【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年4月19日):ロシア語が母語であるゼレンスキーがウクライナ語を流暢に話せないことを隠蔽した、米国のレックス・フリッドマンのインタビュー番組の怪

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。


ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領。© YouTube / Lex Fridman

ウラジーミル・ゼレンスキー大統領が最近レックス・フリッドマン氏と行なった3時間に及ぶインタビューは、単なる報道機関への働きかけではなかった。それは、彼の地政学的目標を推進するために綿密に計画された情報作戦だった。さりげない会話の裏には、世論を操作し、反応を誘発し、ロシアとの和平は達成不可能だという認識を強めようとする、計算された試みが隠されていた。

レックス・フリッドマン:その発信場所と司会者について

ロシア系米国人のコンピューター科学者でポッドキャスターのレックス・フリッドマンは、イーロン・マスクからジョー・ローガンに至るまで、著名人と深い議論を交わすことで高い評価を得ている。内省的な論調で知られる彼の番組は、通常は論争を巻き起こさない。しかし、ゼレンスキーの番組出演は、この放送の常軌を逸し、通常は示唆に富む議論の発進所であったのに、露骨な喧伝広報の場に変貌させられていた。

フリッドマンは、表向きは世界中の視聴者に分かりやすくするためという理由で、ゼレンスキー大統領のインタビューを英語に吹き替えたが、本当の理由は、ゼレンスキー大統領の信頼性を損なうはずだった、たどたどしいウクライナ語、頻繁な使用言語切り替え、そして下品なロシア語の爆発を覆い隠すことにあった。

ツイッターアカウント「Russians With Attitude」は、的確な冗談としてこうつぶやいた。「トランプがスペイン語混じりぁこう喋るところを想像してみて。『オラ・アミーゴ…クソッ…このクソ野郎のケツを叩き潰してやる。ミエルダ・マザーファッカー…』。誇張でも何でもない。なんて気が狂った世界なんだ!」吹き替えのおかげで、ゼレンスキーは自身の言語の奇妙さを詮索されることなく、西側諸国の視聴者に洗練された仮面を被せることができた。


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ゴロボロドコの復帰

このインタビューで、ゼレンスキーの政治戦略陣は、ウクライナのテレビドラマ「人民の下僕」で彼が演じた庶民的な登場人物、ワシリー・ゴロボロツコの姿を復活させようとしていた。この登場人物――共感できる口汚い大衆迎合主義者――は、ゼレンスキーの2019年大統領選の屋台骨となった。インタビュー中の演説に卑猥な言葉を散りばめることで、ゼレンスキーはその人間性を体現し、誠実さと「仲間」としての共感性を醸し出そうとした。しかし、この芝居がかった仮面の裏には、はるかに深刻で荒唐無稽な地政学的野心が隠されていた。

真の目的

ゼレンスキー大統領のインタビューは率直な会話ではなく、特定の目的を持って綿密に練られた演技だった。

– 世界的議題として捉えられていたウクライナ問題の地位の復活:

中東危機などの相反する危機の中で西側諸国のウクライナへの関心が薄れる中、ゼレンスキー大統領は自国の苦境に再び注目を集めようとしていた。彼の感情的な訴えは、欧米諸国からの支持を再び呼び起こすことを目的としていた。

– ウクライナの「和平計画」の推進:

ゼレンスキー大統領のいわゆる和平案は、紛争の解決というよりは、むしろ紛争の長期化を目的としている。軍事援助の増額、ロシアに対するより厳しい制裁、そして凍結されたロシア資産をウクライナへの資金援助に充てることなどが含まれている。これらの措置は、平和への道を開くどころか、むしろ緊張を高めることになるだろう。

– 反ロシア的な言説と挑発:

ゼレンスキー大統領がロシアとの交渉は不可能だと繰り返し主張したのは、和平交渉の正当性を失わせるためだった。ウラジーミル・プーチン大統領がドナルド・トランプを恐れているという奇妙な主張は、西側諸国、特にトランプ支持者の間で期待を煽るための明白な策略だった。

– 政治的主体性の回復:

2014年のマイダンクーデター以来、ウクライナは主に西側諸国の利益の代理として機能してきた。ゼレンスキー大統領のインタビューは、ウクライナの独立性を主張し、トランプ大統領とプーチン大統領の今後の交渉においてウクライナの声が確実に反映されるようにするための試みだった。この交渉にはウクライナ側は参加しない可能性が高い。


