【連載】安斎育郎のウクライナ情報

4月11日のウクライナ情報

安斎育郎

4月11日のウクライナ情報
安斎育郎

❶誰も戦争を止めたくない:なぜ?(2025年3月30日)
今日は、ジッダでの停戦交渉をきっかけに生じた新たな状況について議論します。なぜゼレンスキーはトランプ大統領にはあることを言い、マクロン、スタマーらには別のことを言うのでしょうか。なぜトランプ大統領はゼレンスキーに対する要求を強めたのでしょうか。なぜEUと英国は停戦交渉をぶち壊したいのでしょうか。ゼレンスキーはトランプ大統領の要求を受け入れるのでしょうか。そして最後に、ロシアはキエフに進軍するのでしょうか。これらは、今日ここで検討される質問の一部です。
ブロフキン博士は、現在は引退したロシアのアメリカ人歴史家で、ハーバード大学でソビエト史の准教授を務めました。彼はロシアの歴史と政治に関する7冊の本の著者です。彼の最新の本「ウラジミール・レーニンからウラジミール・プーチンまで。アイデンティティを求めるロシア」(Routledge:ロンドン2023)は、Routledge.com、Amazon、Barnes and Nobleで入手できます。
https://youtu.be/AdNnM3WGjxo
https://www.youtube.com/watch?v=AdNnM3WGjxo

❷トランプ関税はウクライナ支援や西側諸国にどのような打撃を与えるのか?(2025年4月6日)
トランプ米大統領の貿易戦争は世界のサプライチェーンを混乱させ、F35戦闘機などの欧州との主要プロジェクトを頓挫させるおそれがある。また、ウクライナへの軍事支援にも影響を及ぼす。スプートニクが専門家たちの見解をまとめた。
ウクライナへの支援が増える可能性は少ない。「貿易戦争は欧州および米国でインフレの加速を引き起こす可能性が高い」からだ。そして、米国製兵器の価格は値上がりする。スウェーデンの政治家ミカエル・ウォルターソン氏はこう考えている。
米国と英国の造船業は鉄鋼価格と人件費の高騰で打撃を受けるだろう。米国防総省の元分析官カレン・クウィアトコウスキー氏はこのように警告している。
またクウィアトコウスキー氏によると、価格上昇によってF35の納入はさらに遅れる可能性がある。機体の大型部品は英国で製造されており、これらの部品には今や10%の関税がかけられたほか、台湾から輸入される電子機器などの価格は30%以上上昇すると、同氏は指摘した。
F35プロジェクトのコストが15~20%増加すると、同プロジェクトは頓挫するおそれがある。欧州はただでさえ政治的理由からF35プロジェクトに懐疑的であるため、関税は状況をさらに悪化させるだけだと、クウィアトフスキ氏は結論づけている。
https://sputniknews.jp/20250406/19736798.html

❸露米協議の第2ラウンド 実施が確定(2025年4月9日)
ロシア外務省の発表によれば、協議は露米の外交活動正常化を目指したもので、近日中に行われる。
ロシア代表団の団長はアレクサンドル・ダルチエフ駐米ロシア大使が、米国側の団長はソナタ・コールター国務長官次席補佐官が務める。その他は露米の各外務省の代表らが参加する。
ロシア外務省は「両国の外交官の活動に支障を及ぼしている、多々の技術的な障壁を取り除くために現在、継続的に行われている実務作業が続けられる」と発表している。
https://sputniknews.jp/20250409/2-19749233.html

❹ ウクライナは「信頼できないエネルギー経由国」「NATO加盟を歓迎しない国」 実はロシアに味方していたドイツ歴代政権の「地政学的悪夢」(東洋経済、2025年4月9日)
2016年のブレグジット、2022年のロシアによるウクライナ侵攻、さらにはトランプの2度にわたる大統領選勝利の原因は、実は同じものではないだろうか。「エネルギー、グローバル金融、民主主義」という3つの歴史から、政治経済構造の亀裂を分析した新刊『秩序崩壊 21世紀という困難な時代』(ヘレン・トンプソン著)が、このほど上梓された。同書に収録された「2022年以後――戦争」を転載する第1回。
