現れるか否かは、実際には、米国がここで特定した主要なジレンマにどれだけ効果的に対応できるかによって、大きく左右されることになる。
最も危険なシナリオは、中国、ロシア、そして恐らくイランによる大連合、すなわちイデオロギーではなく相互補完的な不満によって結束する「反覇権主義」連合となる可能性がある。それは、かつて中ソが対立した際の規模と範囲を彷彿とさせるものとなるだろうが、今回は中国が主導し、ロシアが従属する可能性が高い。しかし、この可能性を回避するには、ユーラシアの西側、東側、南側の境界で、米国が地政学的な手腕を発揮することが必要となる。
過去数十年間にまさにこれが起こった。戦争、制裁、政権転覆作戦など、米国帝国の攻撃的な政策は北京、モスクワ、テヘランを結びつけた。
中国、ロシア、イランは、毎年成長を続ける南半球主導の組織であるBRICSの加盟国だ。
BRICSは現在、世界人口の約55%、購買力平価で測った世界GDPの42%を占めている。
これが、トランプ大統領が繰り返しBRICSを破壊すると威嚇し、BRICS加盟国に100%の関税を課すと誓った理由である。
しかし、BRICSだけではない。中国やロシア、そしてイランも、ユーラシアの安全保障と安定の維持を目指す上海協力機構に加盟している。
中国:人口はロシアの10倍、経済規模は5.5倍、製造業生産高は17倍
中国は1979年以来戦争をしておらず、厳格な非介入主義外交政策をとっている。それにもかかわらず、米国の帝国主義戦略家たちは北京を恐れている。なぜなら、北京はロシアよりもはるかに強力であり、全盛期の旧ソ連よりもさらに強力だからである。
まず、中国の人口は14億人で、これはロシアの人口約1億4000万人のおよそ10倍だ。
中国はまた、世界最大の経済大国でもある。IMFのデータによると、中国のGDPを購買力平価で測ると、2016年に米国を上回った。
2024年末時点で、中国は世界経済の19%強を占め、米国は15%弱を占める。
ロシアは経済大国だが、世界のGDPの約3.5%を占めるに過ぎない。つまり、中国の経済はロシアの約5.5倍の大きさだ。
ロシアの経済規模は、人口の多い非常に重要な国であるインドネシアやブラジルの経済と同程度。しかし、中国は全く異なるレベルにある。
ロシアは膨大な天然資源を保有しており、石油、天然ガス、重要な鉱物、穀物、肥料の世界有数の生産国だ。また、高度な兵器技術を有する大軍事大国でもある。
しかし、製造業の生産高に関してはまったく比較にならない。中国は圧倒的に世界有数の製造大国だ。
国連のデータによると、2022年の世界の製造業付加価値の31%を中国が占めた。
米国は16%であり、ロシアに至ってはわずか1.8%にすぎない。
ロシアの製造業生産高はメキシコより若干低く、イタリアやフランスよりわずかに高かった。
技術分野では、中国は世界の最先端だ。
オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は、オーストラリア軍の支援を受け、オーストラリア政府、米国国務省、英国外務省、欧州議会から資金提供を受けている強硬派の反中国シンクタンクであり、中国の急速な技術進歩について頻繁に恐怖をあおっている。
ASPIは2024年の報告書で、「中国は世界の研究におけるリードを押し進めている」と述べ、64の重要技術のうち57の技術で世界をリードしており、全体の89%を占めている。
中国は、わずか3つの技術分野でトップだった20年前から、飛躍的な進歩を遂げた。
ASPIの報告書は、中国の学者が世界のどの国よりも多くの論文を研究雑誌に発表し、中国の技術者や科学者が他のどの国よりもはるかに多くの特許を申請していると指摘した。
中国は、シリコンバレーの米国大手テクノロジー企業の独占に挑戦できる大規模なテクノロジー企業を有する唯一の国である。
米政府がファーウェイやティックトック (TikTok) (中国のバイトダンス社傘下)、AI企業ディープシーク社 (DeepSeek) などの中国のテクノロジー企業を妨害し、禁止しようとしているのはそのためだ。
最も根本的には、米国の高官たちが中国を脅威と見なしているのは、中国は米国主導の資本主義に体系的な挑戦を突きつけているからだ。
中国は共産党主導の社会主義体制をとっており、ここ数十年で大きな進歩を遂げ、約8億人を貧困から救い出した。世界銀行によると、これは世界の極度の貧困削減のほぼ4分の3に相当する。
IMFのデータによると、中国のGDP(購買力平価)は1984年から2024年にかけて75倍増加した。同時期に米国の増加は7倍だった。
一方、中国が安定した成長を続けているのに対し、米国は深刻な衰退に直面しており、極度の格差、深刻なホームレス、貧困の急増、依存症の蔓延、債務の増大、経済的・政治的不安定の増大などを抱えていることは、世界にとって明らかである。
だからこそトランプは「わが国は深刻な衰退に陥っている」と訴えたのだ。
トランプは、ロシアと中国を分断しようとすることで、北京を弱体化させ、米国の衰退を逆転させ、米国帝国を救うことができると期待している。
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私たちが今や多極化する世界に生きていることは広く認められているが、「多極化」の定義は明確ではない。ドナルド・トランプやマルコ・ルビオは、それは帝国的な勢力圏を伴う大国間の競争の復活を意味すると考えているが、中国や南半球諸国の多くは「規模に関係なく、すべての国が平等であるべき」と主張している。ベン・ノートンは、地政学上の分裂について説明している。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年3月11日)「トランプ大統領がロシアとの「提携」を望むのは中国を弱体化させるためだ。」
http://tmmethod.blog.fc2.com/
からの転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒Trump Wants US to ‘Partner’ with Russia to Weaken China
筆者:ベン・ノートン(Ben Norton)
出典:Internationalist 360° 2025年2月24日
https://libya360.wordpress.com/2025/02/24/trump-wants-us-to-partner-with-russia-to-weaken-china/