
【櫻井ジャーナル】2025.05.25XML: 1970年代から続いてきた修正主義シオニストの天下が揺らいでいる
国際政治ドナルド・トランプはMAGA(アメリカを再び偉大に)という標語を掲げ、ネオコンと戦っている。COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動やウクライナにおけるロシアとの戦争において両者の違いは明確に表れているが、共通項もある。シオニストだということだ。
シオニストはシオニズムを信奉する人びとだが、均一な集団とは言えない。現在、ガザでパレスチナ人虐殺を指揮しているベンヤミン・ネタニヤフ首相は1920年代にウラジミル・ジャボチンスキーが東ヨーロッパで作り上げた「修正主義シオニズム」に属している。
ベンヤミン・ネタニヤフの父親であるベンシオン・ネタニヤフは1910年3月にワルシャワで生まれた。1940年にアメリカへ渡り、数カ月間、ジャボチンスキーの秘書と務めている。ベンシオンは第2次世界大戦後にコーネル大学などで教鞭を執ることになった。
ジャボチンスキーが親しくしていたレオ・シュトラウスはネオコンの思想的な支柱と言われる人物。1899年にドイツの熱心なユダヤ教徒の家庭に生まれ、17歳の頃にジャボチンスキーのシオニスト運動に加わった。カルガリ大学のジャディア・ドゥルーリー教授に言わせると、彼の思想は一種のエリート独裁主義で、「ユダヤ系ナチ」にほかならない。(Shadia B. Drury, “Leo Strauss and the American Right”, St. Martin’s Press, 1997)
ストラウスは1932年にロックフェラー財団の奨学金でフランスへ留学し、中世のユダヤ教徒やイスラム哲学について学ぶ。その後、プラトンやアリストテレスの研究をはじめ(The Boston Globe, May 11, 2003)、1934年にイギリスへ、37年にはアメリカへ渡ってコロンビア大学の特別研究員になる。1944年にはアメリカの市民権を獲得、49年にはシカゴ大学の教授になった。
ストラウスと並ぶネオコンの支柱とされている人物が、やはりシカゴ大学の教授だったアルバート・ウォルステッター。冷戦時代、同教授はアメリカの専門家はソ連の軍事力を過小評価していると主張、アメリカは軍事力を増強するべきだとしていたが、その判断が間違っていたことはその後、明確になっている。
1970年代には修正主義シオニズムの政党、リクードが台頭してくるのだが、それを後押ししたのはキリスト教シオニストと言われているアメリカの福音派。1974年8月にアメリカではデタント(緊張緩和)を打ち出していたリチャード・ニクソン大統領がウォーターゲート事件で失脚、副大統領を務めていたジェラルド・フォードが大統領に昇格した。
フォード大統領はデタント派を粛清する一方、後にネオコンと呼ばれるグループを台頭させた。たとえば国防長官をジェームズ・シュレシンジャーからドナルド・ラムズフェルドへ、またCIA長官をウィリアム・コルビーからジョージ・H・W・ブッシュへ交代させている。
1970年代にイスラエルとアメリカでジャボチンスキーの後継者が影響力を拡大させるのだが、そのグループに含まれるシンクタンクの「IASPS(高等戦略政治研究所)」は1996年にイスラエル新戦略研究グループを編成、リチャード・パールを中心とするネオコンたちが「クリーンブレイク:国家安全保障のための新たな戦略」なる文書をネタニヤフ首相への提言として作成した。
その中で修正主義シオニスト、いわゆるネオコンはその中で「シオニスト運動を支配してきた労働シオニズムは、失速し、鎖でつながれた経済を生み出した」と主張、イスラエルの国家としての正当性を損なうことになったとしている。つまり労働シオニズムを否定しているのだ。
その修正主義シオニストがここにきて影響力を弱め、トランプ米大統領との関係も微妙になってきた。イスラエル国内でも対立が深まっている。パレスチナ人を大量虐殺しているイスラエル政府に対する批判は、西側の有力メディアが援護しているものの、世界中で高まっている。この状況を懸念するシオニストはネタニヤフたちに責任をなすりつけて処分するかもしれない。
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「1970年代から続いてきた修正主義シオニストの天下が揺らいでいる 」(2025.05.25ML)
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