
☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年3月26日):EUはシリアの元大統領アサドを「市民を殺した」と非難したが、現政権の虐殺は無視
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
今週末の大量殺戮も、EU支配者層がシリアの新政権と関わることを思いとどまらせることはなかった
ウルズラ・フォン・デア・ライエン率いる欧州委員会は、シリア暫定政府を援助国会議のためにブリュッセルに招待した。この決定は、シリアへの投資を促進して戦略的資源を確保することを目的としたものだが、イスラム過激派組織「ハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS)」傘下の軍と民兵の手によって、少数民族や宗教的少数派の民間人数千人が虐殺されたわずか数日後に下された。
こうした事件の重大さにもかかわらず、欧州連合はこれらの過激派組織とのつながりを疑うことなく、シリア新政権に財政的、政治的支援を続けている。欧州委員会のアニッタ・ヒッパー報道官は、無難な技術官僚的な言葉を使って、記者会見でHTSによる殺害を隠蔽した。
シリア安定化は私たち全員の利益です。この目標に向けて努力しなければなりませんが、それは包括的な移行を通じてのみ実現できます。
「シリア支援:政権移行の成功に向けた必要性への対応」と題された この会合は、12月のバッシャール・アル・アサド政権崩壊後、初めて開催される催しとなる。シリア政権は初めて公式に首脳会議に参加し、 アサド・アル・シバニ外相が、シリア当局を代表してこの援助国会合に出席する。
シリアでの最近の虐殺について、EUはあいまいな姿勢を維持している。ソーシャルメディアで恐ろしい画像が広まり、3月11日火曜日にストラスブールで討論会がおこなわれたにもかかわらず、 欧州機関は冷静な態度を保っている。「EUは、ここ数日のシリア沿岸地域での暴力行為により、多数の民間人を含む多数の犠牲者が出たことに深く懸念している」と欧州理事会の公式声明は述べている。しかし、声明では、虐殺の責任があるHTSや民兵組織に直接言及することは避けている。
シリア民主自由機構の創設者兼代表であるリバル・アル・アサド氏は次のように述べている。
もしEUがシリアで起きていることの重大さを本当に理解していたら、それを単に「暴力」と呼ぶことはなかったでしょう。これは紛争ではなく、イスラム過激派テロリスト集団が実行している大規模な宗派間虐殺と民族浄化作戦なのですから。
EUはアサド派民兵の行動を非難する一方で、暫定政府を正当化している。「政権移行は平和的かつ包括的で、外国の悪意ある干渉を受けないものでなければならない」と文書は述べており、これらの組織に欧州の資金が届いていることについては都合よく言及を避けている。言い換えれば、EUは前政権の打倒を支援した後、今度は外国の干渉があってはならない、と主張しているのだ。
欧州理事会は、3月11日にダマスカスでクルド人勢力とシリア暫定政府の間で合意が成立したことを「よりよい未来に向けた重要な一歩」とみなしている。しかし、キリスト教徒やその他の少数派の虐殺については一言も触れられていない。欧州議会(EP)で最初に公式見解に疑問を投げかけたのは社会党だったが、それは臆病な態度だった。「欧州対外行動局は十分な支援を提供しなかった」と社会民主党(S&D)の代表は、虐殺について触れなかった週末の声明に言及して指摘した。しかし、彼らの批判はそれ以上には至らなかった。
一方、保守派はEU当局の偽善に声を上げた。「ヨーロッパのための愛国者」団体の広報担当者は、
誰もが新しいシリアへの支援に駆けつけていますが、一つの政権が別の政権を隠すこともあります。アサド政権がイスラム過激派政権に取って代わられる可能性もあることを忘れてはなりません。
わずか3か月後、新政権は世界が目にする中で大量虐殺をおこなっているが、EU当局は見て見ぬふりをして資金を送り続けている。「西側諸国が過激派と手を組むたびに、暴力や難民、テロが増えてきたのです」とリバル・アル・アサド氏は指摘した。
これらすべてはEU当局の封鎖的な内部者らにとってニュースとなるだろう。そこでは欧州議会の決議案が歓迎されている。
暫定大統領アル・シャーラ氏は、シリアにおける宗教や政治、文化の多様性を認め、暫定政権が現時点ではまだこの多様性を反映していないことに留意しつつ、国の統一に向けて取り組むことを誓った…
これも真実でない、としたら、滑稽なことになるだろう。
この危機で最も皮肉な当事者の一人が、国連のアントニオ・グテーレス事務総長だ。元アルカイダ構成員でHTSの指導者層であるアブ・モハメド・アル・ジャウラーニー氏と会談してからわずか1週間後、グテーレス事務総長は国連女性の地位委員会に出席し、家父長制の抑圧について演説した。「女性の権利は危機に瀕しています。家父長制の毒が戻ってきて、勢いを増しています」と彼は明言したが、数日前の訪問で正当化したイスラム主義者による残虐行為については触れなかった。
一方、欧州の資金はシリアに流れ込み続けている。 2017年以来、EU当局はシリアに5億ユーロ以上を割り当てており、そのうち1億ユーロ以上はドイツからのものである。そして3月17日、ダマスカスの暫定政府は、この地域における欧州の利益を確保するために、さらに数百万ユーロ規模の資金調達を確保する可能性がある。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年3月26日)「EUはシリアの元大統領アサドを「市民を殺した」と非難したが、現政権の虐殺は無視」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-3096.html
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また英文原稿はこちらです⇒Brussels Welcomes Syrian Terrorists Despite Massacre of Civilians
出典:Strategic Culture Foundation 編集部論説 2025年3月13日
https://strategic-culture.su/news/2025/03/13/brussels-welcomes-syrian-terrorists-despite-massacre-of-civilians/