
【櫻井ジャーナル】2025.03.23XML:米大統領にイランを軍事攻撃させようと画策しているネオコンのエイブラムス
国際政治アラブ首長国連邦で大統領外交顧問を務めるアンワル・ガルガシュは3月12日にイランのセイエド・アッバス・アラグチ外務大臣と会談、その際にドナルド・トランプ米大統領からの書簡を手渡した。イランに対して新たな核合意に関する協議に参加するよう促す内容で、当初、ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官から渡されたと伝えられていたが、ロシア政府はメッセンジャー役を断ったようだ。
ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領府報道官はブルームバーグに対し、「アメリカとイランは交渉を通じてすべての問題を解決すべきだとロシアは考え」、ロシア政府は「そのために全力を尽くす用意がある」と述べたという。そこでトランプ大統領はロシア政府に仲介を頼もうとしたのだろうが、拒否されてしまった。イランの最高指導者であるアリ・ハメネイは書簡を受け取る前、トランプが「約束を守らないとわかっているのに、交渉する意味などあるだろうか」と語っている。
イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は親米派と言われている。昨年5月にエブラヒム・ライシー大統領やホセイン・アミール-アブドラヒヤン外相らを乗せたアメリカ製のベル212ヘリコプターが墜落、搭乗者全員が死亡、その2カ月後にペゼシュキアンは大統領に就任した。今年1月17日にはモスクワを訪問、両国の包括的戦略的パートナーシップ協定に署名した。
ペゼシュキアン政権は新自由主義的な政策を採用、通貨の価値が下落してインフレが進み、生活費が高騰して人びとの生活は苦しくなっている。当然、国民の不満は高まり、3月2日にはイスラム諮問議会(マジリス)がアブドゥル・ナセル・ヘマティ経済財務相を解任した。モハメド・ジャバード・ザリーフ戦略担当副大統領が辞表を提出したとする話も流れた。ザリーフは包括的核実験禁止条約(JCPOA)の元交渉者でもある。ペゼシュキアン政権は揺らぎ、国民はイスラエルやアメリカによる爆撃を恐れていると判断、交渉に応じるとアメリカ側は考えたのかもしれない。
中東を不安定にしている最大の原因はイスラエルにある。第2次世界大戦が終わって間もない1948年4月4日、シオニストは先住民であるアラブ系の人びとの排除を目的とする「ダーレット作戦」を発動した。そのうえで「ユダヤ人の国」を作ろうというのだ。
6日にはハガナの副官、イェシュルン・シフがエルサレムでイルグンのモルデチャイ・ラーナンとスターン・ギャングのヨシュア・ゼイトラーに会い、ハガナのカステル攻撃に協力できるかと打診。イルグンとスターン・ギャングは協力することになる。
まず、イルグンとスターン・ギャングはデイル・ヤシンという村を襲うが、この村が選ばれた理由はエルサレムに近く、攻撃しやすかったからだという。村の住民は石切で生活し、男が仕事で村にいない時を狙って攻撃するプランだった。
4月9日午前4時半にイルグンとスターン・ギャングはデイル・ヤシンを襲撃。マシンガンの銃撃を合図に攻撃は開始、家から出てきた住民は壁の前に立たされて銃殺され、家の中に隠れていると惨殺、女性は殺される前にレイプされている。
襲撃の直後に村へ入った国際赤十字のジャック・ド・レイニエールによると、254名が殺されていた。そのうち145名が女性で、35名は妊婦だった。イギリスの高等弁務官、アラン・カニンガムはパレスチナに駐留していたイギリス軍のゴードン・マクミラン司令官に殺戮を止めさせるように命じたが、拒否されてしまう。ハガナもイルグンとスターン・ギャングを武装解除しようとはしない。(Alan Hart, “Zionism Volume One”, World Focus Publishing, 2005)
そして5月14日、エドモン・アドルフ・ド・ロスチャイルドやアブラハム・フェインバーグといった富豪をスポンサーとするシオニストはイスラエルの建国を宣言したのだが、ユダヤ人はシオニストの思惑通りに集まらなかった。ナチスによる弾圧で多くのユダヤ教徒がドイツ国外へ逃れたが、ヨーロッパの生活様式に慣れた人びとはパレス地でなくアメリカやオーストラリアへ向かったからである。そこでシオニストはイラクに住むユダヤ人に目をつけ、そのユダヤ人をターゲットにしたテロを実行、パレスチナへ集めようとした。(Will Banyan, “The ‘Rothschild connection’”, Lobster 63, Summer 2012)
シオニストの中でも凶暴なイルグンやスターン・ギャングはゼエブ・ジャボチンスキーの「修正主義シオニズム」から生まれている。ジャボチンスキーは1940年にアメリカへ渡ったが、そこでジャボチンスキーの秘書を務めていたベンシオン・ネタニヤフはイスラエルの現首相、ベンヤミン・ネタニヤフの父親である。
ジャボチンスキーが親しくしていたレオ・シュトラウスは1899年にドイツの熱心なユダヤ教徒の家庭に生まれ、17歳の頃にジャボチンスキーのシオニスト運動に加わった。シュトラウスはネオコンの思想的な支柱と言われているが、カルガリ大学のジャディア・ドゥルーリー教授に言わせると、彼の思想は一種のエリート独裁主義で、「ユダヤ系ナチ」である。(Shadia B. Drury, “Leo Strauss and the American Right”, St. Martin’s Press, 1997)
シュトラウスは1932年にロックフェラー財団の奨学金でフランスへ留学し、中世のユダヤ教徒やイスラム哲学について学ぶ。その後、プラトンやアリストテレスの研究を始めた。(The Boston Globe, May 11, 2003)
1934年にシュトラウスはイギリスへ、37年にはアメリカへ渡ってコロンビア大学の特別研究員になり、44年にはアメリカの市民権を獲得、49年にはシカゴ大学の教授になった。
シュトラウスと並ぶネオコンの支柱とされている人物が、やはりシカゴ大学の教授だったアルバート・ウォルステッター。冷戦時代、同教授はアメリカの専門家はソ連の軍事力を過小評価していると主張、アメリカは軍事力を増強するべきだとしていたが、その判断が間違っていたことはその後、明確になっている。
ジャボチンスキーの系譜に属すネタニヤフ親子やネオコンはユーフラテス川とナイル川で挟まれている地域を支配しようとしている。「大イスラエル構想」だ。この構想は今でも生きている。シュトラウスの思想を受け継ぎ、現在、修正主義シオニストをまとめている人物がさまざまな秘密工作に関係してきたエリオット・エイブラムスだ。エイブラムスはネタニヤフを背後から操り、トランプ大統領をイランと戦わせようと画策している。
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「米大統領にイランを軍事攻撃させようと画策しているネオコンのエイブラムス」(2025.03.23XML)
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