
5月26日のウクライナ情報
国際5月26日のウクライナ情報
安斎育郎
❶ロシア、ウクライナに「和平合意案」近く引き渡しへ 両国、捕虜交換の第1弾実施(産経新聞、2025年5月24日)
ウクライナ侵略を続けるロシアのラブロフ外相は23日、トルコで16日に行われた露・ウクライナの直接交渉で合意された「1千人対1千人」の捕虜交換の完了次第、ウクライナに対し、紛争終結に向けた「和平合意の文書案」を引き渡す用意があると述べた。モスクワで開いた記者会見で発言した。
両国は23日、捕虜交換の第1弾として、軍人270人と民間人120人の計390人ずつの交換を実施。ウクライナのゼレンスキー大統領によると、24日以降も捕虜らの交換が続けられる予定。
記者会見でラブロフ氏は、16日の露・ウクライナ直接交渉に関し、両国が捕虜交換に加えて「安定的かつ長期的、包括的な和平合意を達成するための条件を概説した文書案」を準備することでも合意したと主張。ロシアは現在、文書案の作成をほぼ終えているとした。
これに先立ち、直接交渉で露代表団を率いたメジンスキー露大統領補佐官も、両国が次回協議までに「将来の停戦に関する自身の見方」をまとめた文書を作成し、相手に引き渡すことで合意したと発言していた。
ただ、ウクライナ側によると、直接交渉でロシアは「不条理な要求」を提示。ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナ東・南部4州からの同国軍の撤兵などを求めたとされることを指すとみられる。ロシアがウクライナに渡す和平合意案もこうした要求を反映したものになる見通しだ。
ゼレンスキー氏は19日、4州からの軍の撤兵要求には応じないと明言しており、ウクライナはロシアの和平合意案を受け入れない公算が大きい。(小野田雄一)
https://news.yahoo.co.jp/articles/bb439c0452f498451ac246f61b552fc04745690b
❷ロシアとウクライナの停戦協議 バチカンでの開催案 ラブロフ外相拒否する考え(テレ朝news, 2025年5月23日)
ロシアとウクライナの停戦協議を巡り、浮上しているバチカンでの開催案をロシアのラブロフ外相が拒否する考えを示しました。
ラブロフ外相は23日、「『ロシア正教会』の国が『カトリック』の領土で議論するのはふさわしくない」とし、ウクライナと停戦協議をバチカンで行うことは非現実的だと述べました。
ラブロフ外相はウクライナがロシア正教会の活動を事実上禁し、ロシア正教会におけるクリスマスを従来の1月7日から12月25日に変更したことなどを念頭に「ウクライナでロシア正教会が破壊されている問題も解決するべき問題だ」として、宗教問題もテーマとなる以上、バチカン開催の中立性を疑問視しました。
また、ラブロフ外相は和平案のための覚書の作成は進んでいるものの、2回目の協議の時期や開催場所はまだ決まっていないと述べました。
さらに、戒厳令によって大統領選を行っていないゼレンスキー大統領について「正当性がない」と改めて主張しました。
そのため、合意案ができたとしても誰が署名をするかは依然として問題だと主張しました。
ロシアは停戦協議の過程でウクライナの大統領選実施も求めていくとみられます。
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❸ ウクライナ、ソ連崩壊後の国境回復は断念やむなし=前総司令官(ロイター、2025年5月23日)
[22日 ロイター] -ウクライナは1991年のソ連崩壊後、ないし2022年のロシアによる侵攻開始時の領土を回復するという考えを現実的には放棄せざるを得ない――。ウクライナのメディア「RBKウクライナ」は22日、バレリー・ザルジニー前総司令官が首都キーウで開かれた会合で、こうした見方を示したと伝えた。
現在駐英ウクライナ大使を務めるザルジニー氏は24年2月、総司令官を解任された。それ以前の数カ月、ゼレンスキー大統領との確執が何度も報じられていた。
ゼレンスキー氏を含むウクライナ政府首脳や高官は長らくロシアに対して、ソ連崩壊時のウクライナ領土から完全に軍を撤退させるよう求め、その対象にはロシアが14年に併合したクリミア半島も含まれた。
しかし最近数カ月で停戦に向けた協議に力を入れ始めたウクライナ政府は、領土問題でこれまでよりも強硬姿勢を後退させている。
