【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.06.21XML: 世界の支配者になったと勘違いしたシオニストが自滅の道を歩いている

櫻井春彦

2003年3月にイラクを先制攻撃した勢力も、2011年春にリビアやシリアをジハード傭兵に侵略させた勢力も、2014年2月にウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを仕掛けた勢力も、そして今、イランを攻撃している勢力も同じである。最前線にいるのはシオニストの一派であるネオコンだが、この勢力が仕掛けた侵略作戦は全て計算間違い。この愚かな集団をここでは「帝国主義者」と呼ぶことにする。

 

帝国主義者は世界を支配下に置き、富を独占しようと目論む。そのために戦争は不可欠だが、アメリカにもそうした政策を否定する大統領がいた。1963年6月にアメリカン大学の卒業式で「平和の戦略」と呼ばれる演説を行い、ソ連と平和共存する道を歩き始めると宣言したジョン・F・ケネディだ。ケネディは1963年11月22日にテキサス州ダラスで暗殺された。

 

帝国主義者が世界制覇プロジェクトを始動させる切っ掛けは、本ブログで繰り返し書いてきたように、1991年12月のソ連消滅にほかならない。この瞬間、アメリカが「唯一の超大国」になったと興奮、92年2月にはアメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇計画を作成した。

 

当時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はディック・チェイニー、そして作成の中心は国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツだ。そのため、この指針は「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。2001年9月11日、このドクトリンは本格的に始動した。

 

しかし、この段階でプロジェクトの雲行きが怪しくなる。彼らはソ連消滅にともない、ロシアは欧米資本の植民地になったと認識、ボリス・エリツィンが大統領を務めた1990年代は目論見通りに進んだのが、21世紀に入り、ウラジミル・プーチン体制になってから再独立に成功するのだ。その後、ロシアの再植民地化を目論むが、失敗している。

 

その間、欧米の帝国主義者はNATOを東へ拡大させていくが、その当時はヨーロッパの支配層にもこうした好戦的な政策に反対する人たちがいた。彼らは天然ガスの取り引きを通じてロシアとの関係を強めていくのだが、帝国主義者にとってそれは許し難いことだった。

 

ナチス時代のドイツがソ連を侵略する際、ベラルーシとウクライナが主な侵攻ルートになった。そこで2014年2月にアメリカのバラク・オバマ政権はキエフでクーデターを成功させ、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除するのだが、このクーデターに賛成する国民は多くなかった。特にヤヌコビッチの支持基盤だった東部と南部でそうした傾向が強く、クリミアはロシアと一体化、東部のドンバスでは武装闘争が始まる。

 

軍や治安機関でも7割程度のメンバーがクーデター体制を拒否、その一部はドンバスの反クーデター軍に合流したと言われ、内戦では反クーデター軍が優勢だった。そこで西側が目論んだのが停戦。反クーデター軍の勢いを弱め、その間に戦力の増強を図ろうとしたのだ。そうした理由で2014年の「ミンスク1」と15年の「ミンスク2」は締結された。

 

後に当時のドイツ首相、​アンゲラ・メルケル​はキエフのクーデター体制の軍事力を強化するための時間稼ぎに使われたと証言、​フランソワ・オランド元仏大統領​もその発言を肯定している。現在、ロシア政府が西側の停戦要求を拒否している理由のひとつはここにある。

 

オバマ政権がウクライナでクーデターを仕掛けた理由のひとつはこの国を天然ガスを輸送するパイプラインの多くが通過しているからだが、ほかにも理由はある。鉱物資源が存在しているほか、世界有数の穀倉地帯が広がっているからだ。

 

食糧はエネルギーと並ぶアメリカの重要な戦略物資のひとつだが、その食糧の生産が危機的な状況になっている。​食糧生産を支えているオガララ帯水層の水位が低下している​のだ。シェール・ガスやシェール・オイルの開発に伴う水汚染が帯水層の状況をさらに悪化させている。

 

