レイチェル・クラーク:【私は、宇宙開発に関してかなり偏見を持っています】

レイチェル・クラーク

【私は、宇宙開発に関してかなり偏見を持っています】

偏見が必要だとも思っています。

その心は、を以下にご説明します:

1)世論誘導

宇宙開発に関してポジティブなイメージを視聴者から勝ち取るために、ディスカバリーチャンネルも大手メディアのニュース番組も、非常に重要な役割を果たしていると見えます。

ディスカバリーチャンネルの親会社のCEOであるデイビッド・ザスラフは、ワーナー・ブラザース映画とワーナー・ブラザース・テレビジョン・グループ、HBOとマックス、discovery+、CNN、TNTスポーツ、HGTV、フードネットワーク、OWN、ID、ワーナー・ブラザース・アニメーション、ディスカバリーキッズ、ユーロスポーツなど、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの世界的なブランド群の戦略を策定し、すべての業務を監督しています。

ディスカバリーで指揮を執る前のザスラフは、NBCユニバーサルでCNBCの開発と立ち上げに尽力し、MSNBCの創設にも携わったそうです。

彼の経歴にあるCNN、CNBC, MSNBCと言えば、米国政府のプロパガンダ拡声器と言い換えることができます。同様に、ディスカバリーチャンネルで取り上げるネタも、宇宙開発の「いいとこ取り」に集中することは言うまでもありません。もちろん、素直に信じて良い内容だと思いますが、それぞれのプロジェクトの二面性には決して触れないことも知っておく必要があります。つまり、ディスカバリーチャンネルでも、大手メディアニュースでも、宇宙開発計画や実践に関して、決して触れない部分が常にある、と言うことです。それを念頭に置く事が、すなわち最初に述べた「偏見の必要性」です。

2)ここから先は、米国の航空宇宙開発の歴史と現在それがどのような形で現れているかを、宇宙空間の軍事化の阻止に長年尽力しているブルース・ギャグノンの講演記録から拾ってご紹介します。

① 宇宙に関する国際法

国際的には1967年の国連宇宙条約と、それを基本にしてできた宇宙法があります。宇宙条約では、

 ・宇宙空間の平和利用
・大量破壊兵器の使用禁止
・天体の所有禁止

を含んだ様々な取り決めがあります。基本的に宇宙空間が宇宙に存在するもの全ての共通財産であり、平和的に利用されるべきだ、というコンセプトに貫かれていて、しかも当時のソ連が宇宙開発分野で台頭してくるのを牽制するつもりで米国がこの条約を国連で提言しました。

② 「ペーパークリップ作戦」と米国に生き続けるナチズム

歴史的流れでは前後しますが、米国は、大戦が終了する直前に「ペーパークリップ作戦」を実行し、ナチスドイツの航空宇宙科学分野の科学者や技術者1600名ほどを、命乞いさせて米国に連れてきました。彼ら、つまりナチスの科学的な協力者たちこそが「南のペンタゴン」の異名を持つアラバマ州ハンツビルで、米国の航空宇宙開発の基礎を築いた人たちです。

現在進行形では、「宇宙コマンドコンピューターウォーゲーム」というイベントが、毎年コロラド州で開催されます。そのようなイベントでは弁護士も加わって、宇宙空間を想定した戦争シミュレーションが行われます。例えば、ボーイング社のX-37というドローンを使って、中国やロシアに対して先制攻撃を仕掛けるとか、開発中の「デススター」というレーザーを使った武器(映画「スターウォーズ」シリーズで発展を遂げたスーパーウェポン、架空の武器)で宇宙空間から地上の敵に向かって攻撃をしたら、国際法上どんな問題があるか、を弁護士に尋ねます。弁護士の回答は、「これらは大量破壊兵器ではなく、選択的破壊兵器なので、宇宙法には抵触しない」という屁理屈的な回答をするわけです。客観的に見て、宇宙空間の平和利用という大前提を完全に無視しており、その大前提を1967年に国連で成立させた米国自身がすべきことではありません。上記の「デススター」ですが、映画の人気から実際に開発すべきだという世論が形成されたことは、結果的にメディアの影響力を利用した世論誘導になったことは明らかです。そうするつもりが制作者側にあったかどうかは私の知る部分ではありません。膨大な予算がからむ宇宙開発ですから、そのような操作があったとしても、別段不思議ではありませんが。

さて、このような屁理屈を可能にしてしまった国際宇宙法には、現代の視線も加味した修正が必要だというのが、「宇宙空間の平和利用」の約束をずっと守っていきたい多くの国々の願いです。1984年以来、毎年国連で「宇宙空間での軍拡競争の防止法」(選択的破壊兵器も含めて、宇宙空間に武器を持ち込むことを禁止する国際法)の必要性が話し合われていますが、その度にこの国際法の成立を阻止する国が二つあります。米国とイスラエルです。繰り返します。米国とイスラエルです。なぜなら、この2カ国は、どうしても上記のようなスーパーウェポンの開発を止めたくない、つまり、すでに何十年も前から地球の覇権から宇宙の覇権へと目線がシフトしているのです。その開発の基礎を築いたのが、ペーパークリップ作戦で渡米した(ナチスドイツでロケット開発に携わった)科学者や技術者たちだったことは、ここでしつこく言及しておきます。

