
☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年3月15日):勇気を持て、ルーマニア!
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
ルーマニアの悲劇は続いており、民主主義を装った欧州連合とその権威主義的技術家政治の政治的実験室としての役割を任されている。
ジョルジェスクを通すことはできない
大統領に選出され、その後解任されたジョルジェスクは、たった一日の間に、自国の大統領選挙から、最初は再び選出され、その後再び排除された。ルーマニア全土で、このスキャンダラスな決定に対する抗議活動が勃発しており、これは欧州連合の道徳的崩壊を裏付けるものである。
このドラマは3幕に分かれて展開したが、簡単に振り返ってみたい。数ヶ月前、ジョルジェスクは選挙に勝利したが、その勝利は、決して明らかにされていないロシアの干渉疑惑を口実に即座に無効とされた。彼はモスクワの工作員でヨーロッパの民主主義への脅威、西側諸国の価値観の敵、より正確には「リベラル大西洋主義者の暗殺者」とされた。第2幕は数日前に起こった。ジョルジェスクは、ヨーロッパの安定にとって危険な団体を組織した容疑で逮捕された。そして今、この茶番劇の締めくくりとして、彼は選挙から完全に排除された。この話から導き出せる教訓は、少なくとも現実から目を背けたり、現実を無視したくない人々にとっては明らかだ。
欧州連合は民主主義ではなく、米国の制度を手本にした抑圧的な技術家政治であり、しかも可能であればさらに権威主義的なものになることも目指している。
新たなオバートンの窓(*)が残酷にも開かれた。EUの抑圧的な秩序では、選挙に勝っても米国当局とEU当局にとって都合の悪い人は投票が無効にされ、迫害され、最終的には政治競争から排除されることになってしまった。
*多くの人に尊重すべきものとして受け入れられる政治的な考え方の範囲のこと
スティーブン・カルガノビッチが先見の明をもって書いていたように、ルーマニア大統領選挙の無効化は、西側支配者層が画策した政治的操作の明らかな事例だった。第1次選挙で勝利し、第2次選挙でも勝利が確実だったジョルジェスクは、ルーマニア最高裁判所がロシアの干渉があったとして選挙過程全体を無効にしたため、勝利を奪われた。当初、最高裁判所はロシアの干渉があったという告発を却下したが、その後突然考えを変え、日時を明示せずに再選挙を命じた。
この決定は、「正しい」候補者が勝利することを確実にするために外部から押し付けられたものである。一方、12月に退任するはずだったクラウス・ヨハニス大統領は依然として権力の座にあるが、西側民主主義の擁護者たちは誰も気にしていないようだ。
何千人ものルーマニア人がこの不当な行為に抗議するために街頭に出たが、彼らの声が聞き入れられるかどうかは疑問だ。一方、ジョルジェスクは名誉を傷つけられ、検閲された。私は米国のポッドキャスター、ショーン・ライアンと彼のインタビューの内容を興味深く追ったが、その中で彼はロシアとのつながりを否定し、単に自身は「ルーマニア支持者」だ、と述べた。
カリン・ジョルジェスクがやり直し大統領選挙の第1回投票に出馬することが認められた場合、同氏は得票率38%で他の候補者全員に対して明らかに有利となると思われる。
予測される得票率は次のとおりだ。
ジョルジェスク(*):38%(-7)
ポンタ(*-S&D):16%
アントネスク (PSD/PNL/UDMR-S&D|PPE): 14% (+4)
ダン(*-RE): 14%(+4)
シミオン(AUR-ECR):10%(+4)
ラスコーニ(USR-RE):8%(-2)
(訳注:人名の後のアルファベットはルーマニアの政党名の略称)
いずれにせよ、ジョルジェスクは再び勝利するだろう。そして西側諸国の指導者層にはそれが許されない。
国家抗議の国際的な価値
これが彼の攻撃された本当の理由だ。ジョルジェスクはオルバンやフィツォと同様に、グローバリスト体制に反対する愛国者だからだ。
NATOについて語った際、彼は防衛目的で発足したこの同盟が今日ではルーマニアにとって無関係な地政学的利益にのみ役立っていることを強調した。また、ウクライナ紛争に関する不都合な真実を語った。「これはわが国の戦争ではない」と。
私にとって、この言説は、西側諸国がルーマニアの政治を操作して支配を維持し、独立した指導者の出現を阻止する方法を示している、ととれる。
この点について不明瞭な点はないだろう。ジョルジェスク自身も怒りの反応を示し、ブリュッセルのユーロ官僚と厳格な技術家政治による新体制を独裁政権である、として公然と非難していた。欧州連合は真の民主主義組織ではなかった。当初からヨーロッパ大陸全体に対する金権政治による支配の手段であり、1989年以降は国家や労働者、中流階級、大衆を犠牲にして支配者層の権力を強化するために再編されてきた。今やその仮面は確実に剥がれ落ち、EUは新自由主義的で好戦的な金融金権政治である、という真の姿を露呈しつつある。
ジョルジェスクに何が起こるかは誰にも分からない。最悪の事態を恐れる人もいる。なぜなら、西側諸国は既に、自らの目的を達成するためには最低で最も残忍な行為も辞さないということを示しているからだ。文明全体が崩壊する中で、暴力は最後に使える卑劣な策略である。
ルーマニアの野党は、憲法裁判所が大統領選挙におけるカリン・ジョルジェスクの立候補を却下する決定を下した後、ブカレストでデモを行なっている。ルーマニア国民は文字どおり2か月間、途切れることなく抗議活動を続けている。ヨーロッパでは、このような勇気と粘り強さはめったに見られない。
選出され罷免された大統領の支持者たちは選挙管理委員会の建物の前で抗議し、フェンスを破壊し、瓶やさまざまな物を投げつけ、警察と衝突した。
いくつかの野党は抗議活動が続くことを警告し、支持者に挑発に屈しないよう呼びかけている。しかし、ここで唯一有効な反対運動は、西側の策略に反対するデモ参加者の反対運動である。これらの人々の勇気は、ヨーロッパ全体にとって祝福すべきことである。一国家の問題から生まれたこの抗議活動の価値は、地理的なヨーロッパの境界をも超える国際的な価値を帯びつつある。この潮流には計り知れない価値がある。
抑圧者である西側諸国は、各国の市民たちを刺激し、市民たちは自らの利益のため、自らの自由のために尽力しようという勇気を奮い立たせている。
ルーマニアの人々よ、勇気を出してください!
皆さんの闘いが、ヨーロッパの他の人々が自由を取り戻すきっかけとなりますように。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年3月15日)「勇気を持て、ルーマニア!」
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また英文原稿はこちらです⇒Be brave, Romania!
筆者:ロレンツォ・マリア・パチーニ(Lorenzo Maria Pacini)
出典:Strategic Culture Foundation 2025年3月12日
https://strategic-culture.su/news/2025/03/12/be-brave-romania/