膨張主義的な戦争が生むものとは
■クレムリンの動きに激怒したショルツ
2022年2月24日未明、ロシア軍がウクライナに侵攻した。その日のうちにロシア海軍はウクライナの黒海海域にあるズミイヌイ島を占領した。この一報が伝わると、原油価格とヨーロッパ向け天然ガス価格が急騰した。
それはヨーロッパを戦争の世界に引きずり込んだ。ヨーロッパの平和を歴史的条件として再統一を果たしたドイツでは、すでに絶望的な数週間が過ぎていた。アメリカの諜報機関は2021年秋以降、ロシアの攻撃が近いと警告していたが、ドイツ政府は外交による解決という希望にしがみついていた。
2月7日、わずか8週間前に首相に就任したばかりのオラフ・ショルツはワシントンDCにいた。そこで彼は、ジョー・バイデンがはっきりとこう述べるのを聞いた。もしロシアが侵攻してきたら「われわれは(ノルドストリーム2を)終わらせる」と。
その1週間後、ショルツはキーウを訪れ、ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領と会談し、分離独立を主張するドネツク、ルハンスク両地域について2015年に合意されたミンスク2和平協定(未履行)を受け入れるよう迫った。
翌日、ショルツはウラジーミル・プーチンと会談し、その直後に「平和のために働くなんぞ、われわれにとってクソみたいな義務だ」「ロシア抜きで永続的な安全保障なんて達成できない」とツイートした。そうしたことにはお構いなく、プーチンはドネツクとルハンスクを独立国家として承認した。
報道によると、クレムリンの動きに激怒したショルツは、ノルドストリーム2の稼働がドイツの天然ガス安全保障と両立するかどうかの再評価を行うよう要請した。
ロシアのウクライナ侵攻を境に、ドイツにとってのリスクは、まだ開通していない1本のパイプラインから、半世紀にわたって取り組んできたロシアとの融和(rapprochement)へと移った。
侵攻から72時間以内に、ショルツはドイツの兵器をウクライナに送ること、軍事費を引き上げるために1000億ユーロの基金を設立すること、さらに海上輸送される液化天然ガス(LNG)の受け入れによってロシアへのエネルギー依存を解消することなどを約束した。
ショルツはドイツ連邦議会で演説し、1975年の「ヘルシンキ最終法〔=ヘルシンキ合意〕以来およそ半世紀にわたって続いてきたヨーロッパの安全保障秩序がプーチンによって破壊されたのです」とし、これによってすべてが変わったと述べた。「私たちは時代の転換期(Zeitenwende)を生きています〔中略〕すなわち、これからの世界はもはやこれまでの世界とは同じではないということです」。
■ヨーロッパの歴史が破壊された理由
ドイツの首相は部分的には正しかった。しかし同時に、2022年2月にヨーロッパの歴史が破壊された理由について述べたショルツの主張は歪んでいる。
自明のことではあるが、ロシアの〔対ウクライナ〕戦争以前のヨーロッパの安全保障秩序は、1970年代半ばのそれとは似ても似つかぬものであった。かつてソ連の西部であった場所に、新たに6つのヨーロッパの国が出現したのである。
平和な時代に独立した歴史を持たなかったウクライナが1991年にヨーロッパで最大の領土を持つ国家として登場したことは、特別な変化を意味した。新しく生まれた国民国家ウクライナは、地政学的に常に不安定な状態にあった。少なくとも2009年以降、プーチンは新生国家ウクライナが存在することの正当性を公然と否定していた。
1990年代にモスクワと結んだ条約で、ウクライナはクリミアにおけるロシアの軍事的権利を譲り受けた。
その後、2014年にウクライナはクリミア半島を失い、同国の南東部においてロシアに支援された分離独立派との戦争に突入した。
