
【櫻井ジャーナル】2025.05.11XML:パレスチナ人虐殺で反イスラエル感情を煽り、ハマスに勝てないネタニヤフが窮地
国際政治イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権はガザで住民を虐殺し続けている。そのネタニヤフ首相に小さからぬ影響力を及ぼしていたシェルドン・アデルソンはドナルド・トランプ米大統領に多額の資金を提供してきた人物で、2013年10月に彼はイランを核攻撃で脅すべきだと語っている。2021年1月にシェルドンは死亡したが、妻のミリアムが後を引き継ぎ、24年の大統領選挙では彼女がトランプのスポンサーになった。イスラエル至上主義のアデルソン夫妻を介し、ネタニヤフとトランプは結びついているのだが、ここにきて両者の間に亀裂が入ったのではないかという見方が出てきた。ネタニヤフ政権が進めてきた政策が破綻していることが大きいだろう。ネタニヤフは処分されるかもしれない。
ネタニヤフ政権は2023年4月1日にイスラエルの警察官がイスラム世界で第3番目の聖地だとされているアル・アクサ・モスクの入口でパレスチナ人男性を射殺した。同年4月5日にはイスラエルの警官隊がそのモスクへ突入、ユダヤ教の祭りであるヨム・キプール(贖罪の日/昨年は9月24日から25日)の前夜にはイスラエル軍に守られた約400人のユダヤ人が同じモスクを襲撃、さらにユダヤ教の「仮庵の祭り」(昨年は9月29日から10月6日)に合わせて10月3日にはイスラエル軍に保護されながら832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入している。
ハマスを中心とする武装グループがイスラエルを攻撃したのはその直後、10月7日のことだった。その攻撃は「アル・アクサの洪水」と名付けられている。この攻撃の前にイスラエル軍はイスラム教徒を挑発していたのだ。
イスラエルがパレスチナ人を虐殺する理由は、パレスチナ人が先住民であり、その先住民を「浄化」する必要があると感じているからだろうが、パレスチナに「ユダヤ人の国」を作ろうとしたのはシオニスト。その背後にはイギリスの帝国主義者が存在する。
イスラエルは1948年5月14日に建国が宣言されたシオニストの国なのだが、シオニズムはエリザベス1世の時代(1558年から1603年)に始まった「ブリティッシュ・イスラエル主義」だと考えられている。アングロ-サクソン-ケルトは「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だと彼らは信じ、人類が死滅する最後の数日間にすべてを包括する大英帝国が世界を支配すると予言されているというのだ。カルトだ。
イギリスや西側世界にシオニズムを広めた人物としてブリティッシュ外国聖書協会の第3代会長を務めた反カトリック派のアントニー・アシュリー-クーパー(シャフツバリー伯爵)が知られている。17世紀初頭にイギリス王として君臨したジェームズ1世も自分を「イスラエルの王」だと信じていたという。
その息子であるチャールズ1世はピューリタン革命で処刑されたが、その革命で中心的な役割を果たしたオリヴァー・クロムウェルをはじめとするピューリタンも「イスラエルの失われた十支族」話を信じていたとされている。
クロムウェルは革命で仲間だったはずの水平派を弾圧、さらにアイルランドへ軍事侵攻して住民を虐殺。侵攻前の1641年には147万人だった人口は侵攻後の52年に62万人へ減少した。50万人以上が殺され、残りは「年季奉公」や「召使い」、事実上の奴隷としてアメリカなどに売られたと言われている。パレスチナで先住民を虐殺しているシオニストと同じようなことを行なっている。
イギリスでは王政復古で王位についていたジェームズ2世が1688年から89年にかけての「名誉革命」で追放され、オランダ出身のオラニエ公ウィレム(ウィリアム3世)がお王位につくが、それ以降、寡頭制の時代に入ったと言われている。そしてシオニズムが広がっていく。
19世紀のイギリス政界では反ロシアで有名なヘンリー・ジョン・テンプル(別名パーマストン子爵)が大きな影響力を持っていた。彼は戦時大臣、外務大臣、内務大臣を歴任した後、1855年2月から58年2月まで、そして59年6月から65年10月まで首相を務めている。ビクトリア女王にアヘン戦争を指示したのもパーマストン卿だ。
1896年に『ユダヤ人国家』という本を出版したセオドール・ヘルツルが「近代シオニズムの創設者」とされているのだが、「近代」という冠が曲者だ。シオニズムの流れをそこで断ち切りたいのだろうが、そうした見方は正しくない。遅くとも16世紀には始まっている。
