【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年3月18日):シリアの新政権はやはりイスラム原理勢力でありテロ国家だ:崩壊したアサド政権の支持派アラウィー派を惨殺、それに目をつむるEU・NATO幹部

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

権力の中枢にはまだ私たちが訴えかけることができる善良な人々がおり、もし私たちが彼らを活用できれば、もしかしたら、中国はついに正しい行いをして、現在進行中の大量虐殺に反対するようになるかもしれない。

1月中旬にNATOによるアラウィー派の大量虐殺が続いている、と書いたときから、彼らの窮状は完全に絶望的な状況にまで悪化した。アラウィー派の村全体が公然と虐殺され、女子学生や90代の男性が組織的に処刑され、キリスト教徒も虐殺され、何千人もの民間人がこの最新のホロコーストを逃れようとロシアの空軍基地や海軍基地に逃げ込んだ。

私たちはこの虐殺に反対するだけでなく、このような大量虐殺を承認するヨーロッパの金持ちたちにも反対しなければならない。その中には、ダマスカスに集まって自分たちの操り人形であるジャウラーニーの幸運を祈った悪名高いドイツのアンナレーナ・ベアボック外相のような、英国やフランス、ドイツの高官協力者も含まれるが、ジャウラーニー率いる穏健派反政府勢力と協力しているレバノンのジョセフ・アウン大統領とナジブ・ミーカティ首相には特に強く言いたい。彼らは以前、人質に取ったレバノン兵士の首を切ったことがある。

誤解しないで欲しい。NATO の代理勢力がシリアを切り抜ければ、次に文字どおり切り捨てられるのはレバノンだ。レバノンの状況は、経済が完全に破綻しており、リラは 1ドル1500リラの長期平均から下落して 1 ドル90000リラで取引されている。シリア国内と同様に、飢餓が蔓延しており、レバノン国民は最悪の事態が待ち受けていることに疑いの余地はない。ヒズボラは、最後の抵抗に備えて身を潜めているが、アラウィー派が現在耐えているのと同じ運命が自分たちにも待ち受けていることに疑いの余地はない。
 
カズーク(串刺しの刑)

NATOのシリア政権にとって、すべての少数民族は格好の標的だ。Google でカズーク خازوق などの単語や、こことここのリンクを検索すると、オスマン帝国の恐ろしさがわかる。オスマン帝国は中世の野蛮人であり、第一次世界大戦の終わりに戦利品を分配した後、フランスがトルコに取って代わったとき、シリア人はフランス人の足元にキスをしそうになったほどだった。

また、イスラム教ドゥルーズ派はフランスに対する反乱を率い、シリア・アラブ軍の非常に著名な指導者的勢力であったが、NATO傘下の現在の首切り代理部隊は彼らを母国から引き離すために懸命に働いており、イスラエルはドゥルーズ派が南部で降伏すれば彼らの安全を保証し、NATO傘下の暴徒であるジャンブラット一族は彼らをダマスカスの西に引き離そうとしている。それに加えて、クルド人とトルコ人は自らの土地収奪詐欺の一環としてシリア北部で民族浄化をおこなっており、シリアは窮地に立たされている。

シリアとレバノンの経済状況が悪化したため、この国家分裂の過程ははるかに容易になった。レバノンは毎年、家族がベイルートに送る67億ドルの送金によってなんとか持ちこたえている。こうした送金は現在、レバノンの国内総生産(GDP)の30.7%を占め、トンガ(GDPの41%)、タジキスタン(39%)に次いで世界で3番目に高い。NATOと現地のイスラエル執行機関はレバノンをまさに窮地に追い込んでおり、ヒズボラを除けば、差し迫った終末を遅らせる勢力はほとんど見当たらない。

アサド大統領

このアイルランド国営通信のサイトのようなNATOの言い分をそのまま流す反響室のような報道機関は、現在のアラウィー派の人々に対する虐殺を自分たちのせいで犠牲者になった人物のせいにしている。あるいは、彼らの言葉を借りれば、これらの首切り人たちは「バッシャール・アル・アサド傘下のアラウィー派の戦闘員による反乱の芽を鎮圧しようとしている」と述べ、ジャウラーニーは「我々は崩壊した政権の残党を追及し続ける…我々は彼らを公正な法廷に引きずり出す、そして我々は国家に対する暴力としての武器の制限を続ける、そしてシリアに野放しの武器は残さない」と述べている。

