
青柳貞一郎さんインタビュー(上): 医療・軍事・検閲の真相を、多面的に探究する医師・言論人
国際政治陸上自衛隊医務官から東京医科大学教授へ
ISFはこれまで、コロナとワクチン即ち医療の問題、2014年以来のウクライナ紛争、そしてトランプ政権をはじめとする国際政治や鳩山政権・小沢事件等日本政治を巡る報道・情報操作の検証に、特に力を入れてきました。これら三つの問題に精通し、現在は軍事ジャーナリストとしても活動する青柳貞一郎医師に、詳しくお話を伺う機会をいただきました。
既に『紙の爆弾』やご自分のブログからの転載を含め、ISFに何度も登場しています。
https://isfweb.org/columnist/%e9%9d%92%e6%9f%b3%e8%b2%9e%e4%b8%80%e9%83%8e/
青柳さんは、1958年、神奈川県生まれ。湘南高校から、防衛医科大学に進みました。防衛大学校と同じく、学費無償の上に給料を受け取りながら学べるといった条件も相まって、医学を志す若者らの間では、古くから競争の厳しい大学として知られます。
93年には1年間米国のコーネル大学に留学しました。9・11前の時代であり、マンハッタンの病院で各国の一流研究者らとも交流し、「米国の優れたところを経験できた」と振り返ります。
陸上自衛隊では、第13師団司令部医務官を務めました。最終的には幕僚級にまで昇進した上で、部隊の中で勤務した経験が、現在の軍事分析にも生きていると言います。防衛医科大学校卒業生は、9年間は自衛隊で勤務する義務がありますが、その期間が終わってから数年後、東京歯科大学を経て、2002年には東京医科大学泌尿器科の講師になりました。その後同じく東京医科大で准教授・教授へと昇進し、24年に定年退職しました。茨城医療センター勤務が比較的長く、監査部門にあたる「医療の質検証委員会委員長」を務めた経験が、医療についてメタレベルで考える問題意識を養うきっかけになった、と回顧します。単に医療過誤がなかったか等を調査するだけでなく、「どうすればより良い医療措置を実践できたか」まで提案する仕事だったからです。
定年退職後も、千葉県内のクリニックに勤務する現役の医師であり続ける一方、『紙の爆弾』に医療や軍事等をテーマに寄稿するようになります。その一方で、在職中から参加していた市民団体「温暖化とコロナに流されない市民の会」では、死去した元横須賀市議の一柳洋さんを引き継ぎ、23年から今に至るまで代表を務めています。この団体は、副島隆彦さんの影響も受け、一般市民向けの講演会開催を活動の中心とし、ISFでおなじみの高橋清隆さんや、植草一秀さん、孫崎享さんも講師として登壇したことがあります。
https://ondan567kai.wixsite.com/index
4匹の猫と暮らす愛猫家でもあり、2008年以来書き続けているブログ「rakitarouのきままな日常」の名称も、かつて飼っていた隻眼の猫の名前に由来するそうです。
https://blog.goo.ne.jp/rakitarou
コロナ禍での診療とmRNAワクチンへの疑問
コロナ禍で最も大変だった時期に東京医大で診療に当たった経験を基に、青柳さんは「確かにデルタ株蔓延下では重症化する患者が少なくなかったが、オミクロン株への変異で大幅に軽症が多くなった時点で、コロナを5類に移して、他の病棟の軽減をより早く図るべきだった」と振り返ります。
mRNAワクチンについては、「安全だという保証があったわけではないのに、全員に接種を勧めたのは大問題だった」、と指摘します。科学では、カール・ポッパーの理論で示されたように、主張(仮説形成)と反論(反証)のやりとりを通して真理に近づいていくものなのに、少数意見を唱える専門家が「陰謀論者」等として不当に攻撃されたり、ネット上の異論が削除されたりしてきた経緯を、「科学の衣を着たプロパガンダ」として批判しています。ご自身は、少なくとも自分が担当した患者にはワクチンについて、厚労省の公式見解にとどまらない事実も伝え、総合的な情報提供に努めてきました。
そもそも、「感染しても発症しなければよく、発症しても重症化しなければいいということが医学の従来の常識だったのに、コロナ禍では徹底的な感染予防が目的とされたこと自体がおかしい」、と青柳さんは異議を唱えています。
米軍や自衛隊でもコロナワクチン接種が推進され、バイデン政権下では強制の動きが強まりましたが、「軍事医学的には、安全性が完全に立証されていない薬剤を全員に投与するのは危うい」、と懸念していました(トランプ政権では、ワクチン拒否で排除された兵士が復帰を許されました)。「一流学術雑誌に掲載された論文だから必ず正しい、と権威を信じるのではなく、内容面で、科学として成り立っているのかを見る必要があります。また、著名な学術誌ほど、公式見解に反する異論が書きにくいため、著者らが偽装的な書き方をしている場合もあるので、見抜かなくてはならない」とも指摘します。
