
【櫻井ジャーナル】2025.05.04XML: ウォール街とナチスで作り上げられた現ドイツの支配体制が有権者の意思を弾圧へ
国際政治ドイツの治安機関であるBfV(連邦憲法擁護庁)はAfD(ドイツのための選択肢)を「過激派政党」に指定した。AfDは現在、ドイツの有権者に最も支持されている政党であり、政策の違いを論争ではなく治安維持という形で弾圧する姿勢を示したとも言える。
5月6日からドイツではCDU/CSU(ドイツ・キリスト教民主同盟)を率いるフリードリヒ・メルツが首相を務める予定だが、前政権の中核政党だったSPD(ドイツ社会民主党)と連立する。首相は交代するが、中身は変化しないということだ。
2005年11月から21年12月まで首相を務めたCDUのアンゲラ・メルケルも米英支配層から自立していたわけではないが、次のオラフ・ショルツ政権は「首なし鶏」状態で、パレスチナ人を虐殺しているイスラエルやネオ・ナチの影響下にあるウクライナを支持、ロシアとの戦争を推進し、ドイツ社会を崩壊へ向かわせている。メルツも同じ政策を進めるようだ。
こうしたCDU/CSU、SPD、同盟90/緑の党、自由民主党が推進してきた政策に反発した有権者がAfDや左翼党を支持している。左翼党から離脱したBSW(ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟)も支持率を維持している。有力メディアはAfDに「極右」、左翼党に「極左」というタグをつけて攻撃しているが、そうした手法で支配体制派の政党を支えきれなくなってきた。そこでBfVはAfDに「過激派」というタグをつけ、弾圧を開始したのだろう。
ドイツ経済を崩壊へと導いた原因はロシアとの戦争にあるが、この政策は移民問題とも結びつく。経済の崩壊は失業者を増やすが、それは人びとの目を移民に向けさせるが、職のない移民を犯罪に向かわせることも避けられない。
さらに、ウクライナでの戦争で西側はロシアに敗北したが、今後、ウクライナ側で戦った戦闘員がヨーロッパ諸国へ流れ込むことが予想される。一部は帰国なのだろうが、ジハード傭兵も含まれているはずであり、同時に武器弾薬も入ってくるだろう。つまり、移民問題は今後、深刻化する可能性が高い。そうなると、ロシアとの戦争にも反対しているAfD、左翼党、あるいはBSWを支持する人がさらに増えることになりそうで、今のうちにAfDを潰したいと支配層が考えても不思議ではない。
5月9日は第2次世界大戦でソ連がドイツを破った「戦勝記念日」で、ロシアなど旧ソ連圏では行事を計画している国が少なくない。そこでベルリン警察はロシア、ソ連、ベラルーシの国旗を用いた戦勝記念日の祝賀を禁止したと報じられている。「V」や「Z」という文字、あるいはジョージアのリボンも禁止された。
ドイツとソ連との関係が悪化したのはナチスが台頭してからだが、そのナチスをアメリカやイギリスの金融界、いわゆるウォール街やシティが支援していたことがわかっている。アメリカのディロン・リード、ブラウン・ブラザース・ハリマン、ユニオン・バンキングが資金のパイプ役として有名だが、イングランド銀行やBIS(国際決済銀行)もナチスを支援していたとされている。
アメリカではフランクリン・ルーズベルトが大統領に就任した直後、1933年から34年にかけての時期にJPモルガンを中心とするウォール街がクーデターを計画している。この計画を阻止したのは名誉勲章を2度授与されたアメリカ海兵隊の伝説的な軍人、スメドリー・バトラー退役少将だ。バトラーは後に議会で計画について証言している。
バトラー少将によると、1933年7月に在郷軍人会の幹部ふたり、ウィリアム・ドイルとジェラルド・マクガイアーが少将の自宅を訪問したところから話は始まる。巻くガイアーによると、計画のスポンサーのひとりがグレイソン・マレット-プレボスト・マーフィ。ウォール街で証券会社を経営するほか、モルガン系のギャランティー・トラストの重役でもあった。(Jules Archer, “The Plot to Seize the White House,” Skyhorse Publishing, 2007)
彼らはドイツのナチスやイタリアのファシスト党、あるいはフランスの「クロワ・ド・フ(火の十字軍)」の戦術を参考にし、50万名規模の組織を編成して政府を威圧、「スーパー長官」のようなものを新たに設置して大統領の重責を引き継ぐとしていた。
