
☆イスラエルによる「ジェノサイド(集団大虐殺)」再考、その2――医療従事者を次々と殺害することで大量殺戮のさらなる拡大
国際国際教育(2025/05/18)
ラベンダー(イスラエル軍のAIによる殺人マシーン)
大イスラエル(イスラエルがパレスチナにつくろうとしている巨大国家)
アドナン・アル・ブールシュ(Adnan al-Bursh、医師。イスラエルの刑務所で拷問死)
フッサム・アブ・サフィヤ(Hussam Abu Safiya、ガザ地区カマル・アドワン病院院長、イスラエル軍によって拉致されたまま行方不明)
ガザの惨状「空爆下の子ども」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2912.html
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前回のブログでは、イスラエル軍がAIによる殺人マシーン「ラベンダー」を使って、いかに民間人を殺戮してきたかを紹介しました。
この殺人マシーン「ラベンダー」を使えば、ハマスの下級工作員一人につき15人から20人までの民間人を殺害してもよいとされていました。
それどころか、対象がハマスの高官であった場合、100人以上の民間人の殺害(巻き添え殺人)を許可されていたのです。
このように冷酷無比のイスラエル軍ですから、パレスチナを更地(さらち)にしてそこに「大イスラエルGreat Israel」をつくろうと目論んでいるネタニヤフ首相が、もっと多くのパレスチナ人を殺すために、さらに新たな手段を考えるのは自然の成り行きでしょう。
こうして考え出されたのが医療従事者やその救援部隊を殺害するという方法でした。というのは、「ハマスの下級工作員一人につき15人から20人までの民間人を殺害してもよい」とされていたにしても、その「巻き添え被害者」が即座に救出され、治療を受けて命を救われたとすれば、効果半減だからです。
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さて、このようにして考え出されたのが医療従事者やその救援部隊を殺害するという方法でしたが、その方法を生々しく報道していたのが前回のブログ冒頭で紹介した次の記事(2)でした。
(1)‘Lavender’: The AI machine directing Israel’s bombing spree in Gaza
「ラベンダー:イスラエルによるガザでの爆撃を指示するAIマシン」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2430.html(『翻訳NEWS』2024-04-25)
(2)Dr Abu Safiya Symbolised Humanity in Gaza. Israel and the West Are Destroying It
「ガザにおけるアブ・サフィヤ博士は人道主義の象徴だった。イスラエルと西側はその存在を抹殺しつつある」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2912.html(『翻訳NEWS』2025-01-21)
実を言うと、つい最近『翻訳NEWS』には次の記事も載せられたことを知ったので、その記事も捨て難かったのですが、上記(2)の記事を紹介するだけでも大きな紙面が必要になるので、やむなく断念することにしました。しかし時間と興味のある方は、ぜひ覗いていただければ幸いです。
* How Israel Hunts and Executes Palestinian Medics
「エバ・バートレット(Eva Bartlett):イスラエル軍によるガザ医療関係者の処刑」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-3147.html(『翻訳NEWS』2025-05-11)
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さて、この記事(2)は次のような書き出しで始まっていました。
2024年のニュースを捉えた写真といえば、これだろう。