ロシアの侵攻が過去から現在を断ち切るものであったとすれば、その衝撃は、プーチンが独立国家としてのウクライナの存続可能性を破壊するために負わせようとした被害の激しさであり、それを増幅させたのは、キーウの権力を掌握しようとするプーチンの大それた野心と、それを成し遂げるにはまったく足りない軍事的動員との隔たりであった。
ドイツに関して言えば、ロシアとのエネルギー貿易上、ベルリンは国家主権を求めるウクライナの闘争に長期にわたって巻き込まれてきた。
2005年以来、ドイツの歴代政権は、ロシアとウクライナの紛争が引き起こすエネルギー安全保障の問題から逃れるためにかなりの政治的資本を投入してきた。
加えて、ウクライナを「信頼できないエネルギー経由国」あるいは「NATO加盟を歓迎しない国」として扱うことで、ロシアに味方していたのである。
しかし2009年以降、ウクライナをEUの準加盟国とすることを餌に、同国のパイプラインを近代化させようとしたが、ほとんど無駄骨に終わった。
クリミア危機とドンバス戦争が始まった後、ドイツが直面した問題は、ウクライナの独立維持よりも自国のエネルギー安全保障を優先したせいでワシントンの反感を買う一方、ミンスク2〔訳注 ドンバス戦争の停戦を目的とした合意。2015年2月11日、ウクライナ、ロシア、フランス、ドイツの首脳による夜を徹した交渉が行われ、ドンバス地方の自治権拡大などで合意〕の交渉に長時間を費やしながら、ロシアとウクライナの関係を調停できなかったことであった。
2021年5月、バイデンがノルドストリーム2へのアメリカの制裁を解除したとき、アンゲラ・メルケルは、ドイツのエネルギー安全保障に関してドイツ自身が決定する権利を主張し、それを押し通したかのように思われた。
しかし、その4カ月後、ウクライナ国境でロシア軍の本格的な増強が始まると、バイデンは、2021年9月の総選挙後に次期首相となる見通しのショルツから、もしロシアの侵攻があればノルドストリーム2を停止するという言質を取ることができた。
その直後、ドイツのエネルギー規制当局は、このプロジェクトの認定手続きを一時的に停止した。ショルツが侵攻前に行ったノルドストリーム2の死の儀式は、新しいヨーロッパのためではなく、ロシアがさらに侵攻を続けるか、ウクライナが2014年に失った領土の奪還を試みるかのいずれかの可能性がかなり濃厚となった世界において、バルト海海底を通る第2のパイプラインがいつ頓挫してもおかしくないなかで建設されたという現実を物語っていた。
■「時代の転換期」の物語
しかし、1991年以降のヨーロッパの秩序において明らかとなったウクライナをめぐる断層がいかなるものであれ、「時代の転換期」の物語には何かしら琴線に触れるものがある。
膨張主義的な戦争は必然的に深刻な断絶を生むが、この戦争も例外ではなかった。自国の独立を守ろうとしている国に世界を支配する大国が多額の軍事援助をすでに行っているところへ、核兵器を保有する国が国境を越えて隣国の領土を征服するという図式であった。
その結果、紛争は日ごとにエスカレートし、より大きな戦争に発展する危険性をはらんでいた。
非軍事的な戦争手段も様変わりした。アメリカなどの対ロシア金融制裁は、ロシアを主要な国際決済システムから切り離し、ロシアの中央銀行を孤立させた。
サウジアラビアがヨム・キプール戦争に際してイスラエルの同盟国への原油販売を禁止したように、ロシアもウクライナ支援国への天然ガス供給を停止することが予想されたが、2022年にエネルギー純輸入諸国が世界の主要エネルギー輸出国に科したような制裁は過去に例がなかった。
2022年9月に起こったノルドストリーム1&2のパイプライン破壊行為は、もう一つの起点と言える。当初憶測が流れたように、この爆発がロシアのインフラにたいするロシアの攻撃であったとすれば、その意図はあまりにもニヒリスティックであり、プーチンがロシアの力を誇示するためにロシアの国益概念を放棄したことになってしまう。