例えば青柳さんの次のブログ記事では、『JAMA』という米国の代表的な医学誌に掲載された論文を題材にしています。この論文によると、確かに新しい型のコロナワクチン接種を受けた人の方が、古い型のワクチン接種を受けた人より、コロナ陽性になる確率も、入院する確率も低くなっています。しかし、コロナ陽性での入院率は、非接種者と接種者があまり変わらないか非接種者の方が低く、コロナ陰性の他の病気での入院率は、非接種者の方がどの型のコロナワクチン接種者よりも低くなっている結果に注目します。こうした結果に基づき、「相関関係としては総合的な免疫力が低下している事が推察されます」と青柳さんは指摘します。しかも、著名な学術誌ほど、コロナワクチンの有効性を否定しづらい風潮があることから、著者らはこの総合的免疫力低下の方を、このような偽装的な仕方で言いたかったのではないか、という深読みには驚かされました。
「最高値を更新する日本の死亡者数」、2025年3月8日。
https://blog.goo.ne.jp/rakitarou/e/aa98b23606f340ebfded0a3d5c0a3425
Sara Y. Tartof et al.: Estimated Effectiveness of the BNT162b2 XBB Vaccine Against COVID-19, in: JAMA Internal Medicine. 2024年8月公開。
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2820268
止まらない日本の「超過死亡」と、免疫を抑制するIgG4抗体の問題
この論文については、詳しくは『紙の爆弾』2025年3月号「最高値更新を続ける日本の超過死亡の原因」で説明されています。この記事では、青柳さんがオクスフォード大学のOur World in Dataを用いて得たデータから、日本は24年になってからも、コロナ発生以前の15~19年の平均死亡者数と比べて増えたとされる「超過死亡」が拡大しているのに対し、途中でコロナワクチン接種を事実上中止した米国、英国、ドイツ、フランス、南アフリカはそうではない、という興味深い事実が説明されています。
なお単なるこうした相関関係のみならず、IgG4という免疫を抑制する抗体がmRNAワクチンによって誘導される機序も、徐々にわかってきています。がん細胞や他の感染症に対してmRNAワクチン接種経験者が脆弱になることも、このような免疫抑制効果によって説明できる、といいます(詳細は上述の『紙の爆弾』記事参照)。日本の主要メディアは、周知の通り、ワクチン接種で抗体を作れば感染を免れられると主張し続け、抗体の種類を問題することはほとんどなかった、と私は振り返っています。
IgG4抗体の問題点については、例えば東京都医学総合研究所の次の資料が解説しています。「mRNAワクチンの反復接種はSARS-CoV-2の免疫回避を促進する」、2023年10月3日。https://www.igakuken.or.jp/r-info/covid-19-info182.html
mRNAワクチンは本来ワクチンでなく「遺伝子製剤」であり、より厳しく審査されねばならない
青柳さんに、「コロナワクチン接種にそもそも、何らかの利点はありましたか」と私からお尋ねしたところ、「工業製品としての品質があまりに悪く、メリットはほぼない」との回答でした。通常のワクチンは、弱められたウイルス等の抗原を投与して、細胞に抗体を作らせて免疫獲得を目指します。それに対して、mRNAワクチンは、mRNAという遺伝情報を投与し、細胞に新型コロナウイルスの一部である「スパイクタンパク」を産生させ、それに対する抗体を作らせる、というより複雑な構造になっています。しかもワクチンのmRNA自体が正しい遺伝情報を持っているものが6割程度とも言われており、不正な遺伝情報により、正体不明のタンパク質が宿主ヒト細胞で作られ、これらが健康被害をもたらしている可能性があるのです。これは大変重要な指摘であり、根拠として、次の2件の記事をご紹介いただきました。
Sonia Elijah: Startling Evidence Suggests BioNTech and Pfizer Falsified Key Data: Part 1.