③ ドルンバーガー少将の発言

その渡米した1600名の中に、ナチスのロケット計画の責任者だった、ドルンバーガー少将もいました。彼は、渡米後にベルエアロスペース社の副社長になりました。1950年代に下院の公聴会に呼ばれた彼は、こう言いました:「第一次・第二次世界大戦では負けました。でも、第三次世界大戦で負けるつもりで米国に来たのではありません。」当時ドイツから米国に渡った科学者・技術者が、ナチスドイツのもとで研究開発した知識と経験を、どんなつもりで米国で開花させたのかを物語るエピソードだと思います。

④ 生物・化学兵器

また、渡米した1600人の中には、生物・化学兵器の専門家もいたため、「人のマインドをどのようにコントロールするか」の研究をさらに米国で極めたそうです。

⑤ シナリオの登場

1989年に、「宇宙軍今後50年(Military Space Forces The next 50 years」という本を、米国下院の勉強会が編集して出版しました。この本の中で、地球から発射されるミサイルの全てをコントロールするのは米国でなければならない(宇宙空間における米国の軍事的な覇権の掌握)ということも語られています。また、敵が現れた場合、その敵の宇宙船をハイジャックすべし、などいう宇宙空間での海賊行為にまで言及されています。

1997年には、「2020年への展望(Visoin for 2020)」という文書が当時の合衆国宇宙司令部から発行されました。同じ年に、「天空からの採掘:小惑星、彗星、惑星からの知られざる富(Mining the Sky: Untold Riches from the Asteroids, Comets, and Planets)」という本がアリゾナ大学の惑星科学名誉教授ジョン・S・ルイスによって書かれ出版されました。

⑥ シナリオの実行

これらの2つの文献が、その後の航空宇宙開発にどう影響したかをご説明します。

まず、「2020年への展望」の4ページ目に以下のような記述があります:

歴史的な視点 – 空間の進化

歴史的に、軍隊は国家の利益と投資(軍事的および経済的)を守るために進化してきた。海上貿易が盛る間、各国は商業的利益を保護し、強化するために海軍を建設した。米国本土の西への拡大の間、幌馬車、入植地、鉄道を守るために軍の前哨基地と騎兵隊が出現した。

空軍が発展するにつれて、その主な目的は陸上と海上の作戦を支援し、強化すること。しかし、時間の経過とともに、空軍力は独立した対等な戦争媒体に進化した。

宇宙軍構想は、これらの両方のモデルに従い、主に陸上、海上、空の作戦を戦略的および運用的に支援し、21世紀初頭、宇宙軍として独立した平等な戦争媒体に進化するだろう。同様に、宇宙軍は、軍事的および商業的な国益と宇宙媒体への投資を保護するために出現する。

次に、同じ文献の5ページ目には、こんな記述もあります:

共同ビジョン2010

フルスペクトル支配

宇宙の媒体は、陸、海、空と並んで、戦争の4番目の媒体である。宇宙における能力(システム、能力、および力)は、減少する資源と増加する軍事的コミットメントの間の拡大するギャップを埋めるためにますます活用される。

このような「2020年への展望」や「天空からの採掘」というシナリオを実行可能にしたのが、2015年にオバマ大統領が署名した法案「アステロイド法」です。1967年の国際宇宙法の網の目を利用したような内容で、「天体を所有することはできないが、そこで採取した鉱物資源は持ち帰ることが許される」ということを、たった米国一国の一存で決めてしまったのでした。

で、2020年に何が起きましたか? 米国に「宇宙軍」が創設されましたね。トランプ大統領の一期目の時でしたが、あれが、彼の立案ではなく、大戦後から脈々と続く航空宇宙開発と宇宙覇権への執念の結晶が「2020年への展望」というシナリオの通り実行され、たまたまその時の大統領がトランプだった、というふうに理解して良いと思いますし、前述のオバマ大統領のアステロイド法に関しても同様だと見ています。

⑦ 航空宇宙開発の本来の目的

つまり、米国の航空宇宙開発をずっと支えてきた本来の目的は「軍事的および商業的な国益と宇宙媒体への投資を保護するため」であり、この事実は、ディスカバリーチャンネルや主要メディアのニュースでは多分取り上げたこともないでしょう。でも国連では毎年全世界的な懸念事項として、1984年以来今日もずっと「宇宙空間での軍拡競争の防止法」が審議され、毎年米国とイスラエルによって、モグラ叩きのように潰されているのです。宇宙空間の平和利用を確認し合うための国際法を、なぜ執拗にこの2カ国は阻止しようとするのでしょうか? その答えは、宇宙ゴミの改修や巨大隕石の衝突回避とは、全く無縁の理由があるからではないでしょうか? ウクライナでもガザでも、地上の攻撃のために、衛星が大きな役割を果たしているからです。そして、NASAと同じ歩調でESAが宇宙開発を欧州目線で行っていると考えることに、全く無理はないと思います。ディスカバリーチャンネルで頻繁に紹介されているESAの具体的な活動だけがその全てであると信じることは、あまりにも無謀だと思う理由は、これまで書いてきた米国の航空宇宙開発の歴史でお分かりいただけると思います。

