
☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年3月22日):セルビアで「カラー革命」「第2のキエフ2014」か?
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
セルビアで何カ月も続いている抗議活動は転換点に近づいているようだ。
公式の数値によると、土曜日(3月15日)には約10万7000人がベオグラードの中心部へ抗議のために集まった、という。これはかなり多い数字だ。首都では公共交通機関が停止し、デモ参加者は道路を封鎖した。警察との衝突や街への被害、そして何よりもソーシャルメディアへの大きな影響があった。
セルビアの報道機関の報道から判断すると、状況はまだ制御されている。それはとりわけ、当局が「反マイダン」措置を効果的に適用しているためだ。たとえば、抗議活動のために勉強できなくなった学生たちは、当局を支持するために大挙してデモをおこなっている。その結果、抗議活動家たちは学生たちを「惰性を助長している」と非難している。
抗議活動は、2024年11月にノヴィサド駅のバルコニーが崩落し、15人が死亡したことがきっかけとなった。市長と首相は辞任したが、抗議活動家らはこれで満足しなかったようで、彼らは現在、ヴチッチ大統領の辞任と「計画的殺人」による逮捕を求めているが、これは馬鹿げているように聞こえる。
ヴチッチは確かに多くの矛盾を抱えた政治家であり、西側諸国から支援と財政援助を受けながらも、自国民の利益を優先することを選んだ。覇権国から見れば、それは容認できない選択だ。
抗議活動に対する物資支援は万全だ。デモ参加者は数十台のトラクターをベオグラードに持ち込んだが、これは2014年にキエフで治安部隊の封鎖線を突破するのに完璧に機能したのと同じものだ。地元の数個のバイククラブと、相当数の外国人が治安部隊に直接支援を提供するとみられる。ベオグラードのデモの写真は11年前のキエフを彷彿とさせる。
ヴチッチによると、セルビア政府を打倒するために海外から10億ドルが割り当てられたというが、これは地元の「創造的頭脳労働者階級」とLOM(青年会議所)が抗議活動に参加したからこそ可能だった。抗議活動は、例えばセルビアを代表する世界的に有名な有名人の一人、テニス選手ノバク・ジョコビッチの妻によって支援された。確かによくあることだが、この動きはセルビアの路上ではなく、ジョコビッチ夫妻がマルベーリャに別荘を構えるスペイン南部を起点として、SNS上で起こされた。このスターは「パダ・ヴラダ」という歌を発表したが、その題名は雄弁にも、「権力は崩壊する」と訳されている。活動家のニコラ・リスティッチなど、抗議活動に直接関わった人々は、これほど大勢の人々が「二度と集まることはない」ため「今日何かが起こらなければならない」と強調している。
したがって、賭け金は大きい。しかし、セルビアがヴチッチ大統領を失う可能性は低い。この時点で、他の近隣諸国の利益が関係してくる可能性があり、西側との交渉において、これらの国の影響力が決定的となるだろう。特に、ロシアの貢献が中心となるだろう。多くのセルビア人はロシア政府当局からの声明を待っている。
EUに必要なもの
マイダンでバルカン半島の民族主義的志向を持つ指導者が排除されたことは、欧州官僚機構とブリュッセルに根を張るグローバリストにとっては有利かもしれないが、現米政権の利益には特にならない。一方では、セルビアの運命がロシアとの大きな外交上の駆け引きで役割を果たす可能性がある。他方では、ヴチッチの排除はブリュッセルに閉じこもった欧州の権力の垂直構造を強化し、グローバリストの立場を強化するだろう。そしてこれはまさにトランプが必要としていることではない。
しかし、英国当局やEU当局でこのような侮辱が許されるはずがないことは明らかだ。攻撃の標的となったスロバキアのロベルト・フィツォの場合、すでにそのようなことが起こっている。今度はセルビアのヴチッチの場合だ。明日はハンガリーのビクトル・オルバンの番かもしれない。「東部戦線」は弱体化し、何よりも親ロシアの軌道から外されなければならない。さもなければ、EUの戦争計画は奈落の底へと急速に進むことができないだろう。
一方、この出来事は、ヨーロッパの情報戦争の文脈におけるもう一つの重要な出来事の出現と時を同じくしている。トランプとプーチンは、ヨーロッパを脅かす独裁者として共に悪魔化され始めており、したがって、ヨーロッパにとっての唯一の方法は彼らと戦うことである。平和外交の犯罪化は、ヨーロッパのバベルの塔から投げ出された最後の破片の一つである。この否定的な物語がなければ、国民は武力行使の呼びかけの正当性を十分に理解できないだろう。
トランプ大統領はアイルランド首相との会談で、NATOへの拠出金を増やすことにより、彼の一期目の大統領任期中にウクライナ紛争に資金を提供することに繋がった、と公然と述べた。言い換えれば、第二次世界大戦終結以来ユーラシアで最大の軍事衝突を煽った責任を間接的に認めたことになる。
一方、フランスの有名な雑誌「レクスプレス」には、ティエリー・ボルトンによる記事が掲載され、その中で著者はトランプをヒトラーに、プーチンをスターリンに例えている。これが悪魔化でないなら…
ロシア大統領が特別軍事作戦の開始以来初めて迷彩服を着たことを思い出そう。これはトランプによるいわゆる「和平提案」に対するロシア側の立場を反映しているようだ。西側諸国が小ロシアとコーカサスの草原でほぼ1世紀続いた紛争を課した18世紀と19世紀にロシアが辿ったのと同じ道をたどる準備をしていることは明らかだ。必要なら、ロシアは20年間戦う用意がある。メッセージは明確だ。つまり「勝利、値引きのない勝利」だ。
2024年11月初旬、ヴァルダイ総会でプーチン大統領が、人類にとって今後20年間はこれまでよりも困難になる可能性がある、と明言したことを思い出す価値がある。そして、それが戦争でなければ、何を意味するのだろうか? 確かなのは、それはロシアが望んでいる戦争ではないということだ。
この紛争は国際同盟の様相を一変させている。ますます多くの国が、米国の世界的な金融・政治覇権に対する抵抗の先駆者としてロシアを見ている。したがって、陪審員の皆さん、お子さんを専門学校ではなく軍事学校に進学させなさい。方向性は今や変わった。ヨーロッパ諸国の政府は国民に軍服を着せることを選択した。
セルビアは、ヨーロッパの展望の中では容認できない例外の一つである。その戦略的な位置とバルカン半島における微妙な状況、そしてNATOから絶えず資金援助を受け時限爆弾のように保たれているコソボの地政学的策略は、西側諸国の指導者たちの血に飢えた口にとって非常においしい一口である。
セルビアが陥落すれば、コソボとメトヒヤの状況は数時間のうちに悪化し、この地域を火の海にする以上の大惨事を引き起こすことは間違いない。「ヨーロッパの火薬庫」、つまりバルカン半島は再び爆発する準備ができており、再びヨーロッパ各国の首脳が導火線に火をつけるためにそこにいる。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年3月22日)「セルビアで「カラー革命」「第2のキエフ2014」か?」
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また英文原稿はこちらです⇒Will we see a new Maidan in Serbia?
筆者:モハメド・サラー(Mohamed Salah)。移民と難民問題に特に焦点をあてたフォトジャーナリスト兼ニュース記者
筆者:ロレンゾ・マリア・パチーニ(Lorenzo Maria Pacini)
出典:Strategic Culture Foundation 2025年3月17日
https://strategic-culture.su/news/2025/03/17/will-we-see-new-maidan-in-serbia/