
ジェフリー・サックス「シリア戦争はオバマによるアサド打倒命令から始まった政権転覆作戦だった」Jeffrey Sachs: CIA Operation Timber Sycamore Created Syrian Crisis (Japanese Translation) 2025/4/14
国際政治
25年4月12日、トルコの「アンタルヤ外交フォーラム」(4月11日-13日開催)におけるジェフリー・サックス氏のシリア戦争についての発言が拡散されています。大変本質をついた指摘と思いここに日本語訳を紹介します。ガザにおけるイスラエルのジェノサイドを批判している人たちも、シリアのこととなると「独裁者アサドから反政府勢力が市民を救った」という西側メディアの物語通りに考えてしまいがちかもしれません。しかしこれが中東における、米帝国がイスラエルと結託して行ってきている政権転覆戦争の一部であるということを、サックス氏はエビデンスにもとづきながら指摘しています。(サックス氏が第一次トランプ政権の間、2018年にMSNBCに登場しシリア戦争へのCIAの関与を語っている動画もここで見られます。)
AI訳にサイト運営者が目を通し修正しました。強調は当サイト運営者によるものです。翻訳はアップ後修正することがあります。動画最後のQ&Aは割愛しています。
動画はこちら:
司会者:
これからジェフに質問します。
アメリカ合衆国は、シリアについて中立の立場をとっているのでしょうか?私の理解では、そうではありません。なぜなら、アメリカはシリア問題における最も重要なカード、すなわち制裁を握っているからです。たとえヨーロッパ諸国が制裁を緩和したいと望んだとしても、最終的に承認するかどうかを決定するのはアメリカなのです。彼らは中立的立場をとっているのではありません。シリアが4か月経った今でも制裁に苦しみ、私たちがあらゆる柔軟性を求めている現在の政府が、国民に日々の食料すら提供できないという事実は、我々が中立の立場にないことを意味しています。アメリカ合衆国のシリアにおける大戦略とは何でしょうか?また、現在のトランプ政権による展開は、あなたにはどのように見えますか?ジェフ・サックス:
この戦争全体がどこから始まったのかを私たちが理解することは重要だと思います。
この戦争はバッシャール・アル=アサドから始まったのではありません。ワシントンから始まったのです。2011年にアサドを打倒するという決定がなされました。実際には、それはエルサレムから来たのです。これは、25年以上にわたって続いてきたイスラエル政府の願望でした。
ネタニヤフの考えは、「中東をイスラエルの姿に作り変える。イスラエルに反対するあらゆる政府を打倒する」というものです。彼はその目的において、仲間を得ました。それがCIAとアメリカ合衆国政府なのです。
このシリア戦争はアサドの抑圧から始まったのではありません。アサドの独裁からでもありません。この戦争は、アサドを打倒するというオバマ大統領による大統領命令から始まったのです。
2011年の春に始まったこの計画には名前があります。それは「ティンバー・シカモア作戦」でした。アメリカはこの地域の他の国々と共に、反政府戦闘員、特にジハード主義者たちを訓練しました。その中には、最近政権を掌握した者たちも含まれており、政権を打倒させようとしたのです。
その結果、カオスが生じました。シリアでは14年にわたる戦争の中で、60万人が死亡しました。この戦争の結果とは、2011年当時CIAが望んでいたものであり、それはアメリカに武装されたジハード主義グループがシリアで政権を取るというものでした。
私がこの点をはっきりさせたい理由は、私たちがこの地域において真の外交、すなわちCIAの作戦ではない公的な外交に基づいた外交を行わない限り、平和は訪れないということを理解してほしいからです。
そしてまた、イスラエルが中東全体の軍事化をやめない限り、私たちに平和は訪れません。
なぜなら、シリア戦争はイスラエルが促進してきた6つの戦争のうちの一つにすぎないからです。それは、レバノン、イラク、シリア、リビア、ソマリア、スーダンです。実際、私たちは2001年にウェズリー・クラーク(元陸軍大将、欧州連合軍最高司令官)からこのリストを受け取りました。彼はペンタゴンで「5年で7つの戦争を行う」という計画書を手渡されました。ネタニヤフにとって大きな不満である唯一まだ実現していない戦争とは、アメリカによるイランとの戦争です。そしてイスラエルはいまでもそれを引き起こそうとしています。
シリア戦争は中東全体の悲劇の一部でした。私たちはガザ、ヨルダン川西岸、レバノン、シリア、イラク、スーダン、南スーダン、そしてリビアにおいて悲劇を目の当たりにしています。私はこれらすべてをアメリカ合衆国政府とその同盟国イスラエルの責任に帰しています。
これらの戦争のどれもが起こる必要はありませんでした。これらはすべて「敢えてしかけた戦争」でした。これらはすべて、「どの政権がどの国を支配するかアメリカが決定する」という政権転覆作戦の発想から来ているのです。
私たちは、アメリカのような外部の帝国勢力がこの地域に条件を押し付けている限り、平和を得ることはできません。
この地域に平和が訪れる唯一の方法とは、この地域自身が自らの未来を決定することであり、外部勢力によって決められることではないのです。