ガザ北部に現存する最後の主要医療施設であるカマル・アドワン病院の残骸をかき分けながら、白い白衣を着たフッサム・アブ・サフィヤ医師が、砲身を向けた2両のイスラエル軍戦車に向かっているところだ。昨年は、イスラエルがこの小さな飛び地(ガザ)にもたらした死と破壊一色だった。
我々が知っている数でいえば何万人ものパレスチナ人の虐殺と、少なくとも10万人以上の肢体不具者。全住民の飢餓状態。都市と農地の更地化。ガザの病院と医療部門の組織的抹殺。そのなかにはパレスチナ人医療従事者の殺害、大量逮捕、拷問が含まれる。そんな光景が展開していたのが昨年だったのだ。
上記の記事冒頭で「2024年のニュースを捉えた写真と言えば、これだろう」と書かれている「写真」とはどのようなものだったのでしょうか。この記事では白衣を着たひとりの人物が歩いている写真が載せてあるだけでした。
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しかし記事の説明では「ガザ北部に現存する最後の主要医療施設であるカマル・アドワン病院の残骸をかき分けながら、白い白衣を着たフッサム・アブ・サフィヤ医師が、砲身を向けた2両のイスラエル軍戦車に向かっているところだ」と書かれています。
ここでは「白い白衣を着たフッサム・アブ・サフィヤ医師が、砲身を向けた2両のイスラエル軍戦車に向かっているところだ」と書かれていますが、「2両のイスラエル軍戦車」というのが見当たらないのです。
そこで念のためにネットに載せてある写真をクリックしてみると、この写真はAgnes Callamardという女性が携帯のカメラで撮ったであろう写真の一部であることが分かりました。確かに彼女が撮った写真の上部には二台の戦車が映っています。その写真は次のようなものでした。
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この写真について上の記事は次のような説明を加えていました
昨年2024年の最後の数日で撮られた1枚の写真がある。それはすべてを語っている。
そこには、イスラエル軍に包囲され、イスラエル軍の砲弾や無人機に攻撃され、イスラエル軍の狙撃兵にスタッフを狙撃されながらも、病院の運営を維持するために命をかけていた一人の医師が、彼と彼の部下を根絶しようとする部隊に勇敢に立ち向かっている姿が写っていた。
彼は自分の患者やスタッフに劣らず、みずから個人的な代償を払っていた。なぜなら2024年10月には、彼の15歳の息子イブラヒムが、イスラエルの病院襲撃の際に処刑された。1カ月後、彼自身もイスラエルの攻撃による破片で負傷した。12月27日までに、病院はイスラエルの野蛮な攻撃にもはや耐えられなくなった。拡声器がアブ・サフィヤに戦車の方に来るよう要求すると、彼は瓦礫の上を険しい顔で歩き始めた。
カマル・アドワン病院の命を守る戦いが突然幕を閉じた瞬間だった。ジェノサイドのイスラエルの戦争マシンが、ガザ北部の人道主義の最後の前哨基地に対してあらかじめ予測できた勝利を収めたのだ。
これを読むと、アブ・サフィヤ医師は、2024年10月に15歳の息子をイスラエル軍の病院襲撃で失っていることが分かります。しかも、その1か月後には彼自身もイスラエルの攻撃による破片で負傷しているのです。
そしてついに12月27日には、イスラエル軍は、カマル・アドワン病院の院長だったアブ・サフィヤ医師に、拡声器で投降するよう呼びかけたのでした。こうして院長が不在となった病院にイスラエル軍は火を放ち、完全に破壊したのでした。
この記事では、この光景を「拡声器がアブ・サフィヤに戦車の方に来るよう要求すると、彼は瓦礫の上を険しい顔で歩き始めた。カマル・アドワン病院の命を守る戦いが突然幕を閉じた瞬間だった」と表現しています。
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イスラエル軍は「カマル・アドワン病院がハマスの拠点になっているから破壊する」「したがって病院内にいる患者はすべて他所へ避難させろ」と指示したようです。しかし、そのために与えられた時間は、たった15分でした。
この間の経過を先の記事は次のように説明していました。