こうした中でザルジニー氏は「この部屋には、ウクライナが平和とともに1991年もしくは2022年の国境線を取り戻し、その後大変幸せになれるという奇跡や幸運の兆しをまだ期待する人々はいないと希望する」と語った。
ザルジニー氏は「私の見解では敵(ロシア)はなお、わが国の領土に攻撃や特殊作戦を行う資源と力、手段を有している」と指摘。この1年消耗戦を仕掛けているロシアに対抗する上で、兵力が相対的に小さく経済的に厳しい環境にあるウクライナが唯一頼れるのは先進技術になると力説しつつ「生き残りのためのハイテク戦争」を展開するしかないと強調した。
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❹アングル:ウクライナと欧州、米ロ首脳会談結果に深い失望感(2025年5月21日)
[キーウ/ベルリン/パリ 20日 ロイター] – ウクライナとロシアの戦争を巡り、ウクライナや欧州の同盟諸国は自分たちの方に大義があるのだとトランプ米大統領を説得し続けてきたが、そうした努力が実を結ぶことなく事態は振り出しに戻ってしまった。
トランプ氏は19日に行ったロシアのプーチン大統領との電話会談で、それまで主張してきた無条件の30日間停戦要求を取り下げた。これはウクライナが支持し、ロシアが拒否してきた内容だ。 もっと見る
また24時間以内に戦争を終わらせるという公約を掲げていたトランプ氏は、もはや仲介は自分の仕事ではないとの考えも示唆し、ウクライナと欧州の同盟諸国を不安にさせている。
2月のウクライナのゼレンスキー大統領とトランプ氏の会談が口論に発展する結果となって以来、欧州各国首脳が両者の関係修復に急いで尽力してきた矢先に、ウクライナにとって新たな頭痛の種がもたらされた格好にもなった。
米ロ首脳電話会談の数週間前から、トランプ氏はロシアがウクライナ和平を推進する姿勢を見せなければ、より厳しい制裁を科す方針を示し、ウクライナ側はこれがプーチン氏に過大な停戦条件を引っ込めさせる力になると期待していた。
しかし今や、米国のロシアに対する「ムチ」は消えてしまった。その代わりに戦争終結後に米国との経済協力が用意されるという「アメ」が登場している。
ある欧州の外交官は「トランプ氏は18日の欧州首脳との電話会談では、無条件停戦案と、進展がなければ(新たな)制裁を適用することに同意していた」と明かす。
ところが「トランプ氏はプーチン氏との会談でこの考えを放棄したのは間違いない。彼を一日以上信用するのは不可能で、彼はウクライナに全く関心がないように見受けられる」とこの外交官は説明した。
事情に詳しい関係者の1人は、米ロ会談後にトランプ氏と会話した欧州首脳の反応は「ショック」の一言だったと述べた。
<時間稼ぎ>
米ロ会談後、ウクライナと欧州の同盟諸国は改めて結束し、ロシアへの新たな制裁を発表するとともに、米国へ協力を働きかけ続けると表明。またトランプ氏の気が変わる可能性への望みを捨てていない。
しかしプーチン氏への不信感は根強い。ロシアはこの1年余りで1000キロに及ぶ前線の各方面で占領地域を増やし、どんな合意においても戦場の現実が反映されるべきだと主張している。
ドイツのピストリウス国防相は20日に「プーチン氏はわざと時間稼ぎをしている。残念ながらプーチン氏は和平に全く興味がないと言わざるを得ない」と語った。
英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の「ウクライナ ・フォーラム」責任者を務めるオリシア・ルトセビッチ氏も、プーチン氏は和平交渉を急いでいないと認めた上で「ロシアにとって戦場と外交はコインの裏表の関係にある。プーチン氏は外交を先延ばしにして、欧州が組織的に動く機会を与えないことで、戦場における優位を確保している」と指摘した。
こうした中でウクライナとしては、ロシアに敗北しないためには米国の支えは欠かせない。米国は数百億ドルに上る軍事支援を通じてウクライナの戦争遂行に最も大きく貢献している国で、ウクライナはリアルタイムでの作戦行動や敵の標的を定める際に米軍からの情報提供に頼っている。
ただトランプ政権は、バイデン前政権が決めた軍事支援が夏にかけて途絶えた後、引き続き支援をするかどうかまだ態度をはっきりさせていない。
欧州諸国は直接支援と兵器購入の継続を約束しているとはいえ、米国がその兵器の売却を承認しないと話は進まない。さらに防空ミサイルや短距離誘導ミサイルなどの米国製装備は代替が不可能だ。
