【連載】植草一秀の「知られざる真実」

植草一秀【連載】知られざる真実/ 2025年5月 2日 (金) 推定にすぎない123便圧力隔壁説

植草一秀

自民党の佐藤正久参議院議員が2025年4月10日の参院外交防衛委員会で、1985年8月12日に発生した日航ジャンボ123便墜落事件について質問した内容がSNSなどで拡散されて注目を浴びている。

SNSでは佐藤議員が参院外交防衛で発言した次の部分が拡散された。

「本日取り上げていますこの中身はですね、駿河湾で試験中の護衛艦が対空ミサイル発射訓練をやっており、それを海自出身のJALの機長が海上自衛隊と組んで訓練に協力し、自衛隊の標的機がJAL123便を撃墜してしまった。

横田基地への緊急着陸を自衛隊が禁止したばかりではなく、その撃墜と墜落の痕跡を隠すためにわざと墜落地点の特定を遅らせ、その間、自衛隊の火炎放射器で墜落現場を焼いて証拠を隠滅した。

アメリカの大統領から中曽根総理への書簡に、外務省担当官がわざわざ事故ではなく墜落事件という言葉を使っていることからも、中曽根総理も外務省も知っていて隠蔽したという概要です。」

佐藤氏は「自衛隊が撃墜した」という言説が書籍などで拡散されているとして、これを問題視する発言を示した。

SNSで拡散されたのは、書籍などで拡散されている部分について佐藤議員が引用して紹介した部分だけを切り取ったもので、佐藤議員の主張とは正反するもの。

しかし、佐藤議員による国会での質疑内容が流布拡散され、SNSが流布した内容を否定する記事等が付随して公開されていることから、この問題に対する関心が再び拡大している。

当時の運輸省は123便墜落は123便内部の圧力隔壁が損傷して垂直尾翼が失われたことによって生じたものだとする調査報告書を発表しているが、墜落原因を断定したものではない。

事故調査報告書は墜落原因について「推定される」との表現を用いている。

政府の運輸安全委員会委員長は国会答弁で事故原因の調査結果について、国際民間航空機関のガイドラインを踏まえ原因等の推定度合いを4段階に分類して記載していることを明らかにした。

そのなかで、墜落原因が「断定できる場合」には「認められる」との表記が用いられ、「ほぼ間違いない場合」には「推定される」との表現が用いられていると答弁した。

123便の墜落原因については

「推定される」

の表現になっており、

「認められる」

ではない。

つまり「断定できる場合」に分類されていない。

そもそも、政府事故調査委員会の記述には疑問点が多い。

JAL123便は1985年8月12日18時56分、群馬県上野村高天原山尾根付近に墜落した。

乗員乗客524名のうち520名が犠牲になった。

520名のなかに懐妊した女性が1人おり、胎児も含めれば犠牲者は521人。

このうち、4名の乗員乗客が救出された。

救出された1人がJAL客室乗務員(当時)の落合由美さん。

この落合さんが123便墜落直後の状況を事故直後に証言した。

「墜落の直後に、「はあはあ」という荒い息遣いが聞こえました。ひとりではなく、何人もの息遣いです。そこらじゅうから聞こえてきました。まわりの全体からです。

「おかあさーん」と呼ぶ男の子の声もしました。」

落合さんは墜落直後に多数の生存者が存在したことを証言した。

ところが、政府の事故調査報告書はまったく異なる記述を示している。

「救出された4名以外の者は即死もしくはそれに近い状況であった。」

現場で直接体験をした落合さんの証言と事故調の記述がまったく異なる。

事故調報告書を執筆したのは現場にいなかった者であり、現場を体験した落合さんの証言を完全に否定していることがおかしい。

疑惑を決定づけたのは2013年9月に公開された運輸省航空事故調査員会による

「62-2-JA8119(航空事故調査報告書付録)
(JA8119に関する試験研究資料)」
https://bit.ly/3KAt8Kr

この資料の116頁に「異常外力の着力点」が図示され、

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101頁に「18時24分35.64秒ごろに前向きに、また、36.16秒ないし36.28秒ごろに下向きに、それぞれ異なる異常な外力が作用したことが確からしく考えられる。」と表記された。

垂直尾翼が失われた原因は内部の圧力隔壁損傷ではなく、「異常外力の着力」であった疑いが決定的になった。

事故調の「推定」を覆す決定的証拠が開示されたと言える。

事故原因を再調査するべきことは当然である。

※なお、この記事は下記からの転載であることをお断りします。
植草一秀の『知られざる真実』2025年5月 2日 (金)[推定にすぎない123便圧力隔壁説」
https://www.youtube.com/watch?v=Zcv11mYeRII

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スリーネーションズリサーチ株式会社
http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html

メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』2025年5月 2日 (金)「推定にすぎない123便圧力隔壁説」

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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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