3)報道の裏世界

① 核電池と人工衛星

宇宙空間で、二丁拳銃で撃ち合うような戦争のスタイルは、1980年台のスターウォーズ計画の世界です。現在進行中なのは、宇宙空間にある衛星を使って地上兵器を操作する事です。過去の宇宙探査用人工衛星に搭載したのは、核爆弾ではなく、核エネルギー電池です。これは、すでに1960年代から始まっていて、打ち上げに失敗したことも何回かありました。全て報道されたかどうかは知りませんが。大気圏内でウラン238(という通常の核兵器に使用されるウラン239よりももっと強力なもの)が核エネルギー電池に使用され、それが、衛星の打ち上げの失敗で大気圏内で破損した時に拡散し地球全体をグルグルと巡り、その後世界中で奇妙な癌が蔓延した事を、今は亡きジョン・ゴフマン教授が調査・研究し、発表しました。 このように「核」というものは、宇宙でも「平和利用」の大義名分の元にエネルギーとして使用され、敵国を攻撃するどころか自分も含めて地球全体を汚染した前例があります。その責任を米国は果たしたでしょうか?

衛星に搭載された核エネルギー電池は、このような前例があるために、大気圏を通過させるのは非常に危険です。

1997年に打上げられた土星探査機カッシーニは、NASA、ESA、ASI(イタリア宇宙機関)によって開発され、2017年9月15日に土星の大気圏に突入してミッションを終了しました。約33 kg(73 lb)のプルトニウム-238の崩壊熱を利用するカッシーニを、再び地球に呼び戻すなどということは、恐ろしい前例があったために選択肢にはなかったはずです。

② 大量破壊か選択的破壊か

人工衛星は、平和のためだけに機能させることが目的であるべきですが、実際は、軍が私たちの税金から研究・開発資金を提供し、攻撃目的で使用されていることは否定しようのない事実です。米国内の空軍基地にあるコンピューターで中東のドローン攻撃の標的を見つけヘルファイアーで殺害することは、人工衛星無しではできない事です。そして、そのようなドローン攻撃は「選択的破壊兵器」なので狙った標的だけを攻撃するというオバマ大統領の触れ込みは有名でしたが、実際死傷者の9割が、巻き添えであったことは、ダニエル・ヘイルの内部告発で明らかにされました。つまり、大統領がどう説明しても、ドローン攻撃の実態は大量破壊兵器なのです。

4)米国と中国だけを監視すれば、戦争は防げるのか

それができるという意見には、到底同意することはできません。世界各国が人工衛星を打ち上げていますし、それらが米国のような使い方に走る事が「あり得ない」と考えたいですが、現時点では無理だと思います。

人工衛星のおかげで電気ガス水道や、自動車、飛行機など地上の多くのものが機能しているほど必要不可欠なので、地上に意図的にトラブルをもたらしたいと考える者にとって、人工衛星を操作してそれらの機能を停止することは非常に効果的な妨害行為です。このようにいわゆる「公共サービスの武器化」も、新たな戦争の形と捉えることができます。ある地域で停電が起きた(大火災が起きた、電車やATMが止まって都市機能が麻痺した、など)というニュースと、その地域で後日紛争が始まったという別なニュースの点と点を繋ぐと、新たなニュースの側面が見えてくる、ということが過去に何度か起きていませんか? 主要メディアのニュースがしっかりと調査をして、この「点と点を繋ぐ」形でのニュースを報道しないので、視聴者がその作業をしなければなりません。それもある種のメディアリテラシーというものですね。その作業が正しい場合もあり、外れている場合もあり。知らされていない部分を穿り出すのは、非常に困難です。また、一方的に提供される情報だけで判断することは、それ以上に危険だとも思います。

資料:

デイビッド・ザスラフhttps://www.wbd.com/leadership/david-zaslav

国連宇宙条約https://www.unoosa.org/oosa/en/ourwork/spacelaw/treaties/introouterspacetreaty.html

ペーパークリップ作戦https://en.wikipedia.org/wiki/Operation_Paperclip

2020年への展望 https://thecommunity.com/vision-for-2020/
天空からの採掘 https://en.wikipedia.org/wiki/Mining_the_Sky

アステロイド法https://www.mining.com/obama-boosts-asteroid-mining-signs-law-granting-rights-to-own-space-riches/

デススターhttps://en.wikipedia.org/wiki/Death_Star

ウォルター・ドルンバーガーhttps://en.wikipedia.org/wiki/Walter_Dornberger

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レイチェル・クラーク レイチェル・クラーク

日系米国人、通訳・コンサルタント・国際コーディネイター ベテランズフォーピース(VFP) 終身会員 核のない世界のためのマンハッタンプロジェクト メンバー 2016年以来、毎年VFP ピース・スピーキングツアーをコーディネイトし、「戦争のリアル」を米国退役軍人が日本に伝える事によって、平和・反核・環境保護活動につなげている。

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