他方、仮にもバイデン政権がパイプラインの破壊を許可したとか、引き起こしたというのであれば、それはヨーロッパのNATO同盟諸国をロシアから引き離す戦略を強引に推し進めようとするアメリカの新たな意思を示すものと言えた。
したがって、ドイツにとって、ノルドストリーム1の爆発は、資本と技術をロシアの資源と交換することで自国の対外的なエネルギー依存を管理し、問題の貿易インフラをアメリカの非難から守ろうとしたスエズ危機以後の時代が象徴的なかたちで屈辱的な最終結末を迎えたことを意味した。
2022年に時代の変化を示す分岐点があるとすれば、建設当時は大西洋の向こう側からほとんど批判されなかったパイプラインが物理的に破壊されたこの瞬間が、おそらくそれであろう。
■破壊的な力を持つエネルギー戦争
ノルドストリームの爆発は、ロシアの侵攻という点からみれば、血こそ流れなかったものの破壊的な力を持つエネルギー戦争の一部であった 〔訳注 その後、ノルドストリーム爆破事件はウクライナ側の犯行によるものとの報道がなされている『ニューヨーク・タイムズ』紙の2023年3月7日付記事(Intelligence Suggests Pro-Ukrainian Group Sabotaged Pipelines, U.S. Officials Say)を含む欧米の主要メディアは、ノルドストリームの爆破が「親ウクライナグループの犯行」によるものであると報じた。
また、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の2024年8月14日付スクープ記事(A Drunken Evening, a Rented Yacht: The Real Story of the Nord Stream Pipeline Sabotage)は、ノルドストリーム爆破は、民間実業家が資金を出し、ウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官(当時、現在は駐イギリス大使)が作戦を指揮したと報じている。ゼレンスキー大統領は、一度は計画を承認したものの、CIAに計画が露見し、アメリカから作戦中止要請を受けて承認を撤回したものの、間に合わなかったとされる〕。
この時点で、ヨーロッパ各国政府は、エネルギー供給が制限された状況のもとで物質的になしうることと政治的に求められることとが一瞬にしてぶつかることに気づいたのである。
侵攻から12日後〔訳注 2022年3月8日〕、欧州委員会は、ロシア産天然ガスへの依存度を年内に3分の2まで引き下げ、「2030年までには」ロシアとの化石燃料エネルギー貿易をすべて終了させるという提案を発表した。
しかしながら、EUは翌4月までロシアのエネルギー輸出(石炭を除く)にたいしていかなる制裁措置も科さなかった。戦争が始まって最初の数カ月間、ドイツはノルドストリーム1を含むパイプラインを通じてロシア産天然ガスの供給を受けつづけた。
2022年6月、ドイツなど一部ヨーロッパ諸国へのバルト海経由の天然ガス供給量を徹底的に削減し、当面の天然ガス戦争で最初に大きな動きをみせたのは、ガスプロムであった。同社はその時点では、高い収益をあげていたが、その後は赤字に転落する。この非常事態において、短期的な対抗策として唯一可能であったのは、エネルギー消費量を削減することであった。
しかし、EUは2022年7月、今後9カ月間で天然ガス使用量を15%削減することを決定した際、ドイツの脆弱性が他のすべてのEU加盟国と同じではないという事実をほとんど考慮しないまま、EU共同で犠牲を払うことに合意した。
ハンガリー政府はこの共同計画に拒否権こそ行使しなかったものの、その後すぐにガスプロムと新たな供給契約を結ぶ交渉に入った。その一方で、ヴィクトール・オルバンは欧州委員会にたいし、備蓄が十分な国からそうでない国へ天然ガスを再分配することは容認できないと述べた。
■一変したヨーロッパの地政学的風景