バトラーは信頼していたフィラデルフィア・レコードの編集者トム・オニールに相談、オニールはポール・コムリー・フレンチを確認のためにウォール街へ、同記者は1934年9月にウォール街のメンバーを取材してコミュニストから国を守るためにファシスト政権をアメリカに樹立させる必要があるという話を引き出した。この話をフレンチは議会で証言している。
結局、ウォール街はバトラーの説得に失敗。バトラーは50万人の兵士を利用してファシズム体制の樹立を目指すつもりなら、自分は50万人以上を動かして対抗すると応じ、内戦を覚悟するようにバトラーは警告した。
計画が発覚すると名指しされた人びとは誤解だと弁解したが、非米活動特別委員会はクーデター計画の存在を否定することはできなかった。それにもかかわらず、何ら法的な処分は勿論、これ以上の調査は行われず、メディアもこの事件を追及していない。バトラー少将は1935年にJ・エドガー・フーバーに接触してウォール街の計画を説明するのだが、断っている。(Peter Dale Scott, “The American Deep State,” Rowman & Littlefield, 2015)
ファシストを敵視していたルーズベルトは1945年4月12日に急死するが、その前からアレン・ダレスたちはナチスの幹部らと接触、善後策を協議している。当時、ダレスは戦時情報機関OSSの幹部だったが、元々はウォール街の弁護士だ。
ダレスのグループが接触した相手には、ドイツ軍の情報将校、ラインハルト・ゲーレン准将(ドイツ陸軍参謀本部第12課の課長)も含まれている。ソ連に関する情報を持っていたゲーレンをダレスたちは同志と見なすようになった。ヒトラーの後継者に指名されたヘルマン・ゲーリングにもダレスたちは接触している。
ウォール街人脈はゲーリングを戦犯リストから外そうとしたが、ニュルンベルク裁判で検察官を務めたロバート・ジャクソンに拒否されている。ゲーリングはニュルンベルクの国際軍事裁判で絞首刑が言い渡されたが、処刑の前夜、何者かに渡された青酸カリウムを飲んで自殺した。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015)
ゲーリングは国際軍事裁判の中で、人びとを指導者の命令に従わせることは簡単だと言っている。どういう国においてであろうと、自分たちは今攻撃されていると人びとに語り、平和主義者については愛国主義が欠落していて国を危険にさらしていると批判するだけで良いというのだが、確かにドイツを含む西側諸国ではそうした宣伝が繰り返されてきた。
アメリカの国務省や情報機関は1948年からナチスの元幹部や元協力者の逃走を助け、保護し、雇い入れる「ブラッドストーン作戦」を秘密裏に開始、その年に作成されたNSC20では、「結果として戦争を起こし、ソ連政府を打倒する」という方針が示されていた。ナチスの元幹部や元協力者を逃走させるルートがいわゆる「ラット・ライン」だ。(クリストファー・シンプソン著、松尾弌訳『冷戦に憑かれた亡者たち』時事通信社、1994年)
アメリカの情報機関人脈は戦後、ドイツの科学者や技術者1600名以上アメリカへ運び、軍事研究に従事させている。「ペーパー・クリップ作戦」だ。
ところで、ゲーレンはドイツが降伏した直後にCIC(米陸軍対敵諜報部隊)へ投降、尋問したCICのジョン・ボコー大尉はゲーレンたちを保護する。アメリカ第12軍のG2(情報担当)部長だったエドウィン・サイバート准将とヨーロッパの連合国軍総司令部で参謀長を務めていたウォルター・ベデル・スミス中将がその後ろ盾になった。ちなみに、スミス中将は1950年から53年にかけてCIA長官を務めることになる。
サイバート准将とゲーレン准将は1946年7月に新しい情報機関の創設を決めた。いわゆる「ゲーレン機関」で、ナチスの残党が雇い入れられている。ゲーレンはダレスのグループに守られ、組織は肥大化した。大戦後におけるドイツの情報機関はゲーレン機関から始まっている。
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「ウォール街とナチスで作り上げられた現ドイツの支配体制が有権者の意思を弾圧へ」(2025.05.04ML)
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