【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.03.26XML: 米軍が対中国戦争の準備を進める中、元統合幕僚長が台湾の政務顧問に就任

櫻井春彦

 統合幕僚長を2012年から14年まで務め、退役してから16年まで防衛大臣政策参与だった岩崎茂を台湾の行政院が政務顧問に任命したと伝えられている。岩崎は退役後も影響力のある人物で、昨年5月に頼清徳が総督に就任した際には式典に代表団のひとりとして出席していた。台湾と日本の軍事的なつながりを強めるだけでなく、アメリカ軍のメッセンジャーとしての役割も果たすのだろう。

 アメリカは台湾に対する軍事的な関与を強めている。例えば、​同国の軍事顧問団は金門諸島と澎湖諸島に駐留して台湾の特殊部隊を訓練​している。​今年2月には台湾の独立を支持しないという声明をアメリカの国務省がウェブサイトから削除​して中国を刺激したことも記憶に新しい。

 台湾は中国を侵略するための重要な軍事的拠点である。中国を軍事侵略していた日本軍は空爆するための「空母」として台湾を利用、ダグラス・マッカーサーは第2次世界大戦や朝鮮戦争の際、台湾を「不沈空母」と呼んでいた。

 本ブログでは繰り返し書いてきたことだが、​GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲するというアメリカ軍の計画を国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」は2022年の4月に説明している​。日本では自衛隊は2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させているが、これはアメリカ軍の計画に基づいているはずだ。

 昨年9月25日に海上自衛隊の駆逐艦「さざなみ」がオーストラリアやニュージーランドの軍艦と共に台湾海峡を通過したが、今年2月上旬には駆逐艦「あきづき」が単独で台湾海峡を通過した。中国を威嚇したわけだが、これはアメリカ軍の指示だろう。あきづきは南シナ海でオーストラリア、フィリピンの軍艦と合同で演習を行っている。

 また、​共同通信は今年3月16日、日本政府が九州に陸上配備型長距離ミサイルの配備を検討していると報じた​。緊急事態の際に敵の標的を攻撃する「反撃能力」を獲得する取り組みの一環だという。そのミサイルとは、射程距離が約1000kmの12式地対艦誘導弾能力向上型で、配備は2026年3月に始まるとされている。この配備もアメリカ軍の中国包囲計画に基づく。

 日本以外でも、2017年4月に韓国へTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムを強引に持ち込み、昨年4月には射程1600キロのトマホーク巡航ミサイルとSM-6ミサイルを発射できるタイフォン発射装置をフィリピンに配備した。

 アメリカに従属する政策を推進していたベニグノ・アキノ3世の後、フィリピンでは自立路線を歩んでいたロドリゴ・ドゥテルテの排除にアメリカは成功、アキノ家と対立していたように見えたボンボン・マルコスは対米従属路線へ舵を切ったと言える。

 ところで、旧日本軍の参謀たちは朝鮮戦争に参加したほか、台湾に顧問団として派遣された過去がある。第2次世界大戦後、蒋介石が率いる国民党は大陸から台湾へ逃げ込み、反撃のチャンスを狙ったが、その準備の一環として1949年から岡村寧次大将など旧日本軍の幹部に接近している。岡村は上海で戦犯として裁判にかけられたものの、1949年1月に無罪の判決を受けて帰国、GHQ/SCAPの保護下に入っていた。中国共産党は岡村大将を引き渡すように要求したが、拒否されている。

 1949年4月に蒋介石は岡村の下へ曹士徴を密使として派遣。曹は岡村や富田直亮少将と東京の高輪で会談して「台湾義勇軍」を編成することで合意、富田少将が「白鴻亮」の名前で義勇軍を指揮することになる。その義勇軍は「白(パイ)団」と呼ばれた。

 白団は1950年の正月頃に台湾へ渡り、日本軍の戦術や軍事情報を台湾軍に教育して国家総動員体制を伝授。翌年の夏までに83名の旧日本軍参謀が台湾へ渡っている。

 この白団へ軍事情報を渡していたのは「富士倶楽部」、つまり陸士34期の三羽烏と呼ばれた服部卓四郎大佐、西浦進大佐、堀場一雄大佐、あるいは海軍の及川古四郎大将や大前敏一大佐たちだ。白団が解散したのは1969年のことで、その間、台湾に大きな影響力を及ぼし続けた。

 こうした士官学校出身の軍人と同じ役割を岩崎元統合幕僚長が果たせるのかどうか不明だが、日本と台湾との軍事的なつながりが強まりつつあるとは言える。

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「米軍が対中国戦争の準備を進める中、元統合幕僚長が台湾の政務顧問に就任」(2025.03.226ML)
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