【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.03.12XML: 情報機関による脅しに関係したエプスタイン文書をどこまで公開できるか

櫻井春彦

 ​パメラ・ジョ・ボンディ米司法長官は2月27日、ジェフリー・エプスタインに関連する約200ページの文書を公開した​が、その内容はすでに公開されているものだった。批判にさらされた長官は公開されなかった数千ページの文書を28日までに提出することをFBI長官のカシュ・パテルに指示、同時にFBIニューヨーク支局長のジェームズ・デネヒーは辞任に追い込まれた。

 エプスタインは250人以上の未成年女性に対する性犯罪で2019年7月6日に逮捕されたのだが、翌月の10日にニューヨーク市のメトロポリタン矯正センターで死亡している。女性は世界の有力者へ提供され、部屋での行為は秘密裏に撮影されていたのだが、彼はイスラエル軍の情報機関アマンのために働いていたことから、そうした映像はイスラエルの情報機関が脅しのために利用したと見られている。

 2008年6月にもエプスタインは同様の容疑で起訴され、懲役18カ月の判決を受けているが、このときは刑務所に収監されていない。検察の姿勢が異様に甘いと批判されたが、その時に地方検事として事件を担当したのは2017年4月から19年7月まで労働長官を務めたアレキサンダー・アコスタ。エプスタインの事件が発覚し、辞任を余儀なくされたということだ。​アコスタによると、上司からエプスタインは「情報機関に所属している」ので放っておけと言われた​という。

 イスラエル軍の情報機関ERD(対外関係局)に所属、イツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めたこともあるアリ・ベンメナシェによると、エプスタインだけでなく彼と内縁関係にあったギスレイン・マクスウェル、そして彼女の父親であるミラー・グループのロバート・マクスウェルはいずれもアマンに所属していた。アリ・ベンメナシェはエプスタインもギスレインも1980年代の後半からイスラエル軍の情報機関に所属してたとしている。(Zev Shalev, “Blackmailing America,” Narativ, Septemner 26, 2019)

 ところで、エプスタインは私立大学のクーパー・ユニオンとニューヨーク大学をともに中退しているのだが、有名人の子弟が通う予科学校のドルトン・スクールに教師として1974年に雇われている。雇ったのは校長だったドナルド・バー、つまり第1期のトランプ政権で司法長官を務めたウィリアム・バーの父親だ。ちなみにウィリアムはCIA出身、ドナルドはCIAの前身である戦時情報機関OSSに所属していた。

 その学校に通っていた生徒の父親のひとりがベア・スターンズのCEOだったアラン・グリーンバーグ。その縁でエプスタインは1976年に同社へ入り、そこで顧客だった酒造メーカー、シーグラムのエドガー・ブロンフマンと知り合った。エドガー・ブロンフマンの父親、サミュエル・ブロンフマンは密造酒で財をなした人物として知られている。サミュエルの同業者で親しくしていたひとりがルイス・ローゼンスティール。その妻だったスーザン・カウフマンによると、ルイスはユダヤ系マフィアの大物、メイヤー・ランスキーと親しく、CIAとも緊密な関係にあった。ローゼンスティールは1922年、フランスのリビエラに滞在していた際、ウィンストン・チャーチルから、アメリカで酒を合法的に販売できるようになるので準備をするようにとアドバイスされたという。

 このローゼンスティールと親子のような関係だったと言われているロイ・コーンは大学を出て間もない頃、性的スキャンダルによる恐喝を生業としている暗黒街の一味の下で働いていたとも言われているが、その後、弁護士として「赤狩り」のジョセフ・マッカーシーの法律顧問になった。その一方、彼はニューヨークの犯罪組織、ガンビーノ・ファミリーのメンバー何人かの法律顧問にもなっている。そのひとりがジョン・ゴッチ。カトリックのフランシス・スペルマン枢機卿とも親しくしていたが、この「聖職者」はCIAと教皇庁を結ぶ重要人物だった。死の直前にはドナルド・トランプの顧問も務めている。

 ところで、数千ページにおよぶ未公開文書はボンディへ提出されたのだが、「国家安全保障上の理由」から公開する前に編集、あるいは削除するということになっている。エプスタインの事件が単なる性犯罪ではないということだろう。

 エプスタインはドナルド・トランプ大統領とも親しかったが、それ以外にもハーバード大学の法科大学院で教授を務めていたシオニストのアラン・ダーショウィッツ、イギリス王室のアンドリュー王子、ビル・リチャードソン元ニューメキシコ州知事、ジョージ・ミッチェル元上院議員、ビル・クリントン、イスラエルのエフード・バラク元首相などの名前が出てきているが、「国家安全保障」に関わるような人物がターゲットになっていたのだろう。バラクはロバート・マクスウェルの葬儀でシモン・ペレス元イスラエル首相からエプスタインを紹介されたと伝えられている。

 アマンを含むイスラエルの情報機関も情報の公開には抵抗するはずだが、トランプもイスラエルとは緊密な関係にあり、トランプ政権の上級メンバー、例えばトゥルシ・ガバード国家情報長官やロバート・F・ケネディ・ジュニアもイスラエル支持を表明、またJ・D・バンス副大統領やボンディ司法長官も親イスラエル派として知られている。

**********************************************

【​Sakurai’s Substack​】

**********************************************
【​Sakurai’s Substack​】
※なお、本稿は櫻井ジャーナルhttps://plaza.rakuten.co.jp/condor33/
「情報機関による脅しに関係したエプスタイン文書をどこまで公開できるか」(2025.03.12XML)
からの転載であることをお断りします。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202503120000/

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

★ISF(独立言論フォーラム)「市民記者」募集のお知らせ:来たれ!真実探究&戦争廃絶の志のある仲間たち

※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202410130000/

ISF会員登録のご案内

「独立言論フォーラム(ISF)ご支援のお願い」

櫻井春彦 櫻井春彦

櫻井ジャーナル

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

Recommend Movie

columnist

執筆者

一覧へ