カマル・アドワン病院の場合、負傷者、重病者、出産間近の者は、点滴を外し、病床から出て、破壊された中庭に「非難」するための時間を15分間しか許されなかった。その後、イスラエル軍は病院に火を放った。
この種の「避難」はただ一つのことを意味する:患者はすでに抱えた傷や病気、あるいは栄養失調で死ぬことになる。さらには寒さで死ぬ人も増えてくるのだ。
ガザの住民のほとんどが住むようになったテント野営地で、毛布も適切な衣服もないまま、家族がキャンバス地にくるまり、冬の夜、身を寄せ合う中、低体温症で死亡する赤ちゃんの数が増えている。
アブ・サフィヤ投降の写真は、誰が「ダビデ」で誰が「ゴリアテ」であるか、誰が「人道主義者」で誰が「テロリスト」であるかを一点の曇りもなく明確にした。
ここで「ダビデとゴリアテ」という言葉が出てくるのですが、これは少年ダビデが巨人戦士 ゴリアテを倒すという旧約聖書 『サムエル記』の逸話から、小さな者が大きな者を倒す例えとして用いられます。
ですから、アブ・サフィヤ投降の写真は、イスラエル軍という「ゴリアテ」の姿をマザマザと示すことになりました。まさに、誰が「ダビデ」で誰が「ゴリアテ」であるか、誰が「人道主義者」で誰が「テロリスト」であるかを一点の曇りもなく明確にした写真でした。
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実はそのとき、カマル・アドワン病院の看護部長イード・サッバ医師は次のように抗議したそうですが、当然イスラエル軍は聞く耳をもちません。
「危険な状態だ。集中治療室(ICU)には、昏睡状態で人工呼吸器を必要とする患者が複数いる。移動させたら、彼らを危険にさらすことになる」
「(イスラエル)軍がこれらの患者の移送を続けるつもりなら、特殊な車両が必要になる」
「移送先は病院と呼べるような場所ではない。むしろ避難所だ。患者のための設備が整っていない。発電機や水がなく機能していない」
ですから、先述の記事は、さらに次のような説明を付け加えています。
何よりも、この事件は、西側諸国の政治およびメディアが過去15カ月間、ガザに関する大嘘を広めてきたことを明らかにした。彼らは流血を終わらせようとはせず、隠蔽、言い訳しようとしてきたのだ。
だから、アブ・サフィヤがイスラエルに誘拐され、病院が破壊されたという、2024年をもっともよく象徴する写真が、その一面どころか、主流メディアのどこにもほとんど掲載されなかったのだろう。
億万長者のオーナーからの給料に頼っている外国人編集者や写真編集者のほとんどは、2024年を象徴するアブ・サフィヤの写真を世間に公表しないことにしたようだ。 しかし、ソーシャルメディアはそうしなかった。一般ユーザーがそれを広く広めた。彼らはそれが何を表していて、何を意味しているかを理解していたのだ。
先に紹介した「拡声器がアブ・サフィヤに戦車の方に来るよう要求すると、彼は瓦礫の上を険しい顔で歩き始めた」という写真は、プロの報道記者によるものではなく、まさに上記のようなソーシャルメディアのちからを示すものでした。
イスラエル軍によって拉致されたアブ・サフィヤ医師
https://www.instagram.com/arabnews.jp/reel/DFNIwWSNqKi/(動画1分)
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ところでアブ・サフィヤ医師はイスラエル軍によって拉致されたあと、その後どうなったのでしょうか。あの写真のあとサフィヤ医師はどこへで連れて行かれたのでしょうか。この記事はその後を次のように追求しています。
これは知られている中では、アブ・サフィヤの最後の写真でもある。この数分後、彼はイスラエル兵士によっていわゆる「逮捕」(つまり拉致)され、イスラエルの拷問収容所へ連れ去られた。そして消息不明となった。
イスラエル軍は彼の所在を知らないと何日も主張していたが、ついに彼を隔離拘禁していることを認めた。何とか認めたのは、地元の医療権を主張する団体がイスラエルの裁判所に申し立てを行なったからのようだ。
ますます増える報告によると、アブ・サフィヤは現在、イスラエルの拷問施設の中で最も悪名高いスデ・テイマンに収容されている。そこでは昨年、兵士たちがパレスチナ人の受刑者を警棒で内臓が断裂するまで暴行している様子がビデオに撮られていた。
