【連載】植草一秀の「知られざる真実」

植草一秀【連載】知られざる真実/ 2025年5月 1日 (木) 万博より大切なものがある

植草一秀

〈並ばない万博〉のはずが〈大行列の万博〉。

鉄道路線が1方向に1線しかない孤島で鉄道トラブルが発生して帰宅困難者が発生。

数少ない〈売り〉である〈空飛ぶ車〉が破損して運転を休止。

自動運転のバスが自動的に動き出して壁に衝突。

350億円も投下したリングが雨よけ、日よけの屋根になるはずが、雨天時には強風でリング下がずぶ濡れ。

メタンガスが充満すれば爆発事故が再現されるリスクもある。

業界が買い取りを強要されたチケットを除くと民間でのチケット購入は極めて低調。

つじつまを合わせるために小中学校の生徒児童を無料招待する事業が繰り広げられている。

しかし、小中学校児童生徒の無料招待は決して無料でない。

公費=税金が投入される。

したがって、収支計算から公費によるチケット購入代金を差し引く必要がある。

日本財政が厳しいと言いながら万博を開催する理由は皆無。

IR=カジノ建設予定地に交通インフラが存在しないため、万博を大義名分にして公費=税金で交通インフラを建造することが万博開催の最大の目的であったと考えられる。

利権一色の大阪・関西万博である。

財政に関する議論が活発化しているが、最重要の問題は貴重な財源をどう配分するのかということ。

不要不急の支出を排除して、絶対必要の対象に財源を集中させること。

これが日本財政の基本命題。

現在の財政政策運営は最悪だ。

絶対必要な対象への政府支出を削減して、不要不急の対象に財政資金投下を集中している。

万博などは不要不急の対象の筆頭。

意義深いイベントであるなら、公費=税金を投下せずに、民間資金でやればよい。

民間の資金負担で実施し、収支をカバーすればよいだろう。

交通インフラが必要なら、これも民間資金で整備するべきだ。

しかし、民間負担で実施が前提なら、だれ一人万博開催を推進しないだろう。

財政支出は社会保障に限定するべきだ。

産業振興の補助金も全面的に排除すべきだ。

市場原理を重視して、民間の活力を生かすというなら、民間の責任と負担で事業を行うべきだ。

民間事業者がロケット事業をやりたいときに、なぜ、一般市民が税金でロケット事業に補助金を投下する必要があるのか。

そんな資金の余裕があるなら、高額療養費の本人負担を抑制するべきだろう。

学校給食を無償化すべきだ。

高校、大学の授業料負担を軽減する支援に回すべきだ。

民間のイベントを一般市民が税金で負担する必要もない。

すべては、一般市民から金を巻き上げて、自分たちの利得のために公金を使っている図式だ。

万博を開催すれば、工事の事業者に巨額の資金が落ちる。

交通インフラを整備すれば交通インフラの建設事業者に公金が落ちる。

IRは公費で交通インフラを整備してもらえる。

その〈利権〉に政治が関与する。

兵庫県の知事に斎藤元彦氏を据え置きたいのは維新の思惑だろう。

維新がコントロールできる知事を維持すれば、兵庫県を舞台にする利権を取り込める。

すべてが〈利権〉ファーストの施策だ。

日本ではすごしやすい気候の季節が年々短くなっている。

春と秋の好天候の期間は短い。

6月に入ると毎年のように豪雨が日本を襲う。

7月から9月は猛暑が襲う。

猛暑の季節に小中学校の生徒児童を動員すれば大惨事を引き起こさぬとも言えぬ。

7月以降は台風の襲来もある。

会期末まで台風被害のリスクがつきまとう。

※なお、この記事は下記からの転載であることをお断りします。
植草一秀の『知られざる真実』2025年5月 1日 (木)[万博より大切なものがある]
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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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