
☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年6月5日):ドゥテルテ元フィリピン大統領の見せしめ裁判をキッカケに、フィリピンで再びPeople Powerが席巻するだろうか
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
ドゥテルテ大統領には彼を守ろうとする同盟者の繋がりがあり、その中には彼が不当な扱いを受けたと感じ、問題を放っておけないほどの力を持つ、善良な者もいれば、あまり善良ではない者もいる。
MI6傘下のBBCはこことここで、最近のフィリピンの中間選挙の状況をうまくまとめているが、重要な問題については頬かむりだ。それは、この群島に残存勢力する国家主権を脅かす米国と中国の海軍についてのことだ。
フィリピンの勢力分布を大まかに言えば、マクロス一族が北部、政敵のドゥテルテ一族が南部、その間の地域については、それ以外の一族やお行儀の良くない中華系財閥が抑えている、と言える。
カトリック教会の話をすれば、この教会は概ね有力なアキノ一族を支持しており、そのことも頭に入れれば、この国の入り組んだ複雑な構造がみえやすくなるだろう。というのも、この国ではひと握りの有力な一族と道徳心に欠ける中華系財閥が、これらの勢力分布に割って入っていて、人民には実質的な発言権が存在しないからだ。それは1986年2月に起こった「People Power Revolution(エドゥサ革命)」が失敗に終わってからのことだ。この革命の引き金となったのは、マルコス一族が雇った本職の殺し屋が、ニノイ・アキノ大統領を殺害したことだった。そのせいで、米国海兵隊がマルコス一族をハワイに脱出させることになり、ニノイ・アキノの未亡人のコラソン・アキノが大統領職につくことになった。
遅まきながら、エドゥサ革命のことを賞賛することは可能だが、その核心的な問題は、マルコス一族の船から逃げ出した全てのネズミたちが、その革命によじ登り、元マニラ大司教の故ハイメ・シンの言葉のとおり、「フィリピンはアリババを追い出すことに成功したが、その手下の40人の盗賊にとりつかれていた」のだ。この場合、盗賊というか、40の一族とそれに付随していた中華系財閥だった。 彼らがフィリピンを我がものにしたのだ。フィリピンは米国民をクラーク空軍基地から追い出し、米海軍をスービック湾から追い出したが、依然としてフィリピンは無力なままの状態においておかれ、 海外で働く親戚からの送金額は、2024年においては、400億米ドルに達し、その流入額はインド(1290億米ドル)やメキシコ(680億米ドル) 、中国(330億米ドル)に次ぐものだ。ただしパキスタン(330米億ドル)よりも上で、このことが明確に示すのは、移住や移民者からの送金が、暴力団の経済体系において不可欠なものである、という事実だ。そして、その暴力団こそ、フィリピンを支配しているのだ。
もちろん、移住者からの送金だけが、フィリピンの街中で起こっていることではない。外部の世界にとってより深刻な問題は、フィリピンが置かれている地政学的状況が極めて重要なものである、という点だ。つまり、フィリピンがNATOによる中国の食い止めの役割を果たす、ということだ。その中国の海軍は、フィリピン近郊のますます多くの島々を支配下に置き続けている。その島々を中国領とする権利は何もないにもかかわらず、だ。マルコス一族が常に米国の手中にあり続けているため、マルコス一族にとっては、自国が武装陣地と化すのを目にするのは都合がいい。さらに明白なことは、マルコス一族にとって米軍の回帰は、多額のおカネ儲けになることだ。というのも、土地を貸すことよる直接的な儲けも出るし、性産業に割り込む、という間接的な儲けも出るからだ。性産業は、米軍の外国基地に付き物な産業なのだ。
ロドリゴ・ドゥテルテは、すべて自身の厚かましさのせいで、ハーグの独房に入れられている。というのも、ドゥテルテは中国との対話を支持したからだ。それは、フィリピンを中国や日本、米国の高性能兵器の射撃場と化すことを避けるためだった。BBCなどの西側諜報機関の手先の報道機関が、ロドリゴの娘で、フィリピンの現副大統領のサラ・ドゥテルテが現大統領のボンボン・マクロスを叩きのめすと脅した、と騒ぎ立てているが、私に言わせれば、そんなことはただの大風呂敷だ。というのも、父ロドリゴは、敵を叩きのめすと脅すことよりも、実際に敵を叩きのめすことでよく知られていたのだから。