ロシア以外から海上輸送で天然ガスの供給を受けることが急務となったことで、ヨーロッパの地政学的風景は一変した。
シベリアから西方へ、ヨーロッパ向けに天然ガスが供給されないなか、大西洋に面したLNG輸入港を持つ国々(イギリス、フランス、スペイン、ポルトガル)は、東の隣国諸国に再輸出を行う国となった。
イベリア半島に到着した天然ガスは、そこでまた新たなパイプライン問題を引き起こし、ヨーロッパ大陸の中期的なエネルギーの未来をめぐって深刻な立場の隔たりが表面化した。ドイツ、スペイン、ポルトガルは、フランスの反対を押して、ピレネー山脈経由で天然ガスを供給する以前のプロジェクトの復活を提唱した。
こうした圧力がかかるなか、エマニュエル・マクロンは2022年10月、バルセロナ・マルセイユ間に天然ガスと水素を輸送する代替的な海底パイプライン計画を推進することに同意した。
しかし、フランス、スペイン両政府は、天然ガスが含まれるとEUの資金援助が受けられなくなることから、すぐにプロジェクトから天然ガスを除外した。
より差し迫った問題として、アルジェリアからの新たな供給は地政学的緊張をもたらした。2020年にアメリカが西サハラにたいするモロッコの主権を承認すると、アルジェリアとモロッコの国交が断絶した。
2021年11月、アルジェリアはモロッコ領内を通るパイプラインを通じてスペインに天然ガスを送ることを停止していた。ロシアの侵攻から1カ月後、スペインがモロッコ側につくと、アルジェリアは海底パイプラインを通じたスペインへの天然ガス輸送を停止した。
対照的に、イタリア政府はロシアからの天然ガス供給の代替として、アルジェリアからの供給を優先させることに成功した。
それにもかかわらず、供給上の制約から、ノルドストリームの爆発事故後もロシアとのエネルギー貿易は継続された。EUはロシア産ウランには制裁を科さず、モスクワもウラン輸出を禁止しなかった。
一方、出荷されたロシアの原油は、インドから石油精製品としてヨーロッパに到着した。フランスとスペインの需要に牽引され、2022年1〜9月のロシアのヨーロッパ向けLNG輸出量は、前年同期比で40%以上増加した。その一部は、ノルドストリームの入り口地点に近いバルト海沿岸にあるロシアの新しいLNG港からのものである。
■今も続く「スエズ危機」
ノルドストリーム・パイプラインの破壊がスエズ危機以後のエネルギー時代に終止符を打ったとしても、地政学的にはスエズ危機の影がまだ尾を引いていた。
当時、西ヨーロッパの指導者たちは、ソ連とアルジェリアを中東からの輸入に代わる原油供給源にできると考え、さらに原子力によるエネルギー革命によって、最終的には外国産原油への依存を完全になくすことができると期待していた。
ソ連とのエネルギー供給関係は、中東産原油の必要性を排除することなく成功したが、他の2つの野心〔すなわち、アルジェリアからの原油供給と原子力発電〕は、アルジェリアの独立、石油ナショナリズム、国外からのウラン調達の必要性など原子力発電のコストと限界を前に挫折した。
現在、ヨーロッパ各国政府は、1956年以降の唯一の成果〔すなわち、ソ連からのエネルギー供給〕に代わる短期的な対応策として炭化水素を模索する一方で、地域・国家レベルでのエネルギー自給という別のヴィジョンも追求している。いずれの場合も、アフリカ資源へのアクセスがきわめて重要となる。
しかしながら、アフリカ諸国自身が自国のエネルギー消費を拡大させたいと切望しており、ヨーロッパ諸国はアフリカの金属資源をめぐる中国との競争にも直面していることから、ただ資本と技術の提供だけでは、かつてソ連を相手にして成功したように、アフリカ諸国を振り向かせる決定的な誘因とはなりそうもない。
スエズ危機で露呈したNATO内の権力的ヒエラルヒーも〔訳注 スエズ危機に際して英仏はアメリカの圧力に屈して撤退を余儀なくされた〕、ヨーロッパにとっては地政学的悪夢でありつづけている。
