
植草一秀【連載】知られざる真実/ 2025年5月12日 (月) ルール順守もできない関西万博
社会・経済大阪万博を訪問する人数が想定をはるかに下回っている
有料入場者数が一定水準を超えないと赤字になる。
このため、集客に懸命になっている。
数字のつじつまを合わせるために、小中学校の児童生徒の無料招待が行われているが児童生徒のチケット代は公費から支払われる。
したがって、収支から無料招待分は差し引く必要がある。
入場者数が足りずに赤字になるのと税金を投入して無料招待するのは同じこと。
公費負担でない入場料収入で収支を計算して発表しないと万博事業の採算が取れたのかどうかが明らかにならない。
公費による無料招待については万博の収入金額から除外して計算する必要がある。
入場者不足を糊塗するためにスタッフの万博会場入り人数を盛り込んで数字を発表しているそうだが、姑息なことはやめるべきだ。
そもそも、公費で万博を開催する意味がない。
採算に乗る事業なら公費に頼らずに民間の力だけで開催すればよいだけのこと。
夢洲にIRを建設する目論見があるが、公共交通機関がないため、万博にかこつけて税金で公共交通機関を敷設することが万博開催の最大の目的だったのだと考えられる。
もとより、極めて筋が悪い。
これから日本は過酷な季節を迎える。
まず想定されるのが豪雨被害。
夏場から秋にかけては台風被害も想定される。
暴風によって人的被害が発生すれば目も当てられない。
近年の夏は暑く、熱中症の被害が懸念される。
木造建造物のリングの屋根は暴風が吹けば雨よけの役割を果たさない。
高齢者は日よけのない広い敷地を徒歩で移動することにより健康被害を被る恐れが高い。
入場者数が少なくても満足度が高ければいいとの主張が示されるが、わざわざ万博に足を運ぶ人が満足度が低いとは言わないだろう。
自己の行動を正当化するためにも「満足度が高い」と言うのが普通。
来場者のアンケート結果が良ければ問題なしとする姿勢に問題がある。
万博に行かないという人をアンケートの対象にするべきだ。
いかなる理由で万博に行く意思を持たないのか、あるいは、万博に行きたくないと思うのか。
このアンケートを実施すれば大阪・関西万博が日本国民全体にどのように評価されているのかが分かるはずだ。
万博を訪問した人だけを対象にするアンケートは協会の不正なスタンスを示すもの。
現時点での最大の問題は禁煙ルールが守られていないこと。
ルールを守れないならイベントを中止すべきだろう。
「会場内は禁煙」のルールを設置したのではないか。
ルール違反をしているのは一般入場者ではない。
開催側スタッフである。
開催側スタッフがルール違反の喫煙を行っている。
万博協会はルール違反の事実を確認しながら毅然とした対応を取らない。
パビリオンスタッフは運営側の人間。
運営側のスタッフがルールを守れずに、一般入場者にルールを守れと主張できるのか。
万博協会の高科淳副事務総長は会見でルール違反の喫煙の事実を確認していると述べた。
確認しているで処分の発表がない。
違反者が確認されたパビリオンは直ちに休館措置を取るべきだ。
設定したルールも守れない万博を開催する意味はないだろう。
万博の理念は〈いのち輝く未来社会のデザイン〉ということらしいが、設定した禁煙ルールを運営側に守らせることもできずに〈いのち輝く未来社会〉が出現するわけがない。
喫煙所が必要と考えるなら、当初の計画に盛り込む必要があっただろう。
会場ではメタンガスの爆発事故も発生している。
〈禁煙ルール〉の完全順守が確保されないなら、悲惨な大災害が発生してもおかしくない。
最大の問題はルール違反を確認しながらぬるい対応が取られ続けていること。
こんな万博は即時中止するべきだ。
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スリーネーションズリサーチ株式会社
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植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050