【連載】植草一秀の「知られざる真実」

植草一秀【連載】知られざる真実/2025年4月11日 (金) 大統領の玩具と化す世界経済

植草一秀

4月8日付ブログ記事
「トランプ金融波乱のゆくえ」
https://x.gd/WAd7g

メルマガ記事
「トランプ関税政策の深謀遠慮」
https://foomii.com/00050

にこう書いた。

「トランプ関税始動を背景に海外諸国が輸入関税の引き下げに動き、その動きを確認してトランプ大統領が、今回設定した関税率の引き下げを表明することになるかも知れない。

金融市場はトランプ関税始動に伴う世界経済悪化を警戒し、株価下落で反応しているが、今後のトランプ言動によって逆の市場反応が表面化する可能性は低くないと考えられる。」

予想通り、トランプは動いた。

〈朝令暮改〉、好意的に表現すれば〈君子豹変〉。

トランプは来年秋の中間選挙を睨んでいる。

この選挙で大敗すれば大統領任期後半は完全にレームダック化する。

トランプは株価動向を気にしている。

世界の株価下落連鎖が加速する現実を見て路線修正を迫られた。

トランプ大統領は報復措置を講じていない日本を含む一部の国や地域に対する上乗せ関税を一時停止すると表明。

これを受けて内外株価は急反発した。

日経平均株価は歴代2位の上げ幅を記録した。

トランプ大統領は4月4日にSNSで関税政策は決して変わらないと宣言したばかり。

しかし、いつでもくるくる変わるのが〈トランプ流〉。

〈絶対に代わらない政策〉は〈いつでも変わり得る政策〉と理解しておくことが肝要だ。

しかし、〈トランプ流〉には危うさがつきまとう。

関税政策についてはナバロ氏の意向が背景にあると見られるが、イーロン・マスク氏は高関税政策に反対している。

高関税政策で株価が急落し、関税の一部凍結を発表したら株価が猛反発した市場の反応をトランプは観察していると見られる。

マスクの主張の方が正しいと認識を改める可能性がある。

トランプは経済政策に明るくない。

経済政策運営は〈人選がすべて〉である。

大統領自身が経済政策の専門家である必要はない。

もっとも優れた人物を要所に配置することが大統領の責務。

トランプは試行錯誤だが、その実験を生身の経済でやられてはたまらない。

株価暴落は大きな金融破たんの原因になる。

金融破たんが連鎖すれば恐慌に発展する。

〈トランプ流〉は大惨事と背中合わせである。

世界経済は相互依存。

トランプは報復関税を提示しない国の関税発動を90日間凍結したが、一律10%の基本税率は継続。

自動車や鉄鋼などへの25%の追加関税も維持している。

さらに、中国からの輸入品に対して賦課する関税が現在、合計で少なくとも145%に達しているとホワイトハウスが明らかにした。

中途半端な90日間凍結では霧は晴れない。

10日のNY市場では当初、ダウが大幅に反落した。

中国に追い付かれ、追い抜かれる米国。

米国は現実を受け入れられない。

覇権国家と台頭する新興国家が戦争不可避な状態にまで衝突する現象を〈トゥキュディデスの罠〉と表現する。

米国の政治学者グレアム・アリソンによる造語。

世界経済は相互依存。

相互理解・相互尊重・相互信頼の関係を築くことが何よりも大事だが、正反対の行動が取られている。

トランプは最終的に失脚するリスクが高い。

メディアの問題について、高橋清隆氏、真田信秋氏と鼎談した。

動画が公開されたので、ぜひご高覧賜りたい。

「ニュース研究[番外編]:メディアの正体をめぐる鼎談(後)」
https://www.youtube.com/watch?v=nDLuBS4o4dY

「ニュース研究[番外編]:メディアの正体をめぐる鼎談(前)」
https://www.youtube.com/watch?v=PcK60UWwI2M

※なお、この記事は下記からの転載であることをお断りします。
植草一秀の『知られざる真実』2025年4月11日 (金)「大統領の玩具と化す世界経済」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2025/04/post-3aef11.html

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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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