
植草一秀【連載】知られざる真実/2025年5月16日 (金) 孫崎享著『私とスパイの物語』
社会・経済とても面白い本を紹介させていただく。
孫崎享著
『私とスパイの物語』(ワニブックス)
紹介文には次のようにある。
元駐イラン大使・元国際情報局局長 孫崎享。
元外務省・情報機関のトップが書き残す、世界の諜報活動の実態と自伝的回想録!
日本で最もスパイと接触、交流した人物が描き出す圧倒的迫力で迫るスパイ・ノンフィクション
孫崎氏は東京大学法学部在学中に外交官試験に合格。
東大を中退して外務省に入省。
英国、ソ連、イラク、カナダに駐在。
その後、駐ウズベキスタン大使、駐イラン大使を歴任した。
外務省本省では国際情報局長を務められた。
本書の最大の特徴は〈実話〉であること。
私とは別人の〈スパイ〉について記述しているが、
私自身が〈スパイ〉の側面を有するということ。
末尾に「私は「スパイ」の世界の外の人間」と記述されているが、十分に良い意味での〈スパイ〉の範疇に含めてもよい気がする。
外務省に入省した孫崎氏の足跡に沿うかたちで〈物語〉は語られる。
歴史に記録されるさまざまな事象が登場する。
多くの事象が人々の耳目を集めた重要事実である。
孫崎氏は多くのスパイ映画を紹介する。
そのスパイ映画が現実の事実と交錯する、と孫崎氏は語る。
現実の実相を知らなければ、微に入り、細に入る描写を施すことはできないという。
誰もが知る著名な映画の著名な俳優が実はスパイであったという事実も披歴される。
世界で一番有名な反戦歌とも言われる『花はどこへ行った』。
孫崎氏が好きな曲。
「ずいぶん時間が経った。
全ての花はどこに行ってしまったのか?」
との問いかけから、主題が、花から花を摘んだ若い女性に、若い女性から兵隊に、兵隊から墓場に、墓場から再び花に移り替わる。
そして、「いつになったら皆が分かるのだろう?いつになったら皆が分かるのだろう」の言葉で締めくくられる。
戦争を絶対にやめようとの思いが込められた歌。
ピーター・ポール&マリー、ボブ・ディラン、ジョーン・バエズなど、多くのアーティストが歌ってきた。
そのなかで、孫崎氏はマレーネ・ディートリヒの歌い方が心に最も染みるという。
Marlene Dietrich
“Where Have All the Flowers Gone?”
Live TV, 1963
たしかに心に染み入る歌声である。
数々の人生の難関を乗り越えてきた人にしか醸し出せない歌声だと孫崎は語る。
孫崎氏は彼女が三重スパイであったと言われても全く驚かないと言う。
彼女の魅力はスパイと呼ばれる人々の中にある魅力かもしれないという。
外交官とスパイはどこが違うのか。
外交官は相手の国内法を守って行動する。
しかし、スパイは反モラル的行動や、相手国の法律にとらわれずに行動する、とのこと。
007の映画を見るとスパイの世界が華麗に描かれる。
しかし、現実はそのようなきれいごとではない。
米国の情報機関であるCIAは2つの柱によって構成されている。
〈情報部門〉と〈工作部門〉。
〈工作部門〉に禁忌=タブーはない。
なんでもやる。
この事実を私たちは正確に知っておく必要がある。
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スリーネーションズリサーチ株式会社
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植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050