【連載】植草一秀の「知られざる真実」

植草一秀【連載】知られざる真実/ 2025年5月14日 (水) エゴ吹き荒れる新幹線敦賀延伸

植草一秀

北陸新幹線の大阪延伸問題の紛糾はこの国の劣化を象徴する事案。

日本全体にとって何が最善であるかを考えて結論を導くべきだ。

ところが、それぞれの主体が〈自己の利益〉を基軸に主張を展開している。

愚の骨頂だ。

わが町に新幹線を呼び込みたい。

この発想自体が時代遅れの昭和の発想だ。

わが町がどうなるではなく、日本全体にとって何が最善かを考えるべきだろう。

急激な勢いで少子高齢化が進む。

住宅でさえ過剰になる時代。

日本経済の衰退は目を覆うばかり。

ほとんどの国民が老後の生活が成り立つのかどうかを不安に感じている。

財政危機が叫ばれるが、社会保障支出を切り刻めとの号令が発出されるほど日本の財政事情が悪化している。

財政事情が悪化している局面での財政対応においては

「不要不急の財政支出を抑制する」

が基軸に置かれねばならない。

敦賀まで建設された北陸新幹線。

バイパスとしての機能を確保するには早期の延伸実現が必要。

建設費と工期を考慮すれば米原ルート、あるいは湖西線ルートに勝る方策はない。

米原-新大阪間は現在の東海道新幹線を活用することになるが、バイパス機能を重視するなら、のちに米原-新大阪間にバイパスを建設することを検討してもよいだろう。

東海道新幹線とのダイヤ調整が必要になるなら、米原-新大阪間を複々線化することを検討するべきだ。

ここに浮上するのがJR西とJR東海の利害調整。

しかし、企業の利害が前面に出て、国民の利益が軽んじられること自体がおかしい。

民営化は国民の利益を増大させるために実施されたものであって、分割民営化されたJR各社の企業エゴを放置することが是認されることがおかしい。

国家の見地、国民の見地から判断されるべきものだ。

小浜ルートを採用すれば工期と工費がけた違いに大きくなる。

これに巨額の資本を投下することが妥当な時代でなくなっている。

可能な限り安価で、可能な限り早期に開通させることが望ましい。

滋賀県は米原ルートに反対しているが、その理由は滋賀県にとってメリットが小さくデメリットが大きいということ。

新幹線新駅はせいぜい一つしか新設されないのに費用負担を負うことになる。

さらに並行在来線の費用負担が大きくのしかかる。

要するにこれも〈自己の利益〉が判断の基準なのだ。

問題点があるなら、その問題点を克服すればよいだけのこと。

京都府は京都市で猛烈な反対運動が生じているが、北部では新幹線を求める声が強く、府としての方針を示せずにいる。

しかし、小浜ルートは敦賀-小浜間で大きな問題が生じないが、小浜-京都間が大難工事になる。

残土の問題も生じる。

さらに京都市内の地下を掘削すれば地上の水に重大な問題が発生する恐れが懸念される。

誰がどう考えても、米原ルートか、湖西線=京都ルートしか現実的な選択がない。

この問題をこじらせているのが西田昌司参議院議員。

憲法記念日に沖縄でひめゆりの塔展示に関連して暴言を吐いて謝罪・撤回に追い込まれた人物。

強引に小浜ルートを強行しようとしている。

7月参院選では西田昌司氏に対する落選運動が大規模に展開されることになると予想される。

結論は三つに要約できる。

第一は、速やかに米原ルートまたは湖西線ルートでルートを確定する。

第二は、JR西とJR東海の利害調整を政府が責任をもって執り行なう。

第三は、費用と工期を優先する。

当たり前の内容だ。

エゴを排除して早期に国民にとっての最善策を政府が主導して決定するべきだ。

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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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