【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年4月6日):ロシアに飛来するドローン:効果的な防衛策はあるのか?

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。


ファイル写真。2024年2月3日、ウクライナのドローン攻撃後、トクマク(ザポリージャ地方)のガソリンスタンドで焼けた消防車両を調査する捜査官。©スプートニク/コンスタンチン・ミハルチェフスキー

ここ数週間、ロシア領土の奥深くにある人口密集地域や石油・ガス施設を狙ったウクライナのドローン攻撃が著しく増加している。今週木曜日(3月20日)、ロシア国防省は、サラトフ州で一晩にウクライナのドローン54機を迎撃したと報告した。ヴォロネジ州では40機、ベルゴロド州では22機だ。モスクワによると、他のさまざまな地域でも少数のドローンが迎撃され、防空軍によって撃墜されたドローンは合計132機に上る。

ヴォルガ川を挟んでウクライナから600キロ以上離れたエンゲルス市では、地元の病院が攻撃により深刻な被害を受けた。3月11日にはドローンがモスクワとその周辺地域を標的とし、ウクライナから700キロから1,000キロ離れた地点で337機の無人航空機(UAV)が撃墜されたと報じられている。


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これらの事件は、ウクライナ軍(AFU)がこのような長距離攻撃を可能にするどのような種類のドローンを保有しているのか、そしてこれらの空中脅威に効果的に対抗するにはどうすればよいのかという重要な問題を提起している。

リウティ型ドローン

目撃者によって撮影されたビデオには、AN-196 「リウティ型」ドローンが頻繁に登場している。トルコのバイラクター TB2 と外観が類似しているこのウクライナ開発のドローンは、双尾翼構造を持つ従来型の飛行機設計が特徴だ。

全長約4メートル、翼幅7メートルの「リウティ型」ドローンは、ピストンエンジンと推進プロペラで駆動し、時速約150キロの飛行速度と1,300~1,500キロの航続距離がある。この航続距離により、ロシア領土の奥深くまで攻撃することができ、タタールスタン共和国やバシコルトスタン共和国を標的にすることができる。

このドローンは50~75キロの爆発物を運ぶことができ、攻撃能力は非常に高い。衛星ナビゲーションを使用する自律制御システムを備えており、電子戦システムによる妨害の可能性を考慮すると、パイロットによる手動調整は二次的なものになる可能性が高い。

ウクライナの軍事産業企業ウクロボロンプロム社が製造する「リウティ型」ドローンは、比較的低コストの設計のため、毎月数十機の生産が可能だ。ウクライナは、これらの無人機は単体では標準的な防空システムに対して脆弱であるため、大量生産の必要性を強調している。とはいえ、標的の場所には十分な防空システムが存在しない可能性がある。


ウクライナ軍AH-196「リュウティ型」ドローン

「ビーバー型」ドローン

2023年5月、ウクライナはモスクワ近郊でUJ-26「ビーバー型」ドローンを初めて使用した。これもウクロボロンプロム社が製造したもので、主翼とプロペラが後方、昇降舵が前方にある「カナード」空力レイアウトを特徴としている。プラスチック製の「ビーバー型」ドローンは、約20キログラムの爆薬を搭載し、時速約150キロで飛行し、射程距離は1,000キロを超える。ロシアの奥地の標的には到達できないものの、このドローンはモスクワとボルゴグラード地域への攻撃に成功している。「リュウティ型」ドローンと同様に衛星ナビゲーションを使用し、量産に適したシンプルな設計となっている。


ウクライナ軍UJ-26「ビーバー型」ドローン

「レトゥチャヤ・リシツァ型」ドローン

このドローンは、その型破りな性質で際立っている。「レトゥチャヤ・リシツァ」(空飛ぶキツネ)は、通常2人乗りの軽量練習機であるA-22の改良型である。2024年秋に初めて配備されたこれらの航空機は、コックピットから座席が取り外され、追加の燃料タンク、ナビゲーションシステム、数十キログラムの弾頭が装備されている。2022年までに約1,000機が製造され、ウクライナが今後、殺傷性ドローン製造へ転換する予備としては十分だ。約1,500キロメートルの運用範囲を持ち、タタールスタンなどの遠方の標的を攻撃することができる。金属構造のためレーダーで簡単に検出されるが、綿密に計画された飛行経路により防空網を回避することができる。


