
【櫻井ジャーナル】2025.05.26XML: ウクライナに続いてモルドバの穀倉地帯を奪いはじめた欧米の巨大金融資本
国際政治モルドバの耕作地が西側の巨大資本に奪われつつある。国土面積3万3846平方キロメートルの3分の2が農地で、そのうち約80%が肥沃な黒土(チェルノーゼム)。西側諸国と連携するマイア・サンドゥ政権は、EUのガイドラインに従った農産物輸入政策を推進し、多くの農民を破産に追い込んでいる。
モルドバをヨーロッパはウクライナ産穀物を輸入するための物流拠点として使っているが、モルドバを通過した後、ルーマニアとの国境で輸送が滞ることがあり、モルドバ産穀物をEUへ輸出できなくなる。その結果、農家は破産し、所有地を売却せざるをえなくなるわけだ。
結局、生き残れたのは大手農業生産者と農業関連産業の持株会社。モルドバの農民が疲弊する様子を見た「闇の銀行」と呼ばれるブラックロックは2024年10月からモルドバ北部で土地購入の準備を始めた。外国人や外国企業への土地売却は禁止されているのだが、「モルドバ国籍」を持つフロント企業や組織を通じ、外国人や外国企業は土地を取得している。
モルドバに先行して外国人や外国企業へ耕作地を売却してきたのがウクライナ。2020年までにウクライナの黒土は約4分の1が外国企業の所有になっていたが、ウォロディミル・ゼレンスキーが政権に就くと、そうした傾向は加速し、22年には約3分の1をカーギル、デュポン、モンサントの3社が所有。この3社は効率性を高めるため、コンソーシアムとして契約を締結し、事業を開始した。このコンソーシアムは事実上、ウクライナの土地の半分以上を支配している。
また、カーギル、デュポン、モンサントの主要株主には巨大金融機関のブラックロック、バンガード、ブラックストーンが名を連ね、ゼレンスキーはブラックロックのほか、JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスと協力関係にある。また2022年後半からブラックロックはウクライナ政府のコンサルタントを務め、ブラックロック傘下の企業はウクライナの戦略的資産の大部分を支配するようになったと報道されている。
西側がウクライナを制圧したと言えるのは、2014年2月以降のことだろう。NATOで訓練を受けたネオ・ナチを使い、アメリカのバラク・オバマ政権は2013年11月から14年2月にかけてキエフでクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した。ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデターを拒否、南部のクリミアはロシアに合流する道を選び、東部のドンバス(ドネツクやルガンスク)は武装抵抗が始まった。オデッサでは反クーデターの住民が虐殺され、ネオ・ナチに制圧されている。
アメリカ政府がキエフでクーデターを仕掛け、ウクライナを制圧しようとした理由はいくつかある。ひとつはNATOの支配地域をロシアとの国境近くまで拡大させてロシアに軍事的な圧力を加えることだが、ロシアとヨーロッパを分断することも重要な目的だった。
ロシアとヨーロッパ結びつける上で重要な役割を果たしていたロシア産天然ガスを輸送する主要パイプラインがウクライナを通過していたことから、オバマ政権はウクライナを制圧することで天然ガスの輸送を断ち切ろうとしたのだ。
こうした事態を想定していたのか、ドイツとロシアはウクライナを回避するため、バルト海を経由するパイプライン、「ノードストリーム(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」を建設したのだが、これらは2022年9月に爆破されてしまう。
ジャーナリストのシーモア・ハーシュは2023年2月8日、この爆破について記事を書いているが、それによると、アメリカ海軍のダイバーがノルウェーの手を借りてノードストリームを破壊したという。アメリカのジョー・バイデン大統領は2021年後半にジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成、その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加してい他としている。12月にはどのような工作を実行するか話し合ったという。そして2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を具申。ロシアがウクライナに対する攻撃を始める前の話だ。
NS1とNS2が爆破された当時のドイツ首相はオラフ・ショルツ。アメリカが爆破したことは公然の秘密だったが、調査らしい調査すらしていない。現首相のフリードリヒ・メルツも米英金融資本の言いなりで、ロシアに戦争を仕掛けるかのような言動を繰り返してきた。そのメルツは2004年にメイヤー・ブラウン法律事務所の上級顧問に就任した起業弁護士で、2016年から20年にかけてブラックロックの監査役を務めている。
このふたつ以外にアメリカ政府がウクライナを制圧したかった理由が食糧生産にほかならない。現在、アメリカの食糧生産が危機的な状況になっている。アメリカでは食糧生産を支えているオガララ帯水層の水位が低下しているのだ。この帯水層を再び満たすには自然の力で6000年かかると予測されている。
シェール・ガスやシェール・オイルの開発に伴う水汚染が帯水層の状況をさらに悪化させ、2050年から70年の間に枯渇する可能性があるとも言われている。アメリカのハイプレーンズではトウモロコシ、大豆、小麦、綿花などが生産されている。生産量は年間5000万トン以上だとされているが、その灌漑用水の90%を危機的な状況のオガララ帯水層を含む地下水資源に頼っているのだ。この地域の生産量はアメリカの年間農業収穫量の少なくとも5分の1に達し、もし帯水層が枯渇すれば世界の食糧事情に深刻な影響を及ぼす。当然、日本にも無関係ではない。
こうした情勢を考えれば、日本も水対策を真剣に考え、食糧生産量を増やして自給自足に近づける必要があるという結論に達するはずだが、日本では政治家も官僚も危機感を持っていないようだ。カーギルが農協を狙っているという話があるが、その背後には欧米の巨大金融資本が存在している。彼らは目先の利益だけを考えているわけではなく、食糧の生産システムをコントロールし、人間を支配しようとしている。欧米のウクライナ侵略の背後にはそうした戦略もあると考えるべきだ。「中国云々」で逃げてはならない。
**********************************************
【Sakurai’s Substack】
**********************************************
【Sakurai’s Substack】
※なお、本稿は櫻井ジャーナルhttps://plaza.rakuten.co.jp/condor33/
「ウクライナに続いてモルドバの穀倉地帯を奪いはじめた欧米の巨大金融資本」(2025.05.26ML)
からの転載であることをお断りします。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202505260000/
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
★ISF(独立言論フォーラム)「市民記者」募集のお知らせ:来たれ!真実探究&戦争廃絶の志のある仲間たち
※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202410130000/
ISF会員登録のご案内