【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.03.28XML: 次回「櫻井ジャーナルトーク」のテーマ

櫻井春彦

 次回の「櫻井ジャーナルトーク」は4月18日午後7時から駒込の「東京琉球館」で開催します。予定しているテーマは「限界に達した欧米の寡頭政治体制」です。予約受付は4月1日午前9時からですので、興味のある方は東京琉球館までEメールで連絡してください。

東京琉球館

https://dotouch.cocolog-nifty.com

住所:東京都豊島区駒込2-17-8

Eメール:makato@luna.zaq.jp

 EUは制度的に民衆の意思が反映されないようになっています。EUを動かす政府的な役割を果たしている欧州委員会の場合、構成する委員は出身国の利益ではなく、EU全体の「一般的な利益」を代表することが求められているのですが、それは民衆の利益を考慮せず、エリートが決める「一般的な利益」を図れということでしょう。アメリカと同じように、EUという制度は事実上、民主主義を否定する寡頭政治体制なのです。

 EUの前身はEC(欧州共同体)ですが、このECについて堀田善衛はその「幹部たちのほとんどは旧貴族です。つまり、旧貴族の子弟たちが、今ではECをすべて取り仕切っているということになります。」(堀田善衛著『めぐりあいし人びと』集英社、1993年)と書いています。

 そうした貴族を軸とする欧米の支配システムは第2次世界大戦後、ヨーロッパを統合、支配するためにACUE(ヨーロッパ連合に関するアメリカ委員会)を設立しました。その下にはビルダーバーグ・グループなども存在していると言われています。(Richard J. Aldrich, “OSS, CIA and European Unity,” Diplomacy & Statecraft, 1 March 1997)EUを取り仕切る首脳は大半がそうした支配ネットワークが選出しているのです。

 EUのエリートはアメリカの外交や安全保障をコントロールしてきたネオコンと手を組み、ロシアとの戦争を繰り広げています。1991年12月にソ連は解体され、ソ連の中心だったロシアは西側の巨大資本に制圧されました。巨大資本を所有する西側のエリートは制圧したロシアの富を略奪、ロシアの民衆は貧困化し、反欧米感情が高まりました。そうした怒りの中から登場してきたのがウラジミル・プーチンです。

 そのプーチンはロシアを再独立させることに成功しましたが、ロシアで甘い汁を吸っていた西側の富豪やその手先のロシア人にとっては怪しからない人物だということになります。そのプーチン体制を倒すため、ネオコンはさまざまなことをしてきましたが、ウクライナの制圧で一線を超えてしまいました。

 ウクライナは均一の国ではありません。クリミアやオデッサのような南部やドンバスを含む東部などはソ連時代にロシアからウクライナへ政治的な思惑から割譲されたのです。もっとも新しく割譲されたのはクリミアで、1954年のことでした。ウクライナ生まれのニキータ・フルシチョフがロシアとコサックの協定300周年記念の一環としてウクライナへ与えたのです。

 当然のことながら、東/南部と西部では文化や宗教の面で大きく異なります。宗教は東/南部がロシア正教徒であるのに対し、西部は主にカトリック教徒。東/南部では主にロシア語が話され、西部ではウクライナ語が主に話されています。

 微妙なバランスで成り立っていたウクライナをネオコンは全てを支配するため、2004年11月から05年1月にかけて「オレンジ革命」を仕掛け、ビクトル・ヤヌコビッチを排除しました。「革命」とされていますが、ネオコンが行ったクーデターにほかなりません。

 イギリスのエコノミスト誌は2007年3月17日号で2057年の世界情勢についての記事を掲載したのですが、そこに書かれていたシナリオでは2011から20年代半ばにEUの当局者が「バラク・オバマ大統領」を説得、ウクライナ危機をめぐってロシアに大規模な核攻撃をちらつかせ、EUは世界帝国の主導的な機関になるとされています。その幻想から欧米の一部支配層は抜け出せないでいるようです。

 エコノミスト誌はイギリスの金融資本と緊密な関係にあると言われていますので、この記事は金融資本の計画を反映していると言えるでしょう。ちなみに、その号が発行された時点のアメリカ大統領はジョージ・W・ブッシュ。オバマが勝利した大統領選挙は2008年です。

 いわゆる「オレンジ革命」で大統領になったビクトル・ユシチェンコは新自由主義者で、貧富の差を拡大させて国民の反発を買い、2010年の大統領選挙ではヤヌコビッチが当選、ネオコンはネオ・ナチを利用したクーデターを行います。

 そのクーデターは2013年11月に始まり、2014年に入るとネオ・ナチのグループが前面に現れ、2月に入るとネオ・ナチはチェーン、ナイフ、棍棒を手に石や火炎瓶を投げ始め、さらにトラクターやトラックを持ち出します。2月中旬になると広場で無差別の狙撃を始め、ヤヌコビッチ政権を倒しましたが、東部や南部では反クーデターの住民が大多数で、軍や治安機関でも約7割が離脱したと言われています。だからこそ、EUは「ミンスク合意」でロシア政府を騙し、時間稼ぎしたわけです。

 西側諸国は8年かけてクーデター体制の戦力を増強、2022年に入ると反クーデター派の住民に対する砲撃を激しくしはじめましたが、その直後にロシア軍がウクライナの軍事基地や生物兵器の研究開発施設を攻撃し、一気にウクライナ軍は劣勢になります。

 ロシアが軍事力も経済力も自分たちより劣ると思い込んでいる西側諸国は簡単に勝てると思っていたようですが、シナリオ通りにはなりませんでした。戦闘が始まってからロシアは生産力が向上、戦力も増強されています。被害をできるだけ少なくするため、ロシア軍は慎重に攻めているのですが、ウクライナ軍は欧米諸国から無謀な作戦を強いられ、悲惨な状態になっています。

 西側の寡頭政治体制をコントロールしているエリートはそうした惨状を隠し、有力メディアを使って自分たちの責任を回避しようとしていますが、民衆は事実を知り始めています。EUという寡頭政治体制は限界に達したと言えるでしょう。そうした状況について考えたいと思っています。

櫻井 春彦

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「次回「櫻井ジャーナルトーク」のテーマ 」(2025.03.28ML)
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