
【櫻井ジャーナル】2025.06.02XML: ウクライナにおけるNATOの敗北は決定的で、米国の主力戦車も破壊されている
国際政治ウクライナでの戦闘でNATOはロシアに負けている。これは西側の有力メディアも否定できなくなっている。ウクライナ軍はNATO諸国の兵器を使ってロシア領内を攻撃しているものの、防空システムを突破できず、その一方でロシア軍の高性能ミサイルでウクライナ側の軍事施設が破壊されている。
1991年12月にソ連が消滅すると、西側では少なからぬ人がアメリカを唯一の超大国だと考えるようになった。ネオコンもそう考え、世界を制覇できると認識。1992年2月にアメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクト(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)が作成された。国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツを中心として作成されたことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。
それまでもアメリカは最強の国だと考える人は存在したが、ソ連消滅後、そうした傾向は強まった。その最強の国に従属していれば、その権勢をかさにきて好き勝手なことができるという信仰は強まり、2001年9月11日以降、侵略戦争は本格化するのだが、その結果、アメリカが最強の国でないことが明らかになってしまう。
戦力に圧倒的な差がある相手との戦いなら「勝利」を演出できるが、シリアやウクライナで間接的にではあるが、NATO諸国はロシアと戦うことになり、負けてしまったのだ。ミサイルや戦闘機といった兵器の性能だけでなく、製造力でも西側がロシアに負けていることが明確になった。
例えば戦車。アメリカは自国の主力戦車M1エイブラムス31両を2023年10月16日までにウクライナへ供給したと言われている。この戦車でロシア軍は粉砕されると日本でも信じる人が少なくなかったが、逆にウクライナ軍がロシア軍に粉砕され、すでに22両のエイブラムスが破壊されたと伝えられている。ドイツのレオパルト2戦車もイスラエルのメルカバ戦車も似たような状態だ。
ウクライナでの戦闘は2013年11月から14年2月にかけてバラク・オバマ政権が仕掛けたクーデターから始まった。南部のクリミアはロシアと一体化、東部のドンバスはキエフのクーデター政権に対する軍事抵抗を始めたのだが、軍や治安機関でも約7割はネオ・ナチが支配するクーデター政権を拒否する。そこでクーデターの後ろ盾であるNATO諸国は新体制の戦力を増強しなければならなくなった。そこでドイツやフランスが仲介する形で停戦交渉が始まる。2014年には「ミンスク1」、15年いは「ミンスク2」が締結されたのだ。
後に当時のドイツ首相、アンゲラ・メルケルはキエフのクーデター体制の軍事力を強化するための時間稼ぎに使われたと証言、フランソワ・オランド元仏大統領もその発言を肯定している。現在、ロシア政府が西側の停戦要求を拒否している理由のひとつはここにある。
ミンスク1から8年かけてNATOはキエフのクーデター軍を増強した。兵器を供与して兵士を訓練、さらに「ヒトラーユーゲント」的なプロジェクトで年少者をネオ・ナチの戦闘員へ育て、マリウポリ、ソレダル、マリインカ、アウディーウカには地下要塞を建設、それらを結ぶ要塞線を構築した。
2022年に入るとNATOを後ろ盾とするウクライナ軍はドンバス(ドネツクとルガンスク)のロシア語系住民を虐殺するために軍事侵攻する準備を始めたが、その計画を実行に移す前、2月24日にロシア軍はドンバス周辺に集まっていたウクライナ軍を殲滅、さらにウクライナの軍事基地や生物化学兵器の研究開発施設などを巡航ミサイルなどで攻撃しはじめた。
その直後、ロシアとウクライナはイスラエルやトルコを仲介役として停戦交渉を開始、イスラエルの首相だったナフタリ・ベネットによると両国はほぼ合意に達し、ベネットは3月5日にモスクワへ飛んでプーチンからゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけることに成功、その足でベネットはドイツへ向かい、オラフ・ショルツ首相と会うのだが、その日、ウクライナの治安機関であるSBUのメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺した。トルコを仲介役とする停戦交渉でもロシアとウクライナは停戦で合意し、「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する文書にウクライナ代表団は署名している。
こうした停戦交渉を潰すため、2022年4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフへ乗り込んでロシアとの停戦交渉を止めるように命令。同年4月30日にはアメリカのナンシー・ペロシ下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓った。それ以降、西側はウクライナに対し、ロシアを疲弊させるため、戦い続けるように要求している。
ヨーロッパ諸国の政府もウクライナでの戦争を続けさせようとしている。ブラックロックの元監査役で祖父がナチスの突撃隊員だったドイツのフリードリヒ・メルツ首相はウクライナでの戦争終結に向けた外交努力を妨害しようと必死で、5月6日にはタウルス巡航ミサイルをウクライナへの供給承認も検討していることを示唆。アメリカ、イギリス、フランスと同じように、ロシア領土への長距離ミサイル発射をウクライナに許可すると公言している。
その種のミサイルはオペレーターが必要だが、それだけでなく地上だけでなく衛星からの情報や誘導システムが必要。つまりミサイル供与国は攻撃の当事者ということになる。そこで、ウクライナがドイツのタウルスをロシアに向けて発射した場合、ロシアは報復としてドイツを攻撃するだろうと語る人もいる。すでにロシアは長距離ミサイル発射への報復として、昨年11月にマッハ10の極超音速兵器「オレシュニク」を配備、アメリカ、イギリス、フランスは長距離ミサイルの発射を止めた。
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【Sakurai’s Substack】
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※なお、本稿は櫻井ジャーナルhttps://plaza.rakuten.co.jp/condor33/
「 6月20日の「櫻井ジャーナルトーク」のテーマは「 ロシア軍が進撃する中、メルツ独首相がミサイルの射程距離制限を撤廃すると発言 」(2025.05.31ML)
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