【連載】知られざる地政学(塩原俊彦)

「知られざる地政学」連載(94):第三次世界大戦を引き起こす男:「悪者=ゼレンスキー」(下)

塩原俊彦

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第三次世界大戦に巻き込もうとするゼレンスキー

6月4日、事態を重くみたトランプとプーチンは1時間15分間、電話会談をした。その後、トランプはTruthSocialに、「私たちは、ウクライナによるロシアのドック入り航空機への攻撃や、双方で起きているその他のさまざまな攻撃について話し合った。良い会話だったが、すぐに和平につながるような会話ではなかった。プーチン大統領は、最近の飛行場への攻撃には対応しなければならないと、非常に強く言った」、と投稿した。

さらに、5日、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相との大統領執務室での会談で、トランプは、「2人の幼い子供が狂ったように戦っているのを見ることがある。お互いに憎み合っていて、公園で喧嘩している。彼らは引き離されるのを嫌がる。しばらく喧嘩させた方がいいこともある」とメルツと並んで話し、プーチンにその例えを電話で伝えたと付け加えたという(WPを参照)。

だが、さすがにゼレンスキーのひどさをトランプも気づいているらしい。米「アトランティック」は5日、情報筋の話として、「今回の無人機による攻撃は、大統領が長年抱いていたウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対する不快感を再燃させ、ホワイトハウス内で米国がウクライナを放棄すべきかどうかについての新たな議論を促したという」と書いている。この文章につづいて、「戦争を通して、トランプはゼレンスキーを「悪者」(bad guy)で「熱血漢 」(hothead)であり、世界を第三次世界大戦に向かわせる可能性のある人物とみなしてきた、と外部アドバイザーは語った」とも記されている。

この記述をみて思い出してほしいのは、拙稿「ウクライナ戦争衝撃の結末…ゼレンスキーは核開発を目論んで米新政権に暗殺される?」において指摘したように、ジョー・バイデン前大統領もまた同じ意見、すなわち、ゼレンスキーが第三次世界大戦に巻き込もうとしているという見方をいだいていたことだ。それは、David E. Sanger, New Cold Wars: China’s Rise, Russia’s Invasion, and America’s Struggle to Defend the Westのなかに記述されている。

さらに、6月4日付のNYTは、複数のアドバイザーの話として、トランプがウクライナとロシアの両首脳に苛立っており、ゼレンスキーに対しては長い間特別な憎しみ(animosity)を抱いていると報じた。「トランプはウクライナへの武器の流れを断ち切ることを口にし、ゼレンスキーは世界を核戦争の崖っぷちに追い込んでいる、「悪者」(bad guy)だと何度も側近に語っている」とも指摘している。私もその通りだと思う。

高まるゼレンスキー批判

今回の奇襲攻撃に対するゼレンスキー批判を紹介しよう。前述したフリンは、「注目してほしい! つまり、ゼレンスキーはドナルド・トランプに報告することなく、滑走路にいるロシアの核爆撃機を攻撃するゴーサインを出したということだ(もし大統領が本当に相談も報告も受けていなかったことが判明すれば、これは単なる規約違反ではない。これは地政学的な侮辱であり、警鐘である。ウクライナがホワイトハウスに通知することなく、戦略的結果を伴う攻撃を仕掛ける用意があるのなら、我々はもはや、ある種の同調を欠いた同盟国ですらなく、盲目的に飛行し、コントロールを失った共同同盟国側なのだ)」とXに投稿した

同じく第一期トランプ政権で首席戦略官だったスティーブ・バノンは2日遅く、インタビューに答えて、厳しい対ロ制裁を科そうとしているリンジー・グラハム上院議員(サウスカロライナ州選出)への批判を強めるなかで、「とくにゼレンスキーが、ロシアへの深部攻撃を伴う第三次世界大戦に我々を導くことはできない」と発言し、第三次世界大戦へ巻き込もうとしているゼレンスキーを厳しく批判した(The Hillを参照)。