Children’s Health Defense Europe. 2023年2月14日。
Sonia Elijah: Startling Evidence Suggests BioNTech and Pfizer Falsified Key Data: Part 2.
Children’s Health Defense Europe. 2023年3 月15日。
「そもそも、mRNAワクチンは遺伝子製剤として、より厳しく審査すべきなのに、現状では単なる『ワクチン』として、簡易な審査で認可されているのが最大の問題です。そのため、副反応審査も、アナフィラキシーや、添加物質等の従来型のワクチン成分によるものに限定され、未知のタンパク質がもたらしたかもしれないものは、無視されてしまっています」と青柳さんは問題の本質を説明します。従来の基準によるとワクチンとみなされない薬剤を、ワクチンとして幅広く使用してしまった「カテゴリー・ミステイク」(「範疇錯誤」)の末起った悲劇、と私は理解しています。mRNAワクチン薬害を審査する厚労省の審議会や傘下の独立行政法人PMDAにも、遺伝子治療に詳しい専門家はほとんどいない、という青柳さんのご指摘も極めて重要です。
mRNAワクチンの性質のばらつきという点では、小島勢二・名古屋大学名誉教授が何度も検証し、ワクチンの「ロット番号」ごとの接種後死亡率の顕著な違いがあることを突き止めています。
「全接種者を対象にしたコロナワクチンにおけるロット差の検討」、『アゴラ』、2025年2月22日。https://agora-web.jp/archives/250221060322.html
外科医としての経験から:たった1人の命の価値をより重く見よ
青柳さんは外科医としての経験も豊富ですが、ワクチンを含む予防医療がしばしば示す一人一人の命の軽視に疑問を抱くことがある、と言います。外科手術の失敗で、元々何らかの病気にかかっていた人が1人亡くなれば大問題なのに、ワクチン等の副反応で健康な人が(!)複数死んでも、より多くの命を救うためには、一定の犠牲は仕方ない、と公衆衛生の世界ではなりがちである、と。しかも、肝心の効果についても、「mRNAワクチンがサイトカインストーム(免疫の暴走)を防止して、重症化を防いでいる、という因果関係は立証されていません」。
(下に続く)

防衛医科大学卒業、元陸上自衛隊医務官、医師、東京医科大学名誉教授、医療・軍事ジャーナリスト。温暖化とコロナに流されない市民の会代表。ブログ:「rakitarouのきままな日常」https://blog.goo.ne.jp/rakitarou

1984年生まれ。東京大学文学部卒、同大学院人文社会系修士課程修了(哲学専門分野)。著書に『ウクライナ・コロナワクチン報道にみるメディア危機』(2023年、本の泉社)。主な論文は『思想としてのコロナワクチン危機―医産複合体論、ハイデガーの技術論、アーレントの全体主義論を手掛かりに』(名古屋哲学研究会編『哲学と現代』2024年)。 論文は以下で読めます。https://researchmap.jp/fshimazaki ISFでは、書評とインタビューに力を入れています。 記事内容は全て私個人の見解です。 記事に対するご意見は、次のメールアドレスにお願いします。 elpis_eleutheria@yahoo.co.jp Xアカウント:https://x.com/FumiShimazaki