これを読むと、イスラエルがアメリカ顔負けの拷問をおこなっていることが分かります。というよりも、イスラエルで開発された拷問方法がアメリカでも使われていると言った方がよいのかも知れません。
上の引用では「兵士たちがパレスチナ人の受刑者を警棒で内臓が断裂するまで暴行している様子がビデオに撮られていた」とあったので、調べてみたら次の動画が見つかりました。4分程度の動画ですから時間のある方はぜひ見てください。
拷問で悪名高いイスラエルのスデ・デイマン刑務所
https://edition.cnn.com/2024/08/09/world/video/israel-sde-teiman-alleged-prisoner-abuse-footage-diamond-tsr-digvid
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さて上の記事は次のように続いていました。
ただひとつ望みは、アブ・サフィヤ医師が、彼の同僚でガザのアル・シーファ病院の整形外科部長であるアドナン・アル・ブールシュ医師の運命を辿らないことだ。
ブールシュ医師は、オフェル刑務所で4ヶ月間の虐待を受けた後、看守によって庭に捨てられた。下半身は裸で、血を流し、立つこともできなかった。その後彼は死んだ。人権機関や国連の報告書や、内部告発した収容所の看守の証言は、パレスチナ人囚人の組織的な殴打、飢餓、性的虐待、強姦を伝えている。
イスラエルは、ガザで最も有名な小児科医アブ・サフィヤをハマスの「テロリスト」であると非難している。
さらに240人がカマル・アドワン病院から拉致されたが、イスラエルは彼らを「テロ容疑者」だと主張している。おそらく彼らは患者や医療スタッフが中心で、同様に恐ろしい状況で収容されている。
上の記事では、ガザのアル・シーファ病院の整形外科部長であるアドナン・アル・ブールシュ医師が、「オフェル刑務所で4ヶ月間の虐待を受けた後、看守によって庭に捨てられた」とあります。
ブールシュ医師はそのとき「下半身は裸で、血を流し、立つこともできない」という状態で、その後、彼は死にました。だとすると、アブ・サフィヤ医師も同じ運命をたどる可能性があるわけです。
ちなみに次の動画では、アブー-サフィヤ医師の息子さんが世界に向かって訴えています。サフィア医師の奥様がカザフスタン出身である関係で、カザフスタンから訴えている動画のようです。
https://x.com/atsyjp/status/1874061418263380072(1分14秒)
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さてイスラエルは、ガザで最も有名な小児科医アブ・サフィヤをハマスの「テロリスト」であると非難しています。
どうもガザで働く医療関係者はすべて「テロリスト」として扱われるようです。さもないと、病院を破壊し医療従事者を殺し尽くさなければ「民族浄化作戦」は完成しないからでしょう。
もし民家を攻撃し多くの女性・子どもを殺して「将来のテロリスト」や「これから生まれてくるテロリスト」を抹殺しようとしても、爆撃による負傷者が医療のおかげで生き延びたとすれば、イスラエルの目論見(もくろみ)は水の泡になるからです。
では、どのような論理でイスラエルは医療関係者を「テロリスト」として扱うことができるのでしょうか。
この記事では、そのイスラエルの「精神病的」論理を次のように説明していました。
イスラエルの精神病的論理によれば、ガザのハマス政府のために働く者、つまりガザの大組織のひとつに雇用されているアブ・サフィヤ医師のような者は誰でもテロリストとみなされるのだ。
その延長線上で、イスラエルがカマル・アドワン病院を決めつけたように、いかなる病院も「ハマスのテロリストの拠点」として扱われる可能性がある。なぜなら、ガザの病院はすべてハマス政府の権限の下にあるからだ。
だから、すべての医療施設を破壊し、すべての医師を「逮捕」して拷問し、すべての患者を強制的に「避難」させるべき、となるのだ。
したがって、いかなる病院を破壊しても、その地下にハマスの要員が隠れていたからだと言えばよいわけですし、その地下にはハマスの拠点があったからだと言い訳ができます。