ロシア経済はエネルギーや銀行の分野に対する西側の制裁を何とかやり過ごしているが、膨大な軍事費の負担でほころびが見え始めているだけに、米国が経済面で圧力を加えれば、ウクライナにとっては追い風になる。
<天国から地獄>
ウクライナと欧州の同盟諸国は、ロシアに圧力をかけてほしいという対トランプ氏の説得が功を奏し始める兆しが見えたと思っていただけに、今回の米ロ会談の結果は受け入れがたいだろう。
トランプ氏は3月から4月にかけて、停戦に後ろ向きなプーチン氏の態度に不満を示し、自分は同氏にもてあそばれているのではないかと疑問を呈しつつ、ロシアへの制裁強化をちらつかせていた。
領土を含む幾つかの重要な問題で米国と欧州の立場には隔たりがあったものの、ウクライナ政府はトランプ氏のこうした発言を好材料だと受け止めた。先月にはウクライナと米国が鉱物資源開発を巡る協定に調印し、最近ではイスタンブールでロシアとウクライナの代表団が約3年ぶりに直接協議をしたことも、停戦への進展期待を高める形になった。
それだけにウクライナと欧州諸国が米ロ会談後に味わった失望感はあまりに明白だ。
別の欧州の外交官は「一歩進んで二歩、あるいは十歩下がった。われわれはトランプ政権にロシアへの圧力をかけてというメッセージを送り続ける」と述べた。
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❺泥舟からの逃亡者(CNN, 2025年5月20日)
ロシアとの交渉中、ウクライナ側通訳が行方不明に
イスタンブールでのロシアとの交渉で、ウメロフ国防相のチームの一員だったウクライナ代表団の通訳オレグ・ゴロフコ氏が、休憩タイムに部屋を出て、戻ってこなかったとCNNトルコ通信が報じた。
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1940年、東京生まれ。1944~49年、福島県で疎開生活。東大工学部原子力工学科第1期生。工学博士。東京大学医学部助手、東京医科大学客員助教授を経て、1986年、立命館大学経済学部教授、88年国際関係学部教授。1995年、同大学国際平和ミュージアム館長。2008年より、立命館大学国際平和ミュージアム・終身名誉館長。現在、立命館大学名誉教授。専門は放射線防護学、平和学。2011年、定年とともに、「安斎科学・平和事務所」(Anzai Science & Peace Office, ASAP)を立ち上げ、以来、2022年4月までに福島原発事故について99回の調査・相談・学習活動。International Network of Museums for Peace(平和のための博物館国相ネットワーク)のジェネラル・コ^ディ ネータを務めた後、現在は、名誉ジェネラル・コーディネータ。日本の「平和のための博物館市民ネットワーク」代表。日本平和学会・理事。ノーモアヒロシマ・ナガサキ記憶遺産を継承する会・副代表。2021年3月11日、福島県双葉郡浪江町の古刹・宝鏡寺境内に第30世住職・早川篤雄氏と連名で「原発悔恨・伝言の碑」を建立するとともに、隣接して、平和博物館「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館」を開設。マジックを趣味とし、東大時代は奇術愛好会第3代会長。「国境なき手品師団」(Magicians without Borders)名誉会員。Japan Skeptics(超自然現象を科学的・批判的に究明する会)会長を務め、現在名誉会員。NHK『だます心だまされる心」(全8回)、『日曜美術館』(だまし絵)、日本テレビ『世界一受けたい授業』などに出演。2003年、ベトナム政府より「文化情報事業功労者記章」受章。2011年、「第22回久保医療文化賞」、韓国ノグンリ国際平和財団「第4回人権賞」、2013年、日本平和学会「第4回平和賞」、2021年、ウィーン・ユネスコ・クラブ「地球市民賞」などを受賞。著書は『人はなぜ騙されるのか』(朝日新聞)、『だます心だまされる心』(岩波書店)、『からだのなかの放射能』(合同出版)、『語りつごうヒロシマ・ナガサキ』(新日本出版、全5巻)など100数十点あるが、最近著に『核なき時代を生きる君たちへ━核不拡散条約50年と核兵器禁止条約』(2021年3月1日)、『私の反原発人生と「福島プロジェクト」の足跡』(2021年3月11日)、『戦争と科学者─知的探求心と非人道性の葛藤』(2022年4月1日、いずれも、かもがわ出版)など。