ゼレンスキーという男、「危険」

先に紹介した2024年11月に公表した拙稿「ウクライナ戦争衝撃の結末…ゼレンスキーは核開発を目論んで米新政権に暗殺される?」で紹介したように、この段階で、ウクライナが核兵器開発に取り組んでいる、あるいは、取り組むとの憶測が渦巻いていた。

この拙稿で紹介した、11月5日公表の『フォーリン・アフェアーズ』論文「ウクライナ戦争が―誤って―核戦争に発展する可能性」でも、「ウクライナがロシア国内の標的を攻撃しようとすればするほど、ウクライナのミサイルや無人偵察機、さらにはウクライナ軍の射程圏内にあるロシア西部に保管されている核兵器を適切に保護しようとしないロシアの姿勢が、悲惨なリスクをもたらす」と指摘されていた。

加えて、第二期トランプ政権のスタート後も、2025年2月、ジャーナリストのピアーズ・モーガンとのインタビューで、モーガンがウクライナのNATO加盟が困難な場合のプランBを尋ねられたゼレンスキーは、「核兵器を返してくれ、強力なミサイルシステムを提供してくれ、パートナーになってくれ、100万人規模の軍隊に資金を援助してくれ、そして私たちが最大限の安定と人々の平和を望んでいる私たちの国の部分にあなた方の部隊を配備してくれ。 そういうことなら、わかった」、と平然と語った。なお、彼が核兵器を返してくれと言ったのは、1994年にロシア、アメリカ、ウクライナ、イギリスの間で調印された「ブダペスト覚書」の下で、ウクライナが核兵器を廃絶することを前提に、ロ、米、英はウクライナの安全を保証したことに関連している。同文書によれば、「当事国は、ウクライナの領土保全または政治的独立に対する武力による威嚇または武力の行使を自制し、いかなる兵器もウクライナに対して使用しないことを再確認する」(覚書2項)となっている。

不穏な動きはまだある。2025年5月、オデーサで開催された黒海安全保障フォーラムで、元英国陸軍大佐のリチャード・ケンプは、「英国は戦術核兵器の開発を約束すべきだったと思う。しかし、そのような手段はロシアに対する抑止力になり得る。あるいは、ウクライナが独自の核戦力を開発するのを支援することだ。なぜなら、ウクライナは西側からの保証と引き換えに核戦力を手放したが、実際には保証は果たされなかったからだ」と発言したのだ。

もちろん、核兵器の製造について話すことは、ロシアの戦争終結の条件を最大限に厳しくすることにつながり、クレムリンに急激なエスカレーションの口実を与え、トランプにウクライナの戦争から一刻も早く手を引き、ウクライナへの援助を停止するようさらに強く促すかもしれない。いずれにしても、煙はすでに上がっているのであり、燎原の火に広がる可能性を捨てきれない。

まだある奇襲攻撃

奇襲攻撃は一度行ってしまうと、同じことは難しい。さすがに敵も警戒するからである。だが、まったく別の奇襲攻撃を行う道も残されている。戦争継続派のゼレンスキーは、ウクライナ戦争をつづけるためにまだまだ奇襲作戦を考えているらしい。

WPのコラムニスト、デイヴィッド・イグナティウスは6月5日付の記事のなかで、ゼレンスキーのたくらんでいる新たな奇襲攻撃の一端を明らかにした。ウクライナは、6月1日に効果的に使用した奇襲戦術の海軍バージョンを検討しているというのだ。

記事には、「情報筋によれば、ウクライナ保安局(SBU)は北太平洋のロシアとその同盟国の船舶を攻撃するため、貨物コンテナに隠した海上ドローンを送り込むことを検討していたという」と書かれている。ただ、「これまでのところ、彼らはまだこれらの作戦を開始していないようだ」としている。