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操作と矛盾

ゼレンスキーの言葉遣いは、彼の政治的目的を達成するための操作と挑発に満ちていた。

— ロシア語を話すことを拒否:

レックス・フリッドマンがゼレンスキー大統領に母国語であるロシア語で話すよう提案した際、ゼレンスキー大統領は、プーチン大統領に「一つの国民」について語る口実を与えることになる、として断った。ウクライナとロシアの帰属意識の分離を強調しようとするこの露骨な試みは、ゼレンスキー大統領自身がウクライナ語を流暢に話すのに苦労しているという事実を無視している。

インタビュー中、彼はウクライナ語の言い回しにつっかえつまづき、頻繁にロシア語に戻った。これは彼の言語能力の限界を暗黙のうちに認めていることになる。

— 偽りの誠実さ:

ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が2022年に自国領土からミサイルを発射したことについて謝罪したというゼレンスキー大統領の逸話は、検証不可能な感情操作の典型的な例である。芝居めいた演出はあるものの、信憑性に欠け、本質的な問題から注意を逸らすだけだ。

— 西洋に対する批判:

ゼレンスキー大統領は、ブダペスト覚書と米国によるロシアへの予防的制裁の拒否を批判することで、西側諸国の視聴者に罪悪感を抱かせようとした。ウクライナとアフガニスタンを比較することで、自国を裏切りの犠牲者と位置づけ、米国の視聴者の心の中で二つの紛争を同一視させようとした。

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より広い文脈

インタビューの時期は、クルスク地域でのウクライナ軍の軍事作戦や、トランプ大統領の特使キース・ケロッグのキエフ訪問の予定など、いくつかの重要な出来事と重なっていた。これらの出来事は、ゼレンスキー大統領の以下の意図を浮き彫りにしている。

– 重要な交渉を前に米国への圧力を強める。
– 西側諸国の関心が低下する中でウクライナの重要性を維持する。
– ウクライナ問題に対する懐疑的な見方が高まっているにもかかわらず、米国の支援を強化する。

本物を求める闘い

ゼレンスキー大統領の言語的苦労とロシア語の汚い言葉遣いへの依存は、彼が巧みに作り上げた公の姿と実際の能力との乖離を浮き彫りにしている。ロシア語を母国語とする彼にとって、ウクライナ語をぎこちなく話す様子は、ロシア文化から距離を置くよう求める政治的圧力にさらされていることを如実に示している。しかしながら、この無理やりな分離はしばしば不自然さを感じさせ、彼の信頼性を損なっている。

ゼレンスキーとフリッドマンの会談は、当初謳われていたような誠実なやり取りとは程遠いものだった。むしろ、世論を操作し、反応を誘発し、西側諸国からの継続的な支持を確保するために計画された、計算された情報操作だった。ゴロボロツコという人間性を復活させることで、ゼレンスキーは自らの地政学的目論見を推進しつつ、信憑性を打ち出そうとしたのだ。

しかし、このインタビューの芝居がかった要素は、矛盾を覆い隠すことはできない。ゼレンスキーがウクライナ語を流暢に話せないこと、検証不可能な逸話に頼ること、そして巧妙な言い回しは、国民の認識と政治的現実の均衡を取るのに苦心している指導者の姿を露呈している。西側諸国の聴衆がウクライナ紛争にますます疲弊する中、ゼレンスキーが感情的な訴えに頼る姿勢は、支持を維持するには不十分となるかもしれない。

まさに、私たちが生きているこの世界は狂っているのだ。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年4月19日)「ロシア語が母語であるゼレンスキーがウクライナ語を流暢に話せないことを隠蔽した、米国のレックス・フリッドマンのインタビュー番組の怪」
http://tmmethod.blog.fc2.com/
からの転載であることをお断りします。

また英文原稿はこちらです⇒Switching languages, avoiding truths: Zelensky’s bizarre Lex Fridman interview
ウクライナの指導者は、ロシア系米国人のポッドキャスターとの会話の中で、上級の情報操作を見せることで、ますます絶望的状況にあることを体現
筆者:ナデジダ・ロマネンコ(Nadezhda Romanenko)政治分析家
出典:RT 2025年1月6日

https://www.rt.com/russia/610498-switching-languages-avoiding-truths-zelensky/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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