さらにドゥテルテに掛けられた容疑について言えば、ドゥテルテが叩き潰したのは下っ端の麻薬売人たちであり、NATO傘下にある全く不名誉な国際刑事裁判所から出されたこんな起訴に正当性がある、と考えるのは、ゼレンスキーの盟友たち(ドイツのメルツ首相とフランスのマクロン大統領)が電車の中で吸い込んでいた程度のコカインを吸引するものたちだけだ。大金を積まれてNATOの手下の道化師よろしく騒ぎ立てる報道機関ならばまだしも。アジアの無辜の人々を数千人殺したことで、ドゥテルテが戦争犯罪者にされるのであれば、全く同じ扱いを受けねばならないのは、バイデンやオバマ、クリントンなどの組織的な犯罪一族だし、彼らとともに働いた何万もの盟友も同罪だ。彼らこそハーグの刑務所で拘束されるべきだ。もちろん、ジェノサイドが十八番のジョー(ネタニヤフ)やNATO組に所属する精神病者たちも、だ。
ロドリゴ・ドゥテルテについていえば、彼はダバオ市の市長選挙で40万5221票を獲得した。対抗馬が得た票数は4万9千票だった。副市長のバステ・ドゥテルテが、父ロドリゴ・ドゥテルテ二世が不在のいま、代理として市長を務めている。ドゥテルテ二世は―元大統領ロドリゴ・ドゥテルテが名付け親であり、彼の孫なのだが―ダバオ市内第1選挙区の下院議員選挙において一位で当選した。さらに「ドゥテルテ青年団党」からの候補者は得票数187万1546を獲得し、アクバヤン党についで二位となった。ミンダナオ島の人々はドゥテルテ支持を表明しているが、NATOは聞く耳をもっていないようだ。
では、フィリピンをどうすればいいのだろうか?まずは、1986年に革命を起こした「人民の力」に力を振るう機会が与えられるべきだ。さらには、アキノ一族がドゥテルテ派やカトリック教会と力を合わせることで、「人民の力」が力を発揮する状況を作るべきだ。ロドリゴについては、もちろん、ミンダナオに英雄として帰還すべきだし、帰還する際には、マルコス一族がニノイ・アキノに与えたような鉛の銃弾をお見舞いされる運命を迎えさせるわけにもいかない。ニノイは、飛行機がマニラ空港に着いたとたん、そんな運命をむかえてしまったのだ。マルコス一族にそんなつもりがあるとしたら、96歳のイメルダも、こんな破滅的な一族とともにハワイに戻るべきだ。マルコス一族を公職から締め出す法律を作るべきだが、それはパキスタンのブット一族や、世界最大の民主主義国家(笑)であるインドのガンジー・ネール一族を締め出そうとするのと同じくらい非現実的だろう。
これらのことが出来たとしても、中国と北大西洋条約機構(NATO)の軍隊という双子の重荷を、長年苦しんできたフィリピン人の背中から離すことはできないだろうが、これらのいじめっ子のどちらか一方、あるいは両方に対して武器となる真の声を与える過程を始めることはできるだろう。
私からの提案は、控えめで申し訳ないが、採用されたとしても、フィリピンの政界に大津波を起こすことにはならないだろうが、NATOからの圧力に対する均衡を保つ助けにはなりそうだ。NATOにはいわゆる「世界調査報道ジャーナリズムネットワーク」という組織が存在し、この組織がドゥテルテの持つ偽情報発信網についてのこちらの記事などにより騒ぎ立てている。ドゥテルテはNATOとは違い、そんな情報発信網を所有していない。彼が持っているのは、同盟者の人脈網であり、その人々の中には善良な人もいればそうでもない人々もいる。その人たちは、上に述べたような正当な理由がないわけではないが、ドゥテルテがひどい目に遭わされたと感じており、この問題を放っておかないだけの力を持っている。この件に関しては、これらの人々ひとりひとりが善良である。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS http://tmmethod.blog.fc2.com/
「ドゥテルテ元フィリピン大統領の見せしめ裁判をキッカケに、フィリピンで再びPeople Powerが席巻するだろうか」(2025年6月5日)http://tmmethod.blog.fc2.com/
からの転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒From the Philippines to his show trial in The Hague, Duterte’s supporters rattle NATO’s cages — Strategic Culture
筆者:デクラン・ヘイズ(Declan Hayes)
出典Strategic Culture Foundation 2025年5月16日https://strategic-culture.su/news/2025/05/17/from-philippines-to-his-show-trial-in-hague-dutertes-supporters-rattle-nato-cages/