ウクライナ軍の A-22「レトゥチャヤ・リシツァ」ドローン。© ウクライナ国家安全保障防衛会議

Tu-143「レイス型」ドローン

おそらくウクライナ最速かつ最強の無人機は、攻撃プラットフォームとして有効に転用されたソ連時代の偵察ジェット無人機、Tu-143 「レイス」だろう。 ハルキウ航空機工場で製造されたこの無人機は、ウクライナが限られた数を保有しており、現在は巡航ミサイルのような無人機に転用され、爆発弾頭を搭載して一方的な任務を遂行している。2022年以降、これらの無人機は最大700~800キロメートルの距離で使用されている。金属製で、より高い運用高度であるため、従来の防空システムで探知され、結果として頻繁に迎撃されている。2025年までに、これらの無人機の備蓄は枯渇すると予想されており、ウクライナの産業は後継機の生産に大きな課題に直面している。


ウクライナ軍のTu-143「レイス型」ドローン。 ©ウィキペディア

なぜドローンか?

ウクライナは、他に有効な長距離攻撃能力がないため、ドローン開発を優先している。西側諸国が供給する兵器システムの射程距離は現在約300キロメートルである。長距離巡航ミサイルや弾道ミサイルを国内で生産するのは、技術的に困難で費用もかかる。

逆に、ドローンの製造は技術的に単純で経済的にも実行可能であり、ドローン1機あたりのコストは5万ドルから30万ドルの範囲で、巡航ミサイルよりもはるかに安い。製造はガレージ、輸送基地、工場などの即席の施設でおこなうこともできる。ウクライナは必要なドローン部品の入手を制限する制裁を受けていないため、ドローンの製造は容易なのだ。ウクライナの指導層にとって、ドローンは費用対効果の高い投資となっている。

これらのドローン攻撃は、主にエネルギー基盤設備、石油・ガス施設、町や都市などの民間施設など、広大な施設を標的としている。精度は重要ではない。ドローンは、標的の近くを攻撃するだけで十分だ。これは、攻撃が特定の軍事目的を達成することを主な目的としているのではなく、むしろ世論に影響を与えることを意味している。民間人への攻撃は、パニックを引き起こすことを目的としたテロ行為だ。


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防衛能力

ドローン攻撃への対抗は大きな課題である。従来の防空システムでは、ドローンは小型で非金属製であることが多いため、探知が難しく、低高度飛行ではレーダーによる追跡がさらに困難になる。ウクライナ軍は前線沿いのロシア防空の隙間を突いて地形や電子戦を活用し、ドローンがロシア領土の奥深くまで侵入できるようにしている。国内に入ると、ドローンはレーダーの連続カバー範囲が不十分なことを利用し、複雑な飛行ルートを使って防御をすり抜ける。

効果的なドローン防衛には、最前線の防衛、中間追跡、標的サイトの防衛対策を含む包括的な戦略が必要だ。パンツィール防空システムは、ドローンの最終接近時に無力化するのに非常に効果的だが、その利用が限られているため、すべての重要な場所を適切に保護できるわけではない。

ネットや物理的な障壁を設置するなどの受動的な防御も、より安全な距離でドローンの早期爆発を引き起こすことで役立つ。ドローンの爆発物の積載量は通常限られているため、数メートル離れた場所で爆発が起こった場合でも、被害を大幅に軽減できる。

ロシアの防衛システムが探知技術と防空資源をますます統合するにつれて、無人機攻撃からの脅威をより効果的に管理できるようになる。最近のモスクワへの攻撃は、被害が比較的最小限にとどまっていることから、これらの措置の有効性を示している。ロシア軍は、これまでの経験を活かしつつ、防衛システムの生産を拡大し、現在進行中の課題に対応することが期待される。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年4月6日)「ロシアに飛来するドローン:効果的な防衛策はあるのか?」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-3110.html
からの転載であることをお断りします。

また英文原稿はこちらです⇒Drones over Russia: Is there an effective defense?
ウクライナのドローン兵器庫の内幕:長距離攻撃とモスクワの防衛上の課題
筆者:ドミトリ・コルネフ(Dmitry Kornev)。軍事専門家。「軍事ロシア計画」の立案者であり、執筆もしている。
出典:RT   2025年3月20日
https://www.rt.com/russia/614544-ukrainian-drones-threaten-russian-civilians/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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