そして完全に破壊してしまえば、それが嘘だったという証拠も発見するのが極めて難しくなります。
イスラエル軍による空爆の標的となったガザ市アル・リマル民衆地区
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2430.html
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しかし、イスラエルがいくら嘘を積み重ねても、世界中から援助に来ていた医療従事者が、その嘘を暴いてくれています。
その彼らの証言を読むと、ネタニヤフ政権の冷酷さとイスラエル軍の残虐さが浮き彫りなってきます。それを先述の記事は次のように説明しています。
注目すべきは、ガザでボランティア活動を行なった西側諸国の上級医師たちのうち、帰国後、自分たちが働いていた病院の至る所をうろついていたとされる武装した「ハマスのテロリスト」を見たと報告した人が一人もいなかったことだ。
しかし、これらの西側の医師たちは、イスラエルがガザの病院や医療センターをやりたい放題に破壊することを正当化したイスラエルの際限のない偽情報に対抗するものとして、メディアからインタビューを受けることはほとんどなかった。
要するに、西側の報道機関はロシアやプーチン大統領を悪魔化する記事はいくらでも捏造(ねつぞう)しても、パレスチナ=ガザ地区の真実については、まったく報道することはないのです。
ですから私たちは、「集団墓地」を初めとする次のような恐ろしい事実をほとんど知る機会がありません。
兵士たちは次々と病院に侵入し、病棟や手術室、そして集中治療室(ICU)を破壊した。
強制的な「避難」はそれぞれ悲惨な結果を生んだ。未熟児は保育器の中で餓死するか凍死するか、した。重病患者はベッドから追い出された。
彼らを収容しようとした救急車は爆破された。そしてそのたびにガザの医療スタッフは一斉に集められ、衣服を剥ぎ取られて消息不明となった。イスラエル軍が攻撃を終えた後、病院敷地内の仮設集団墓地で身元不明の死体が発見されたことにも、西側諸国のジャーナリストはほとんど関心を示さなかった。
その死体には首を切断されたり、身体が切断されたり、生き埋めにされた形跡があったりした。こうした理由などから、国連人権高等弁務官事務所は先週、「パレスチナ人が安全だと感じられる唯一の聖域であるガザの病院は、実際には死の罠(わな)と化した」と結論づけた。
ガザ地区南部ラファの空爆現場でのパレスチナ人
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2430.html
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このようにイスラエルの蛮行「民族浄化作戦」は、あれだけひどい惨劇が繰り広げられていても、ひとびとの話題にものぼることは、まずありません。ウクライナ紛争とは大違いです。
つい最近でも、Yahooニュースは今井佐緒里記者の名前で次の記事を載せましたが、プーチン大統領のウクライナにおける「特別作戦」は、ドンバス2カ国の援助要請によるもので、「侵略」ではありませんでした。
*プーチン大統領を「侵略の罪」で裁ける? 欧州が団結して設置する「特別法廷」を知るための5つのポイント
https://news.yahoo.co.jp/articles/815c766047e4405a2b6614098adc9961f55eb681?page=1
それどころか、そもそもウクライナ紛争の原点は2014年のクーデターにありました。そのことは拙著『ウクライナ問題の正体』全3巻でも詳述しましたし、最近になってトランプ大統領も同じことを公言するようになっています。
当時の国務次官補ヌーランド女史が﹁この政変を実現するために50億ドル(約6700億円)をかけた﹂と講演しているようすは、ドキュメンタリー『ウクライナ・オン・ファイヤー』でも見ることができます。
またドンバス2カ国は2014年以降、ウクライナ軍による攻撃で8年間に1万4000人も殺されています。ウクライナ軍は民家や公共施設を攻撃しているからで、これは明らかな戦争犯罪でした。だからこそプーチンに助けを求めたのでした。(『ウクライナ問題の正体』第1巻第7章)