まだある。ゼレンスキーは戦線を、モルドバ東部を流れるドニエストル川とウクライナの間にある、未承認国家「沿ドニエストル共和国」に拡大しようとしているというのだ。もう忘れたかもしれないが、2024年9月、イスラエルは、ポケベルやトランシーバーを遠隔操作で爆発させるという大胆な作戦を成功させた。この攻撃によってシーア派武装組織ヒズボラは壊滅的な打撃を受け、現在も完全には回復していない。これによって、ネタニヤフは戦線をレバノンに拡大したのだが、同じように、沿ドニエストルを戦争に巻き込むことで、ウクライナ戦争の解決をより難しくしようというのである。そこには、ロシア兵が駐留している。

イグナティウスは、「ウクライナと国境を接する国々は、戦争が続けば新たな戦場になるかもしれない」と書いている。実は、ウクライナは以前からロシアからの亡命者やその他の地元勢力を使って、そこにいるロシア軍を攻撃する作戦を検討したが、これまでのところ、新たな戦線を開くことは断念してきた。しかし、6月4日付のFTは、モルドバのドーリン・レセアン首相の話として、ロシアはモルドバの離脱地域である沿ドニエストルに、追加で1万人規模の軍隊を配備することを望んでいる、と伝えた。なお、2024年10月の情報として、「現在、約1500人のロシア軍が沿ドニエストル共和国に駐留している」。ロシア側の情報では、平和維持軍としてのロシア兵とは別に約1000人のロシア軍兵士からなる部隊も駐留しており、弾薬庫を警備しているという。

念のために書いておくと、2022年10月の段階では、ロシア保安局(FSB)がモルドバの親欧米政権を転覆させようとしているとの報道があった。

いずれにしても、ウクライナ西部で事件が起きれば、近隣のベラルーシ、ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、そしてドイツ、バルト三国、ノルウェー、フィンランドなどを巻き込んだ大混乱が起きるリスクがある。まさに、第三次世界大戦への導火線になりうる。

なぜゼレンスキーを非難しないのか

もちろん、ここで紹介した話は可能性でしかない。だが、少なくとも二回にわたる対ロ奇襲攻撃はゼレンスキーによる挑発そのものだ。そう、それは戦争をつづけたがっているゼレンスキーという「悪者」の本性丸出しの暴挙と言える。何しろ、彼のわけのわからない、奇襲攻撃が第三次世界大戦の引き金になりかねないのだから。

6月7日、トランプは大統領専用機エアフォース・ワンのなかで記者団に対して、「昨夜、彼らは、プーチンに空爆する理由を与えた」と語った。そう、ゼレンスキーの戦争継続という思惑はみごとに成功したことになる。

しかし、それはウクライナ国民の死傷者を増やすだけでなく、ロシア国民、さらに、周辺国の人々の安全保障を脅かしかねない。

破綻国家ウクライナを支援する理由はあるのか

主権国家であれば、その主権を守るために国防軍を創設し、兵役義務を課して常備軍とする国家が多い(逆に、コスタリカ、アイスランド、リヒテンシュタイン、パナマ、モナコといった国々は例外)。だが、男性を無理やり兵役につかせて、戦争に動員しているウクライナの場合、主権を守るためというよりもゼレンスキーという専制君主の権力を守るために戦わせているようにみえる。任期切れのコメディアンを支援する理由はない。

最初に紹介した拙稿「ウクライナで恐ろしい「バス化」=路上強制兵役連行が頻発中」では、ウクライナで行われている動員の過ちについて明らかにした。25~60歳の男性は兵役義務があり、動員対象となっている。18~24歳の男性は志願兵として兵員になることができる(5月時点で、現在、約50万人がこの契約にサインしたと言われている[ただし、事実確認はできず])。もちろん、本来であれば、地域募集センター(TCC)を通じて召集通知が配布され、受け取った者はTCCに出頭し、兵役への適性を判断するために軍医委員会で健康診断を受け、職業的・心理的選考を経て軍に配属される。だが、召集通知が届かなかったり、届いてもTCCに出向かなかったりする者が急増し、実際には、動員が難しくなっている。ゆえに、一部のTCCは兵員不足を補うために街中で「男性狩り」という暴挙を繰り返している。

