
【櫻井ジャーナル】2025.05.12XML:露国を簡単に倒せるという妄想から米大統領も抜け出せていない
国際政治ドナルド・トランプ米大統領はウクライナでの戦争を終わらせることが困難であることを認めたと伝えられている。バラク・オバマ政権がネオ・ナチを利用したクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した当時、欧米諸国はロシアとの戦争で簡単に勝ていると考えていたようだが、その間違った見通しを今でも引きずっているようだ。
オバマ政権は2014年2014年2月22日にビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒し、ウクライナを支配下に置いたが、ソ連時代にロシアからウクライナへ割譲された東部や南部の住民はクーデター政権を拒否、クリミアはロシアと一体化し、ドンバス(ドネツクやルガンスク)は武装抵抗を始めた。しかも軍や治安機関の約7割はネオ・ナチ体制を嫌って離脱、その一部は反クーデター軍に合流したと言われている。
つまり、クーデター体制は弱体。そこで新体制の戦力を増強する必要があり、そのための時間を稼ぐ必要があった。そこで使われたのが停戦協定。つまり、2014年のミンスク1と15年のミンスク2だ。アンゲラ・メルケル元独首相やフランソワ・オランド元仏大統領は後に、この合意がキエフのクーデター体制の軍事力を強化するための時間稼ぎだったと証言している。
これを含め、ロシアは西側と話し合いで問題を解決しようとしてきたが、いずれも失敗した。アメリカの元政府高官も西側が約束を守るはずがないと警告していたが、それでもロシア政府は話し合いにこだわったのである。
オバマ政権の中でウクライナに対するクーデター工作を主導したのはネオコンだが、この勢力はソ連が消滅する直前の1991年8月24日にウクライナの議会で独立が宣言されるが、その前、91年1月にクリミアではウクライナからの独立を問う住民投票が実施され、94%以上が賛成している。その民意を無視してクリミア議会はウクライナへの統合を決めてしまった。
さらに、ウクライナをNATOの支配下へ置くため、1994年2月に同国をNATOの「平和のためのパートナーシップ」へ、また97年にはNATOウクライナ委員会にそれぞれ加盟させる。これに伴い、NATOとウクライナ軍はポーランド国境付近にあるウクライナ軍のヤボリウ基地を軍事演習の司令部および作戦本部として使用し始めた。ロシア側から見ると、これは新たな「バルバロッサ作戦」が始まったことを意味する。
ロシア軍はウクライナに対する攻撃を始めてまもない2022年3月13日にヤボリウ基地を巡航ミサイルで攻撃している。ここでウクライナ軍は携帯式対戦車ミサイル「ジャベリン」などを使い、軍事訓練していると伝えられていた。
西側が工作を進めたにも関わらず、2004年の大統領選挙では東部や南部を支持基盤にし、中立政策を進めようとしていたヤヌコビッチが勝利してしまう。その結果を翻すため、アメリカは2004年から05年にかけて「オレンジ革命」と呼ばれたクーデターを実行、西側の傀儡だったビクトル・ユシチェンコを大統領に据えたのだが、ユシチェンコ政権は新自由主義政策を推進、不公正な政策で貧富の差を拡大させたことからウクライナ人の怒りを買う。そして2010年の大統領選挙では再びヤヌコビッチが勝利することなった。そこでクーデターを実行、西側はクーデター政権を正当だと主張するのだが、ウクライナの少なくとも半数の国民はその主張を認めていなかった。
トランプが掲げた「和平構想」が実現しない理由のひとつはここにあるが、それだけでなく、ロシアがウクライナにおいて西側と戦争する過程で製造能力が高まり、高性能兵器の開発が進み、戦闘体制も整った。こうした点で、すでにロシアは欧米諸国を上回っている。ウクライナに対する兵器の供与や戦闘員の派遣でロシアを脅すことはできない。これまで西側から煮湯を飲まされてきたロシア政府は戦場で決着をつけるつもりだろう。
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※なお、本稿は櫻井ジャーナルhttps://plaza.rakuten.co.jp/condor33/
「パレスチナ人虐殺で反イスラエル感情を煽り、ハマスに勝てないネタニヤフが窮地」(2025.05.11ML)
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