他方、ロシア軍の「特別作戦」は民家や公共施設を攻撃しませんから、ウクライナ軍を後退させるのに3年以上もかかっているのです。元財務次官ポール・クレイグ・ロバーツが「お人好しのプーチン。3か月で終わる戦争に3年以上もかけている」と揶揄されている始末です。
このような現状とガザ地区の惨状を比べれば、「戦争犯罪を裁く特別法廷」が必要なのはウクライナかパレスチナ=ガザ地区なのか、一目瞭然のはずです。今井佐緖里記者の眼は見えるものも見えないほど歪んでいるのでしょうか。
ICJ(国際司法裁判所)やICC(国際刑事裁判所)がイスラエルに「ジェノサイド(集団大虐殺)をやめろ」と命じたり、ネタニヤフ首相に逮捕状を出したりしていても、彼女はガザの惨劇について報じる気がないとすれば、彼女の人権感覚はどうなっているのか疑いたくなります。
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なぜ日本を初めとする西側のメディアは、これほど歪んでしまったのでしょうか。
それを私が今まで引用し紹介してきた記事は、その末尾で次のように見事にまとめています。
西側の指導者たちは、イスラエルがガザの偉大な治療者の一人であるアブ・サフィヤ医師を拷問キャンプの一つに引きずり出したことを知っている。
そこでは、彼はほぼ確実に他の囚人と同様に、飢えさせられ、断続的に殴られ、屈辱を与えられ、恐怖にさらされているのだ。イスラエルが現在行なっていることは、ガザの病院を解体したのと同じように、彼の肉体的、精神的な回復力を弱め、破壊することだ。
イスラエルは「テロリスト」を撲滅しているのではない。ガザを荒れ地、地獄絵図に変えようとしているのだ。
そこでは良きものは何一つなく、介護する人間は皆無。自分の人道主義を貫こうとするものは存在できない。そこではもはや医師は存在せず、援助隊員は記憶の彼方に追いやられ、思いやりはお荷物でしかない。戦車とギャング的犯罪者たちが支配的な場所となる。西側諸国の政治およびメディアの役割は、これらすべてをできるだけ日常的かつ普通のことのように見せることだ。彼らの役割は、私たちの心を麻痺させ、関心や抵抗の能力を空洞化し、私たちを無感覚にすることだ。
だから私たちは、アブ・サフィヤ博士のために、そして私たち自身のために、彼らが間違っていることを証明しなければならない。
ここで述べられているように、「西側諸国の政治およびメディアの役割は、私たちの心を麻痺させ、関心や抵抗の能力を空洞化し、私たちを無感覚にすること」なのです。
しかしそのためには大手メディアの記者自身が「自分の心を麻痺」させなければならないのです。だから今井記者の心も「麻痺」し、見えて当然のものも見えなくなってしまったのでしょう。
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ここまで書いてきて、そして書くためにいろいろ調べているうちに、政府やメディアが私たちの心を「麻痺」させ、関心や抵抗の能力を「空洞化」し、私たちを「無感覚」にする努力を重ねているにもかかわらず、その流れにしぶとく抵抗している民衆がいることを発見したことでした。
次の動画を見てください。
イスラエル軍による医療従事者の大量殺害に抗議するデモ
https://www.instagram.com/arabnews.jp/reel/DFNIwWSNqKi/(2025/01/24)
これまで私が引用・紹介してきた記事は、「私たちはアブ・サフィヤ博士のために、そして私たち自身のために、彼らが間違っていることを証明しなければならない」という一文で閉じられていました。
が、そのように行動している人たちが日本にも確実に存在していることに、私は大きな希望を感じました。
※なお、本稿は、百々峰だより「イスラエルによる「ジェノサイド(集団大虐殺)」再考、その2――医療従事者を次々と殺害することで大量殺戮のさらなる拡大 2025/5/18」からの転載であることをお断りします。
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