TCCの腐敗と暴力

6月6日になって、「最近のTCCの変化」について伝える興味深い記事を読んだので、ここで紹介しておきたい。記事は、TCCの職員によると、各センターには動員計画があり、計画が達成されない場合、上官は前線の「安全でない」部隊に異動させられると報じている。さらに、「動員された者の健康状態はほとんど無視される」のが現状だという。加えて、TCCには動員数の計画のほかに、「賄賂を集めて上に金を渡すための黒い計画もある」、と記事は指摘している。どうやら、ウクライナの動員制度は腐敗に満ちており、破綻国家の実情を示していると言えるのだ。

具体的には、各地区のTCCは、地区にもよるが、平均20~30人を軍医委員会(VVK)に派遣しなければならなかったが、「いまは40~45人に増えている」。 2~3カ月以内にこの基準を満たさなければ、上級者の命令でTCCトップは戦闘部隊に行くことになる。ただし、動員計画が達成されなくても、幹部に賄賂を渡せば、その場に留まるチャンスはある。

記事によれば、路上で拾われてTCCに連れてこられた場合、「そこから出るだけで5000ドル以上かかる」。 さらに、TCCに連行された者がVVKに兵役不適格と認定してもらうには、「地域やスキームによって1万ドルから2万5000ドルかかる」。 その他の料金もあるらしい。前線で戦うのを回避するために、5000~7000ドルを支払って、後方部隊や、橋・倉庫などの警備に動員されることもある。

バスに強制連行する「バス化」の実行部隊をその場で買収することもできるという。このバス化実施グループには、TCC職員のほかに、警察のパトロール隊と、軍のリクルーターに協力する2、3人のアシスタント(自主的な法執行支援組織のメンバーのことをこう呼ぶ)が加わっている。無理やりバスに押し込められた者に対して、いくら出せば解放されるかがバス内で告げられる。必要があれば、親戚が金をもってくるのを待つ。TCCの事務所まで連れて行かれると、釈放にかかる金額は2~3倍になると知らされる。獲得した金額は、半分がTCCの職員、4分の1が警察、4分の1がアシスタントに分配される。もちろん、平均して、一つのグループは1日に5人をセンターに連れてゆく必要があるから、その分については、連行した場所での即時解放はない。

拙稿「ウクライナで恐ろしい「バス化」=路上強制兵役連行が頻発中」で紹介したように、もはや「召集令状を送られた人の多くが出頭していない」というのがウクライナの現状だから、もはや動員は強制的に暴力的に行われていると考えられる。しかも、カネ次第では、何とか動員から逃れることもできる。

遺体に冷たいゼレンスキー

もう一つ、「悪者=ゼレンスキー」の冷徹さを開陳しておこう。それは、ロシアから送られた遺体を受け取ろうとしないゼレンスキーの恐るべき非人間性という話だ。

ちょうど、朝日新聞が6月8日付で「「ウクライナが遺体を受け取らず」ロシアが主張 捕虜交換も実現せず」を配信しているので、その記事がいかに偏向しているかという話をしよう。記事はおおよそ以下のような内容になっている。

「ウクライナとの直接協議を率いるロシアのメジンスキー大統領補佐官は7日、トルコ・イスタンブールで今月2日に行われた直接協議で合意した捕虜と兵士の遺体の交換について、7日は実現しなかったと主張した。ロシア側はこの日から実施すると表明していたが、ウクライナ側が交換地域に現れなかったとしている。一方、ウクライナ国防省は同日、「ウクライナ側は再び、合意を事後的に『覆す』試みに直面している」との声明を出し、ロシアを批判した。