イギリスで始まったシオニズムは19世紀に帝国主義と一体化し、パレスチナ侵略が具体化してくる。イギリス政府は1838年、エルサレムに領事館を建設し、その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査、イギリスの首相を務めていたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収。そして1917年11月、アーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ書簡を出してイスラエル建国への道を切り開く。いわゆる「バルフォア宣言」だ。
先住のアラブ系住民を消し去るため、シオニストは1948年4月4日に「ダーレット作戦」を発動、8日にデイル・ヤーシーン村で住民を虐殺している。アラブ人を脅し、追い出そうとしたのだ。
この作戦が始まるまでにエルサレム旧市街の周辺へユダヤ人が集中的に移民、人口の3分の2を占めるまでになっていた。この作戦は1936年から39年にかけて行われたパレスチナ人殲滅作戦の詰めだったという見方もある。
ダーレット作戦はハガナ(ユダヤ人の武装グループで、後にイスラエルの国防軍になった)が中心になって実行されたが、その副官を務めていたイェシュルン・シフがエルサレムでイルグンのモルデチャイ・ラーナンとスターン・ギャングのヨシュア・ゼイトラーに会い、ハガナのカステル攻撃に協力できるかと打診している。イルグンとスターン・ギャングは協力することになる。
まず、イルグンとスターン・ギャングはデイル・ヤシンという村を襲うが、この村が選ばれた理由はエルサレムに近く、攻撃しやすかったからだという。村の住民は石切で生活し、男が仕事で村にいない時を狙って攻撃するプランだった。
8日にハガナはエルサレム近郊のカスタルを占領、9日午前4時半にイルグンとスターン・ギャングはデイル・ヤシンを襲撃する。マシンガンの銃撃を合図に攻撃は開始、家から出てきた住民は壁の前に立たされて銃殺され、家の中に隠れていると惨殺、女性は殺される前にレイプされている。
襲撃直後に村へ入った国際赤十字のジャック・ド・レイニエールによると、254名が殺され、そのうち145名が女性、35名は妊婦だった。イギリスの高等弁務官だったアラン・カニンガムはパレスチナに駐留していたイギリス軍のゴードン・マクミラン司令官に殺戮を止めさせるように命じたが、拒否されている。ハガナもイルグンとスターン・ギャングを武装解除しようとはしなかった。(Alan Hart, “Zionism Volume One”, World Focus Publishing, 2005)
この虐殺を知ったアラブ系住民は逃げ出す。約140万人いたパレスチナ人のうち5月だけで42万3000人がガザ地区やトランスヨルダン(現在のヨルダン)に移住、その後1年間で難民は71万から73万人に達したと見られている。イスラエルとされた地域にとどまったパレスチナ人は11万2000人。そして5月14日にイスラエルの建国が宣言された。国際連合は同年12月11日に難民の帰還を認めた194号決議を採択したが、現在に至るまで実現されていない。そして同年5月14日にイスラエルの建国が宣言された。アラブ諸国の軍隊が参戦するのはその翌日からだ。
ところで、シェルドン・アデルソンはラスベガス(ネバダ州)、ベスレヘム(ペンシルベニア州)、さらにマカオ(中国)、マリナ湾(シンガポール)でカジノを経営、日本にもカジノを作らせるように要求していた。
2013年11月にアデルソンは来日、自民党幹事長代行だった細田博之と会った際、東京の台場エリアで複合リゾート施設、つまりカジノを作るという構想を模型やスライドを使って説明している。日本では2010年4月に「国際観光産業振興議員連盟(IR議連)」が発足していたが、このグループが動き、カジノ解禁を含めたIRを整備するための法案が国会に提出された。アデルソンはカジノ計画を2020年の東京オリンピックに間に合わせて実現するつもりで、14年2月に日本へ100億ドルを投資したいと語ったという。その計画は実現せず、現在、大阪でIRの建設が始まっている。
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「パレスチナ人虐殺で反イスラエル感情を煽り、ハマスに勝てないネタニヤフが窮地」(2025.05.11ML)
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