公平な裁きをしてくれ、わが高貴な無産労働者階級のくそったれさん。現実に起こっているのは、アラウィー派やクルド人、キリスト教徒、その他のおせっかいな少数派が私刑でたたきのめされ、銃撃され、ヘリコプターが面白半分にアラウィー派の家に発砲している。ラタキア市の学生、ハザール・イッサさんやヌール・イッサさん、ザイナ・ジャディドさん、シンダ・カシュコさん、アフマド・ハイダルさんは、ここ数日、これらの聖戦主義者の残忍な者たちによって銃撃された多くの罪のない学生のほんの一部に過ぎない。マロン派のトニー・ブトロスさんと彼の息子ファディさんは、これらの解放者たちが最近殺害したキリスト教徒のうちのほんの2人に過ぎない。シェイク・シャイバン・マンスールさんは90歳のアラウィー派の男性であるが、残忍な聖戦主義者たちが彼を殺害し、遺体を切断した。ドイツの外相ベアボックと彼女と同類の堕落したシリア人がどういう人達なのかを皆さんに感じてもらうために、ジャウラーニーにとっての最高指導者であるベアボックの仲間らがアラウィー派のワイン醸造家を処刑し、その遺体を冒涜する動画をここで紹介しよう。

ベアボックとその仲間がアラウィー派や、元大統領夫人のアスマー・アサドのようなアラウィー派と意気投合した人々に対して抱く嫌悪の根源を探るにあたって、西側の愚か者や悪党を決して無視してはならない。我々は皆、ヴォーグ誌のアスマー・アサドに対するこの熱烈な批評を覚えているが、ここでは著者が文字どおり自分の言葉を飲み込み、彼女や彼女のようなジャーナリスト全員がいかに卑劣な沼の怪物であるかを示している。アスマー・アサドが服に散財することに関しても、湾岸諸国の王女たちが個人機でイタリアに通い、特注の靴のために足のサイズを測ってもらい、靴が出来あがるのを待っている間、これらのプラスチックのシンデレラたちがトラック一杯に買い込んで時間をつぶしていることをこの偽ジャーナリストに誰も教えなかったのは幸いである。

それから、アスマーの息子であるハーフィズ・アサド博士は、学生時代に出場したさまざまな数学競技会で優勝できなかったことで嘲笑された。私は、米国やその他の強国が不正に操作したせいで、それらの競技会でどこにも到達できなかったアイルランドの数学の天才がいることを知っているだけでなく、数学の分野ではアサド博士が彼を批評する誰よりもはるかに優れていることを考えると、「知っていることだけを書くべきである」という古い格言がこの事例に当てはまる、といえる。しかし、もしアサド家の批評家が知っていることについてだけ書いたとしたら、彼らには書くべきことがまったくなくなるだろう。なぜなら、こんな記事が書かれた意図は、ハーフィズの数学の才能(またはその欠如)について知らせるためではなく、アサド家やアラウィー派を批判し、それによって聖戦主義者の首切り人が彼らを世界から排除するのを助けるため、というところにあったからだ。

ところで、バッシャール・アル・アサドはどうだろうか。ジャウラーニーは戦闘の雄叫びをあげ、アラウィー派を墓場に送ろうとしていただけではなく、ジャウラーニーがアラウィー派を絶滅させるためにラタキアに注ぎ込んでいるウイグルの突撃部隊が、1500年前の戦いに対する復讐を叫んでいる。ベアボックにとっての英雄は私にとっての英雄とは異なるが、彼女とは違い、私はナチスドイツのアインザッツグルッペン部隊のファンではなかった。

ロシア、母なるロシア

アサド一家は現在ロシア連邦の住民であるが、ロシアが彼らに寝床と食事を与えること以外にできることはほとんどない。ロシアは、自国のすぐ近くでドイツが支援する新たな大量虐殺に抵抗するのに手一杯であるだけでなく、大量虐殺を阻止するために国連での立場を利用する以外でロシアが本気で介入しても、良い結果にはならないだろう。私がそう言うのは、このNATO代理戦争へのロシアの最初の介入により、米国がラッカとそこに駐留していた代理ISIS部隊を壊滅させることで現地の状況を変え、ロシア空軍を先頭に立つ勇敢なシリア・アラブ軍がラッカを解放できないようにしたからだ。

イスラエルや米国、そして彼らの取り巻きたちは、アラウィー派だけでなくシリアとレバノン全体に対しても邪悪な計画を企んでおり、邪魔をするアラウィー派やアルメニア人のような者たちは天からの助けを求めるしかない。しかし悲しいことに、ロシアは世界の救世主になることはできない。それはイエスの仕事だからだ。

