
【櫻井ジャーナル】2025.06.25XML:窮地に立つイスラエルに手を差し伸べた米大統領だが、計画通りには進まず
国際政治ドナルド・トランプ米大統領はイランの核濃縮施設を空爆することでイスラエルを助けようとした。イスラエルは保有する防空ミサイルが10日から12日程度でなくなると見られ、追い詰められていたのだ。アメリカやヨーロッパ諸国にも余力はない。その後、イランが高性能ミサイルを使い始めることが予想された。しかも、イスラエルはイランの攻撃で石油精製能力を失い、燃料危機に直面している。
窮地のイスラエルを助けるため、トランプ政権はB-2戦略爆撃機7機のほか、偵察機、空中給油機、戦闘機などを含む125機以上の航空機を投入、6発の大型地中貫通爆弾(バンカー・バスター)GBU-57を投下したという。この空爆でイランを屈服させ、「和平」を実現するというシナリオだったようだが、この攻撃で核濃縮施設を破壊することに失敗し、シナリオ通りには進まなかった。
トランプ政権はイランのアッバス・アラグチ外相をワシントンに呼びつけるつもりだったのかもしれないが、外相は6月23日にモスクワを訪問、ウラジミル・プーチン露大統領を含むロシア政府の高官と会談した。外相は記者団に対し、「イランとロシアがより緊密で、より的確かつ真剣な協議を行うことが不可欠だ」と述べている。こうした展開をマルコ・ルビオ国務長官は眺めているしかなかった。
アジズ・ナシルザデ国防相は6月23日、ロシアのアンドレイ・ベロウソフ国防相との電話会談で侵略者との強制的な和解には決して屈しないと主張。その日にイラン軍はカタールのアル・ウデイド基地をミサイルで攻撃した。ここはアメリカ空軍の司令部として機能、中東におけるアメリカ軍の中心的な存在だ。1万人以上のアメリカ兵が駐留している。ただ、カタールの基地から兵士や航空機はかなり前に他の基地へ移動していたという。またイラクのキャンプ・タジなどアメリカ軍が駐留している基地で爆発があったが、これはイラクの武装組織によるものだとされている。
ベロウソフ外相はイスラエルによるイラン攻撃について、核問題は攻撃の口実にすぎず、真の目的はイランを弱体化させ、中東全域に混乱を広げようとしていると述べ、イランを支持すると発言している。セルゲイ・リャブコフ外務次官も6月23日にロシアはイスラム共和国を支持すると語り、イスラエルとアメリカを非難した。
カタールやイラクのアメリカ軍基地に対する攻撃が伝えられてから数時間後、トランプ大統領はイランとイスラエルの包括的停戦を発表した。アラグチ外相をワシントンへ呼び出すことに成功すればイランを降伏させたという印象を広められただろうが、当初、イラン当局者は停戦案を受け取っていないとアメリカのメディアに対して発言。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は停戦の承認を発表した。
アラグチ外相はトランプ大統領の発言について、イスラエルがイラン国民への違法な攻撃を停止する限り、イランは戦争を継続する意図はないと述べた。そして戦闘は続き、トランプは癇癪を起こしそうだ。シリアにアル・カイダ/親シオニスト体制を樹立することに成功、イランに取り掛かったシオニストだが、思惑通りに進んでいない。
停戦を発表したトランプがシオニストだということは明白。彼の背後にはシェルドン・アデルソンとミリアム・アデルソンの夫妻のようなシオニストの富豪がいる。シリコンバレーの富豪たちも資金を出しているが、彼らの大半も親イスラエルだ。
政権の内部にも親イスラエル派は少なくない。国務省で報道官を務めるタミー・ブルースの場合、JNS(ユダヤ・ニュース・シンジケート)のインタビューで「アメリカはイスラエルに次いで地球上で最も偉大な国だ」と発言、その映像をケン・クリッペンシュタインがXで公表、話題になっている。
ブルースは「文脈から外れていると」と反論、クリッペンシュタインは前より長い映像をアップロード。それによると、ブルースは「残念ながら」ユダヤ人ではないと述べ、「イタリア人は失われた部族だったのかもしれない」としているものの、彼女の「最も偉大な国」発言が文脈から外れているとは言えない。
アメリカでネオコン、イスラエルでリクードが台頭できたのはアメリカのキリスト教シオニストが支援したからだが、そうした信仰の持ち主のひとりがテッド・クルーズ上院議員。そのクルーズがタッカー・カールソンのインタビューを受けたのだが、その中でカールソンはイスラエルのためにアメリカがイランを攻撃するというクルーズを批判、話題になっている。
アメリカの歴代政府は基本的に外交と軍事の分野をシオニストに委ねてきた。大統領に就任した後、イスラエルのパレスチナ人弾圧や核兵器開発を批判したのはジョン・F・ケネディくらいだろう。1974年8月にリチャード・ニクソンがウォーターゲート事件で失脚、副大統領だったジェラルド・フォードが昇格してから台頭したネオコンもシオニストの一派だ。
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のテーマは「窮地に立つイスラエルに手を差し伸べた米大統領だが、計画通りには進まず 」(2025.06.25ML)
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