メジンスキー氏は、ウクライナ側が交換を無期延期したと非難した。すでにロシアがウクライナ兵の遺体を一方的に交換地域に搬送する異例の事態になっている。ロシアのフォミン国防次官は「現在までウクライナ側から同意は得られていない」と話しており、ウクライナ側が「非人道的だ」との印象を与える狙いで遺体を運んだ可能性がある。

メジンスキー氏によると、ロシア側は1212体の遺体を交換地域に運んだ。ロシア国防省がSNSで公開した映像では、白い冷凍車の扉を開けると冷気が流れ、兵士の遺体が入ったとみられる白い袋が積まれている。遺体の総数は6千を超える見込みだという。」

このなかの「ウクライナ側が「非人道的だ」との印象を与える狙いで遺体を運んだ可能性がある」という文は、明らかにロシア側を誹謗中傷しようとした偏見に満ちている。もし私であれば、この文章の後に、「他方で、死亡者への補償金支払いがかさむために遺体を引き取ろうとしないウクライナ側の非情さを指摘する声もある」と書いておくだろう。

要するに、この遺体の受け取り拒否の裏側に、カネの問題がかかわっている可能性があるのだから、その事実関係をしっかりと記述しなければならないと言いたい。

どういうことかというと、現在、戦闘で死亡した1人の遺族には1500万フリヴニャが支払われている。戦死した軍人6000人の遺体が返還されれば、ウクライナの予算に900億フリヴニャが支払われることになる。これはウクライナの2025年の軍事予算のほぼ10%に相当する。軍にはすでに2000億フリヴニャの赤字があるとされているから、この負担額は決して少なくない。こうした事情もあってか、ゼレンスキーはすでに、全員の身元が確認されたわけではなく、死者の15%しか確認されていないと言っている。最終的にキエフがこの数字に止まり、残りの遺体の身元確認が遅れれば、支払額は135億フリヴニャですむ。

もちろん、ロシア側は死者・行方不明者の親族が憤慨し、ウクライナ当局が遺体の返還や補償金の支払いを望んでいないことを非難し始めることを期待している。

執筆時点(6月9日)では、戦争捕虜と死亡した軍人の遺体の交換開始はこの週に予定されている。
いずれにしても、6000人の遺体は多い。前回ゼレンスキーが言及したのは2月のことで、死者数は4万6000人だった。6000人はこの数字の13%以上に相当する。なお、ウクライナ赤十字の情報によると、特別失踪者対策委員会の情報として、特別失踪者登録簿には2025年2月の時点で6万2948件が登録され、ウクライナ赤十字は1万6190件の捜索を開始していたという。

ゼレンスキーを辞めさせろ!

ゼレンスキーは、沖縄戦で敗れてもなお本土決戦をしようとした大日本帝国軍の幹部らにそっくりだ。自分たちの権力保持のために、国民を犠牲にすることに何の躊躇も感じていない。こんな人物が大統領、それも任期切れの大統領が居座りつづけるかぎり、ロシアによる核兵器の使用さえ想定しうる。

そう考えると、第三次世界大戦を避けるには、「悪者=ゼレンスキー」をどう排除するかが課題となる。

普通に考えれば、オールドメディアがゼレンスキーのひどさを批判し、即時停戦・和平に否定的な彼を追放するために、ウクライナへの支援自体をいったん停止し、停戦・和平後の復興を支援する方針に改めることこそ望ましいということになる。このメディア批判が不勉強な政治家を動かし、ようやくゼレンスキー非難へとつながる。

だが、欧州や日本のオールドメディアは「悪者=ゼレンスキー」をいまでも支援している。プーチンが「悪」であるのは事実だが、ゼレンスキーも相当の「ワル」であることに気づかないのは、彼らがよほど不勉強である証拠なのかもしれない。あるいは、平然と「嘘」を垂れ流している。

いまの朝日新聞は戦前の朝日新聞と変わらないように思えてならない。違うというのであれば、私のように「人々が聞きたくないことを伝える権利」を行使する者の意見を大々的に報道してみろ!と言いたい。モスクワ特派員として朝日新聞に多少寄与した者として、いまの朝日新聞を厳しく断罪しておきたい。「君たちは最低最悪だ!」と。