カタールとパレスチナ

カタールの役割はシリアの世俗主義政権の打倒に資金を提供することであり、シリアの経済復興に資金を提供することではない。確かに、カタールはシリアに安価な援助物資を満載した飛行機を飛ばすこともあるが、それだけだ。湾岸諸国の独裁者にとっては、シリアに破壊的な波を起こさせるよりも、シリアを絶望させる方がよいのだ。

カタールの資金提供者のためにシリア軍と戦ったハマスについては、もし彼らに脳みそがあったら、危険だったかもしれないということ以外に何を言うべきだろうか?彼らの状況はアラウィー派と同じくらい悪く、キャベツ一個も投げつけずにシリア南部のほとんどとドゥルーズ派地域をイスラエルに明け渡したジャウラーニー政権は、最も熱狂的なイスラエル人と同じくらいパレスチナ人の敵だ。世俗的なシリア・アラブ共和国を打倒する以上の計画は一度もなかったし、計画するつもりもなかったが、ハマスがそれを理解できなかったということは、頭脳戦が彼らの得意分野ではないことを示している。イスラエルがデラを占領しているにもかかわらず、デラの首脳たちがアラウィー派を虐殺するために北に群がっていることは、ウイグル人やヨルダン人、トルコ人、エジプト人、アルバニア人という「新シリア人」がいかに政治的空間の無駄遣いであるかを示している。

そして、おそらく中国人もそうだろう。中国系ウイグル人過激派のアブドゥルアズィーズ・ダウード・フダベルディ(別名ザヒド、シリアにおける分離主義トルキスタン・イスラム党(TIP)侵攻軍の司令官)は、現在ジャウラーニー傘下の荒廃した軍隊の准将であり、他の2人の悪名高いウイグル人首切り隊長であるマウラン・タルスーン・アブドゥサマドとアブドゥルサラム・ヤシン・アフマドは大佐である。中国はTIPを海外の中国人を攻撃する計画に関与するテロ組織と位置付けているが、声明では大声を上げながらも行動には出ない中国人よりもアラウィー派がTIPを倒す見込みの方が大きい。

一方、トルコはカタールの資金援助を受けて、さらに3500人の傭兵をシリア沿岸に送り込み、港を占拠し、資源を奪い、アラウィー派やアルメニア人、その他トルコの鼻先につくさまざまな少数民族を虐殺することを目指している。

結局、イスラエルはシリア分割と征服に成功し、イラクやイエメン、イランへと進軍する前にレバノンのシーア派を根絶するのに非常に有利な立場に立つことになるだろう。

文明の最後の抵抗

来月、アルメニア人虐殺の110周年にあたる4月24日木曜日に私は記事を書く予定だ。ダマスカス大学で、言語に絶する犯罪の100周年を記念する式典で講演した際、私は、エレバンに集まった講演者の中で、ロシアのプーチン大統領だけが出席する資格がある、と述べた。なぜなら、ヨーロッパ諸国の中で、アルメニア人を助けたのはロシアだけだったからだ。

その朝、私はヤルムークのパレスチナ難民キャンプで、ジャウラーニーの迫撃砲が私たちや近くでパンを買う列に並んでいた女性たちの間を直撃し、赤ん坊を連れた若い母親たちが顔をしかめるのを見ていた。ジャウラーニーには今のところ他の標的がいるが、私はアレッポで彼らが斬首したパレスチナの子どもたちのことを忘れない。他の多くの人々のことを忘れないのと同様だ。

それでも、記憶に留めるだけでは十分ではない。私は今もここで困窮するシリア人のために募金活動をおこなっており、シリアの弁護士や善意の人々と協力して、ジャウラーニーを起訴する情報の収集に取り組んでいる。アルメニア人の場合と同様、これは長く、おそらくは実りのない旅になるだろう。だが、迫害されているアルメニア人やアラウィー派の側において愚か者でいる方が、買収され賄賂を受け取った天才でベアボックとその首謀者たちの側でいるよりましだということを別にすれば、米国や中央ヨーロッパの権力の中枢にはまだ私たちが訴えかけることができる善良な人々がおり、彼らを活用できれば、もしかしたら、中国はついに正しいことをして、現在進行中の大量虐殺に反対するようになるかもしれない。結局のところ、何事をおこすにも端緒というものがあるのだ。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年3月19日)「シリアの新政権はやはりイスラム原理勢力でありテロ国家だ:崩壊したアサド政権の支持派アラウィー派を惨殺、それに目をつむるEU・NATO幹部」
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からの転載であることをお断りします。

また英文原稿はこちらです⇒Last stand of the Alawites
筆者:デクラン・ヘイズ(Declan Hayes)
出典:Stategic Culture Foundation  2025年3月9日
https://strategic-culture.su/news/2025/03/09/last-stand-of-alawites/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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