ロシアによる侵攻の瞬間から、ヨーロッパ諸国の対応の方向性を決めたのはワシントンの反応であった。当初はウクライナの前途を悲観視していたバイデン政権であったが、ロシアが航空優勢(air superiority)の確立に失敗したことから、その見方を修正したようである。
2022年3月下旬から、ロシアに戦略的打撃を加えるチャンスと判断したアメリカは、ウクライナへのより大規模な武器移転と経済援助を命じた。
このアメリカの動きは、特にドイツに強い衝撃を与えた。戦争はすぐに終わるとワシントンが想定していた段階でウクライナへの武器支援を決定したショルツは、戦争が長期化すると、さらなる支援の実施を繰り返し求められたが、キーウの戦争目的に影響を与えることはできなかった。
■トルコの権利を守ることがロシアの重大関心事
もしアメリカ政府がクリミアにたいする完全な主権を求めて戦うウクライナを今後も支援しようとするのであれば、1780年代からほぼ継続的にロシア黒海艦隊の寄港地となってきたセヴァストポリ港をロシアが保持しつづけるかどうかが鍵となる。
より一般的には、1936年のモントルー条約以来、黒海の航行権に関しては現状維持が続いている。この条約は、戦争中にダーダネルス海峡とボスポラス海峡へのアクセスを管理し、いかなる状況が戦争状態にあたるかを決定する唯一の権利をトルコに与えている。
この長年続いてきた国際法は、第2章で説明したとおり、トルコがNATOに加盟した理由でもあるが、中東におけるロシアの動きを制約する一方で、第2次世界大戦や冷戦期に明らかになったように、ロシアを南方からの海上攻撃から守る役割を果たしている。
いまや、ウクライナの長期的な防衛を制約することによって、モントルー条約を守ること、とりわけ、いかなる状況が戦争状態にあたるかを決定するトルコの権利を守ることが、ロシアの重大な関心事となっている。
(訳:寺下滝郎)
※安斎注:ロシアをウクライナ戦争に引きずり込んだのは米英ではないだろうか?
https://news.yahoo.co.jp/articles/985747f04d9277f321cea31d98b6168fc81a74a8/images/000

❺中国、バンス氏に猛反発 「中国の農民」についてのコメント受け(CNN,2025年4月9日)
香港(CNN) 中国で8日、米国のバンス副大統領に対する痛烈な批判が噴出した。同氏がインタビューで発した「中国の農民」についてのコメントが引き金となり、ネット上で怒りや嘲笑が拡散した。
3日にFOXニュースのインタビューに答えたバンス氏は、市場を震撼(しんかん)させているトランプ大統領の関税政策を擁護する一方、「グローバリスト経済」を強く非難した。
「グローバリスト経済が米国に何をもたらしたか? その答えは根本的に二つの原則に基づく。巨額の負債を抱えて、他国が我が国のために作った製品を購入するということだ」。バンス氏はそう述べた。
「もう少し明確に言えば、我が国は中国の農民から金を借り、その中国の農民が製造した製品を買っている」
バンス氏のこのコメントについて8日の定例記者会見で質問された中国外務省の報道官は、「この副大統領からこれほど無知で無礼な発言を聞くのは驚きであると同時に嘆かわしい」と述べた。
CNNはバンス氏の事務所にコメントを求めている。
今週に入り、バンス氏のインタビュー映像は中国のネット上に流れ、強い反発を引き起こした。中国の工場には産業ロボットがずらりと並び、都市部では国産の電気自動車(EV)が走行。農村部とも全国に張り巡らされた高速鉄道網でつながる。
「米国の田舎から出てきた本物の『農民』には、物事の全体像が見えていないようだ」。中国共産党機関紙「環球時報」の元編集長で発言に影響力のある胡錫進氏は中国のSNS「微博(ウェイボー)」でそう述べた。「中国に来て自分の目で確かめてほしいと、多くの人々が求めている」
バンス氏の発言に関するハッシュタグは7日夜、ウェイボーのトレンドで1位になった。8日午後までの閲覧件数は1億4000万件となっている。