加えて、欧州でも日本でも、オールドメディアに騙されてゼレンスキーを批判できない政治家が多すぎる。来る参議院選で、私は、自民党、公明党、立憲民主党、日本共産党、日本維新の会、国民民主党の候補者に投票することは100%ないだろう。ゼレンスキーを支援するような連中はみな、第三次世界大戦を呼び寄せているのだから。

他方で、学者もまた不勉強であり、しかも自分が無知蒙昧であることを知らぬままに人々を騙しつづけている。拙著『ウクライナ・ゲート』、『ウクライナ3.0』、『復讐としてのウクライナ戦争』、『ウクライナ戦争をどうみるか』、『知られざる地政学』〈上下巻〉、『帝国主義アメリカの野望』といった本の存在を無視したり、引用したりしないまま、駄弁を弄している学者をみると、「妬み」に打ち震える彼らのセコサにあきれるばかりだ。人間として不誠実な輩ばかりにみえてくる。

この連載が公開されるころ、カナダでG7サミットが開催される。読者に注目してほしいのは、開催後、どんな声明が表明されるかだ。5月20〜22日にバンフ(アルバータ州)で開催されたG7財務相・中央銀行総裁会議の後、ウクライナへのさらなる支援に関する条項は最終声明に盛り込まれなかった。ロシアの「違法な」侵略戦争についても同様である。そうであるならば、G7サミットではどうなるのか。世界中の人々は注目しなければならない。

本来であれば、国会議員は石破茂首相がG7の場で、ゼレンスキーを「悪者」とみなすトランプ側に立つのか、それとも、いまだに「善人」とみなすEU側に立つのかを糺す必要がある。「ゼレンスキーのような最低最悪の指導者はプーチンと同じく排除すべきである」と石破が答えるとすれば、石破を称賛したいところだが、そんなことはありえない。首相までもが騙されているからだ。この場合、騙しているのは外務省であり、オールドメディアと言えるだろう。

「人々が聞きたくないことを伝える権利」という言論の自由を放棄したオールドメディアの咎は恐ろしいまでに深いのである。

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塩原俊彦 塩原俊彦

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士。評論家。『帝国主義アメリカの野望』によって2024年度「岡倉天心記念賞」を受賞(ほかにも、『ウクライナ3.0』などの一連の作品が高く評価されている)。 【ウクライナ】 『ウクライナ戦争をどうみるか』(花伝社、2023)、『復讐としてのウクライナ戦争』(社会評論社、2022)『ウクライナ3.0』(同、2022)、『ウクライナ2.0』(同、2015)、『ウクライナ・ゲート』(同、2014) 【ロシア】 『プーチン3.0』(社会評論社、2022)、『プーチン露大統領とその仲間たち』(同、2016)、『プーチン2.0』(東洋書店、2012)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(岩波書店、2009)、『ネオ KGB 帝国:ロシアの闇に迫る』(東洋書店、2008)、『ロシア経済の真実』(東洋経済新報社、2005)、『現代ロシアの経済構造』(慶應義塾大学出版会、2004)、『ロシアの軍需産業』(岩波新書、2003)などがある。 【エネルギー】 『核なき世界論』(東洋書店、2010)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局、2007)などがある。 【権力】 『なぜ「官僚」は腐敗するのか』(潮出版社、2018)、『官僚の世界史:腐敗の構造』(社会評論社、2016)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた:官僚支配の民主主義』(ポプラ社、2016)、Anti-Corruption Policies(Maruzen Planet、2013)などがある。 【サイバー空間】 『サイバー空間における覇権争奪:個人・国家・産業・法規制のゆくえ』(社会評論社、2019)がある。 【地政学】 『知られざる地政学』〈上下巻〉(社会評論社、2023)がある。

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