
【櫻井ジャーナル】2025.04.12XML: もつれた国際情勢をほぐせず、悪化させているトランプ米大統領
国際政治ソ連が消滅した後、アメリカの外交と軍事を支配するネオコンは世界制覇戦争を開始、世界はカオスの中へ引き摺り込まれていった。唯一の超大国になったアメリカは他国を考慮することなく勝手気ままに行動できると考えたようで、西側の有力メディアは侵略を煽るプロパガンダを繰り広げ始めた。そしてもつれた国際情勢をドナルド・トランプはほぐそうとしているようだが、事態は悪化している。
ネオコンが手始めに狙ったのはユーゴスラビア。この国を解体した上で支配しょうとしたのだが、そうした侵略を正当化するため、ニューズデーのロイ・ガットマンは16歳の女性3人がセルビア兵にレイプされたとする記事を書いた。1992年8月のことだ。
しかし、ガットマンはドイツのボンで支局長を務めていた人物で、バルカンに常駐しているわけではなく、現地を取材していない。彼はヤドランカ・シゲリなる人物から得た情報をそのまま書いたのだ。
シゲリはクロアチアの与党で民族主義の政党HDZ(クロアチア民主団)の副党首を務め、CIC(クロアチア情報センター)のザグレブ事務所の責任者でもあった。ガットマンに話した内容はプロパガンダの一環だったのである。
アレクサンドラ・スティグルマイアーやマーティン・レットマイアーなどの記者はガットマンの話が嘘だということを明らかにしたが、これはユーゴスラビアを制圧しようと計画している西側の支配者にとって都合が悪いために無視され、1993年にガットマンはピューリッツァー賞が贈られた。シゲリは人権問題のヒロインとなり、ジョージ・ソロスの影響下にある人権擁護団体HRWは彼女を主役にしたドキュメント映画を1996年に発表している。(Diana Johnstone, “Fools’ Crusade,” Monthly Review Press, 2002)
ガットマンに限らず、西側の有力メディアはユーゴスラビアを攻撃させようと必死になり、偽情報を撒き散らすが、1993年1月にアメリカ大統領となったビル・クリントンは戦争に消極的。そこでクリントンはスキャンダルで攻撃された。その中核にはマイケル・レディーンのようなシオニストがいたのだが、反クリントン工作のスポンサーはリチャード・メロン・スケイフというCIAと関係の深い富豪だった。
戦争に消極的なクリントンに不安を抱く人びとが西側の支配層にはいて、1993年9月には、ボスニアへの軍事介入を求める公開書簡がウォール・ストリート・ジャーナル紙に掲載される。そこに署名した人物には米英の有力者が名を連ねていた。
その人物とは、例えばイギリスのマーガレット・サッチャー元首相、アメリカのジョージ・シュルツ元国務長官、フランク・カールッチ元国防長官、ズビグネフ・ブレジンスキー元国家安全保障問題担当大統領補佐官、ポール・ニッツェ、ジョージ・ソロス、ジーン・カークパトリック、アルバート・ウールステッター、ポール・ウォルフォウィッツ、リチャード・パールだ。
当初、クリントン大統領は戦争に消極的なクリストファー・ウォーレンを国務長官に据えるが、圧力に屈したのか、第2期目の1997年1月にはチェコスロバキア出身で反ロシア感情の強い好戦派のマデリーン・オルブライトへ交代させた。オルブライトはコロンビア大学でポーランド出身のズビグネフ・ブレジンスキーから学んでいる。ちなみに、この国務長官人事を大統領に働きかけていたのはヒラリー・クリントン、つまり大統領の妻だと言われている。
オルブライトは1998年秋にユーゴスラビア空爆を支持すると表明、翌年の3月から6月にかけて実際に爆撃した。4月にはスロボダン・ミロシェビッチの自宅が、また5月には中国大使館も爆撃された。
中国大使館を空爆したのはB-2爆撃機で、目標を設定したのはCIA。アメリカ政府は「誤爆」だと弁明しているが、3機のミサイルが別々の方向から大使館の主要部分に直撃していることもあり、中国側は「計画的な爆撃」だと主張している。
また、オルブライトと同じようにヒラリーと親しいビクトリア・ヌランドは1993年から1996年までストローブ・タルボット国務副長官の首席補佐官を務め、その後旧ソ連問題担当副長官に就任した。ヌランドは2014年2月のウクライナにおけるクーデターでは国務次官補として現地に入ってネオ・ナチを指揮していたが、その前から旧ソ連圏に対する侵略に参加していたわけである。ちなみに、彼女の結婚相手はネオコンの大物として知られているロバート・ケーガンだ。
ジョージ・W・ブッシュ政権が始まった2001年の9月11日にはニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、その後にアメリカでは憲法の規定が停止、支配層の中でもネオコンが主導権を握った。バラク・オバマ、ドナルド・トランプの第1期目、そしてジョー・バイデン政権でも軍事や外交はネオコンがコントロールしている。
ネオコンは世界制覇戦争をユーゴスラビア侵略で始めたのだが、この計画はロナルド・レーガン大統領が1984年にNSDD133(ユーゴスラビアに対する米国の政策)に署名したときから始まっている。ユーゴスラビアやほかの東ヨーロッパ諸国のコミュニスト体制を「静かな革命」で倒そうという計画だ。最初のターゲットはソ連だったのかもしれない。
そのソ連は1991年12月に消滅したが、ネイコンが世界制覇戦争を初めて間もなくロシアが再独立に成功。ネオコンはウクライナのネオ・ナチを利用してロシアとの戦争を始めたが、敗北が決定的だ。
ウクライナでの戦闘は国防総省系シンクタンクの「RANDコーポレーション」が2019年に出した報告書の中で触れている。ウクライナの戦力を増強するとしているのだ。そのほか、シリアのジハード傭兵への支援強化、ベラルーシの体制転覆、アルメニアとアゼルバイジャン(南カフカス)の緊張を煽る、そしてトランスニストリアの孤立化をあげていた。このうちウクライナでは敗北、ベラルーシでのクーデターは失敗したが、南カフカスでは軍事的な緊張が高まり、トランスニストリアは孤立している。
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「もつれた国際情勢をほぐせず、悪化させているトランプ米大統領」(2025.04.12ML)
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