あるユーザーは、「我々は農民かもしれないが、世界一の高速鉄道システムと最強の流通能力を持っている。AI(人工知能)や自動運転、ドローン(無人機)の技術でも他国に先んじる。農民としては相当見事なものじゃないか?」と書き込んだ。
別のユーザーは、バンス氏自身が米国の労働者階級出身であり、貧しい地域で育ったことに言及。その事実を踏まえれば今回の同氏のコメントには皮肉を感じるとした。
バンス氏は2016年に出版した回想録「ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち」で、幼少期の貧困や虐待、母親の薬物中毒などを描いている。同氏が一時期を過ごした米国東部のアパラチア地域については、富裕なエリート層に忘れられた僻地(へきち)とする感慨を綴(つづ)っている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6fcf94bf68eebe35ab75e89627b92e5062ed004a/images/000

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安斎育郎 安斎育郎

1940年、東京生まれ。1944~49年、福島県で疎開生活。東大工学部原子力工学科第1期生。工学博士。東京大学医学部助手、東京医科大学客員助教授を経て、1986年、立命館大学経済学部教授、88年国際関係学部教授。1995年、同大学国際平和ミュージアム館長。2008年より、立命館大学国際平和ミュージアム・終身名誉館長。現在、立命館大学名誉教授。専門は放射線防護学、平和学。2011年、定年とともに、「安斎科学・平和事務所」(Anzai Science & Peace Office, ASAP)を立ち上げ、以来、2022年4月までに福島原発事故について99回の調査・相談・学習活動。International Network of Museums for Peace(平和のための博物館国相ネットワーク)のジェネラル・コ^ディ ネータを務めた後、現在は、名誉ジェネラル・コーディネータ。日本の「平和のための博物館市民ネットワーク」代表。日本平和学会・理事。ノーモアヒロシマ・ナガサキ記憶遺産を継承する会・副代表。2021年3月11日、福島県双葉郡浪江町の古刹・宝鏡寺境内に第30世住職・早川篤雄氏と連名で「原発悔恨・伝言の碑」を建立するとともに、隣接して、平和博物館「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館」を開設。マジックを趣味とし、東大時代は奇術愛好会第3代会長。「国境なき手品師団」(Magicians without Borders)名誉会員。Japan Skeptics(超自然現象を科学的・批判的に究明する会)会長を務め、現在名誉会員。NHK『だます心だまされる心」(全8回)、『日曜美術館』(だまし絵)、日本テレビ『世界一受けたい授業』などに出演。2003年、ベトナム政府より「文化情報事業功労者記章」受章。2011年、「第22回久保医療文化賞」、韓国ノグンリ国際平和財団「第4回人権賞」、2013年、日本平和学会「第4回平和賞」、2021年、ウィーン・ユネスコ・クラブ「地球市民賞」などを受賞。著書は『人はなぜ騙されるのか』(朝日新聞)、『だます心だまされる心』(岩波書店)、『からだのなかの放射能』(合同出版)、『語りつごうヒロシマ・ナガサキ』(新日本出版、全5巻)など100数十点あるが、最近著に『核なき時代を生きる君たちへ━核不拡散条約50年と核兵器禁止条約』(2021年3月1日)、『私の反原発人生と「福島プロジェクト」の足跡』(2021年3月11日)、『戦争と科学者─知的探求心と非人道性の葛藤』(2022年4月1日、いずれも、かもがわ出版)など。

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