この地下水は2050年から70年の間に枯渇する可能性があるとも言われているが、ハイプレーンズでの生産はこの水に頼っている。この地域ではトウモロコシ、大豆、小麦、綿花などが生産され、その生産量は年間5000万トン以上だとされている。その灌漑用水の90%を危機的な状況のオガララ帯水層を含む地下水資源に頼っているのだ。

 

この地域の生産量はアメリカの年間農業収穫量の少なくとも5分の1に達し、もし帯水層が枯渇すれば世界の食糧事情に深刻な影響を及ぼす。当然、日本にとっても深刻な問題だ。

 

1990年代より前からアメリカの外交や軍事はシオニストの影響下にあった。そのシオニストが信じるシオニズムは遅くともエリザベス1世の時代から存在する。

 

この時代、つまり1558年から1603年にかけてのイギリスでは王室に雇われた海賊がスペインやポルトガルの船を襲い、積荷を略奪して富を築いていた。スペインやポルトガルの船は南アメリカなどで奪った財宝を運んでいたのだ。

 

イギリスの海賊の中でもジョン・ホーキンス、フランシス・ドレイク、ウォルター・ローリーは特に有名。海賊行為だけでなくアイルランドで住民を虐殺しているが、こうしたことをエリザベス1世は高く評価、3人の海賊にナイトの爵位を与えている。スペインにしろ、ポルトガルにしろ、イギリスにしろ、国というより犯罪組織と言うべきだろう。

 

シオニズムの始まりはエリザベス1世の時代に出現した「ブリティッシュ・イスラエル主義」だが、それを生み出したのは女王の顧問を務めていたジョン・ディーだと言われている。この人物は『ユークリッド原論』を英訳本の序文を書いた数学者で、黒魔術、錬金術、占星術、ヘルメス主義などに傾倒していたことでも知られている。

 

ブリティッシュ・イスラエル主義によると、アングロ-サクソン-ケルトは「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だと主張。人類が死滅する最後の数日間にすべてを包括する大英帝国が世界を支配するとしている。

 

19世紀に入ると、イギリスではアングロ-サクソンが世界を支配するという信仰が現れる。帝国主義者のセシル・ローズが1877年に書いた『信仰告白』の中で、「私たち(アングロ・サクソン)は世界で最も優れた人種であり、私たちが住む世界が増えれば増えるほど、人類にとってより良いものになる」と主張している。

 

「より多くの領土を獲得するあらゆる機会を捉えることは我々の義務であり、より多くの領土は単にアングロサクソン人種の増加、つまり世界が所有する最も優れた、最も人間的で最も名誉ある人種の増加を意味するという考えを常に念頭に置くべきである」というのだ。

 

その前、19世紀の前半にイギリスには強い反ロシア感情を持つ有力政治家が存在した。首相や外相を歴任したヘンリー・ジョン・テンプル(別名パーマストン子爵)だ。

 

彼はロシアをイギリスにとって最大のライバルとみなし、「ウクライナ人はわれわれが反ロシア蜂起のストーブに投げ込む薪だ」と語り、ポーランドをロシアとドイツの間の障壁として復活させる計画を立てていたほか、中国におけるイギリスの権益を守るためにチャールズ・エリオットを1836年に広東へ派遣、東インド艦隊の軍事行動の規制を緩めて清(中国)への軍事的な圧力を強化、1840年にはアヘン戦争を始めている。彼の政策はセシル・ローズ、ナサニエル・ロスチャイルド、アルフレッド・ミルナー、ウィンストン・チャーチルらが引き継いだ。

 

作家で政治家でもあったベンジャミン・ディズレーリは小説の中でこうしたイギリス支配層について書いている。例えば1844年に出版された『カニングスビー』には、「(ジョン・)ハムデン(オリバー・クロムウェルの従兄弟)による最初の運動から1688年の最後の最も成功した運動(名誉革命)に至るまで、イングランドにおけるホイッグ党指導者たちの最大の目的はベネツィア共和国をモデルとした高貴な貴族制の共和国をイングランドに樹立することであり、当時のあらゆる思索的な政治家がそれを研究し称賛することだった」としている。この指摘はおそらく正しい。

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のテーマは「 世界の支配者になったと勘違いしたシオニストが自滅の道を歩いている 」(2025.06.21ML)
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