そして、イスラエルはこれらの戦争を単独で行うことは決してできません。
これらはアメリカの戦争です。アメリカは資金を提供しています。軍事的支援を提供しています。海軍の支援を提供しています。情報活動を提供しています。弾薬も提供しています。イスラエルは、アメリカの支援なしでは1日たりとも戦うことはできません。
イスラエルは、アメリカ合衆国による完全な作戦上の共犯なしには、ガザでのジェノサイドを遂行することなどできません。私が言っているのは、政治的な共犯ではありません。
私は、直接的かつ日々行われている作戦レベルの共犯のことを言っています。これは終わらせなければなりません。この地域は、100年間分断され続けています。最初はイギリス帝国によって、次にアメリカ帝国によってです。
そしてそれは、今日に至るまで続いています。
私たちは、すぐ隣で現在進行中のジェノサイドを目の当たりにしています。今この瞬間、今朝に至るまでです。人々が無差別に、堂々と殺されています。
それは、アメリカ合衆国がそのための手段を提供しているからです。これが、現在シリアで起きていることなのです。
アメリカは中立なのでしょうか?とんでもありません。
アメリカは、主要な当事者なのです。それに、私はよく知っています。
2012年、国連事務総長の潘基文氏が、元事務総長のコフィ・アナン氏をシリア和平特使に任命したことを、私は直接知っています。私はコフィ・アナンを心から尊敬しています。私は潘基文も尊敬しています。私は彼ら二人のために働いてきました。
コフィは、2012年に和平合意を取りまとめました。彼は、シリアにおいて和平を整えたのです。
それがなぜ実現しなかったのか、お分かりですか?
全ての関係者が和平に同意していたのに、アメリカ合衆国が反対したからです。アメリカ合衆国はこう言いました。
「バッシャール・アル=アサドが即座に辞任しない限り、和平はない」と。他の当事者たちは言いました。
「いや、それを一方的に決めることはできません。もしかするとプロセスが必要かもしれませんし、合意された選挙があるかもしれません。2年、あるいは3年のプロセスになるかもしれません」と。アメリカはこう言いました。
「いや、アサドはあらゆる合意の初日に去らなければならない。そうでなければ、我々はそれを拒否する」と。その結果、コフィ・アナン氏は交渉によって和平合意をまとめた後、その職を辞任しました。
そしてそれ以降、50万人が命を落としました。私たちは、このような犯罪行為を常態化させるべきではありません。
この地域は、過去30年間ずっと戦争状態にあります。いや、実際には六日戦争(1967年の第三次中東戦争)以来、少なくとも57年間にわたって続いていると言うべきでしょう。
なぜなら、国際法に対する誠実な説明責任がなく、誠実な外交が存在してこなかったからです。全てが軍事化一辺倒だったのです。
そして、私たちはすぐにでもこの地域に平和をもたらすことができます。
私の考えでは、必要なのはただ一つ。
アメリカ合衆国が、パレスチナを国連の194番目の加盟国として認めることへの拒否権を撤回することです。その一点が満たされれば、この地域全体が関係を正常化し、地域全体にわたる戦争は終わるでしょう。
しかし、イスラエルはアメリカの政策を支配してきました。イスラエルは「ノー」と言います。イスラエルは「大イスラエル」を望んでいます。イスラエルは、シリアをイスラエルにしたいのです。レバノンをイスラエルにしたいのです。ヨルダン川西岸をイスラエルにしたいのです。東エルサレムをイスラエルにしたいのです。ガザをイスラエルにしたいのです。
これを阻止しないかぎり私たちは平和を得ることはできません。
ですから、「アメリカは中立なのか?」と問うならば、答えは「もちろん違います」です。
アメリカはこの全戦争の主要な推進者であり、過去14年間ずっとそうだったのです。
(日本語訳 以上)
この後の投稿もセットで読んでください。
※この記事はカナダ・バンクーバー在住のジャーナリスト・乗松聡子さんが運営するPeacePhilosophyCentreの記事
(ジェフリー・サックス「シリア戦争はオバマによるアサド打倒命令から始まった政権転覆作戦だった」Jeffrey Sachs: CIA Operation Timber Sycamore Created Syrian Crisis (Japanese Translation 2025/4/14)からの転載です。
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東京出身、1997年以来カナダ・バンクーバー在住。戦争記憶・歴史的正義・脱植 民地化・反レイシズム等の分野で執筆・講演・教育活動をする「ピース・フィロ ソフィーセンター」(peacephilosophy.com)主宰。「アジア太平洋ジャーナル :ジャパンフォーカス」(apjjf.com)エディター、「平和のための博物館国際ネッ トワーク」(museumsforpeace.org)共同代表。編著書は『沖縄は孤立していない 世界から沖縄への声、声、声』(金曜日、2018年)、Resistant Islands: Okinawa Confronts Japan and the United States (Rowman & Littlefield, 2012/2018)など。